知磨き倶楽部

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【本の紹介】2021年9月の読書記録

2021年9月は25冊を読了しました。当月はちょっと将棋ウォーズで負けが込んできたこともあり、ラインナップからは、やや将棋臭がしますw

この記事では、僕が普段読書メーターに投稿している感想・記録を転載しています。

 

25冊の中からお勧めの本を3冊挙げたいのですが、今月は以下の記事で取り上げたシリーズ物が2冊も入っているので、それらを敢えて除外します。

chimigaki.hatenablog.com

 

 

では、全25冊のリストをご紹介。

 

(2021/194)北欧警察小説には何故か陰鬱な印象を持つけど今回も同じ。連続誘拐殺人だと考えて捜査するベリエル警部が何とか容疑者(あるいはその仲間)に辿り着いて尋問する。この場面が割りと早く訪れるし、尋問そのものが興味深いので何が軸になるかと思って読み進めたら、まさかの展開と、ある程度予想された過去からの繋がりと。驚きの結末で次作へ続く。
読了日:09月03日 著者:アルネ・ダール

 

(2021/195)パリの小さなオークションハウスに持ち込まれたのは「ゴッホが自殺に使ったリボルバー」。さながらミステリの謎解きのような真贋鑑定を通して、アルルで共同生活を送ったゴッホゴーギャンに起こったことが明らかになっていく。史実に基づいた展開は美術史に疎い僕でもついていけるように丁寧に描かれる。ゴッホよりもゴーギャンの苦悩というか心情が痛い。原田マハさんならではの極上の一冊。一気読み必至。
読了日:09月04日 著者:原田マハ

 

(2021/196)【再読】将棋ウォーズの級位は2級から一向に上がらず、一時期は達成率70%を越えてきたのに、最近では勝率が低下し3級転落が見えて来た。戦術書に手を出す前に、もっと基本的なことが欠けているのではと本書を読み直す。手筋や攻め筋などは理解もできるし実戦でも考えられていると思うが、基本とすべき格言で思い当たる節が。初心に帰って、まずは目指せ1級だ!(その前に3級転落しないように…) 僕のような級位者には強くお薦めの一冊。
読了日:09月04日 著者:高野 秀行,岡部 敬史,さくらはな。

※こちらの本は、当ブログでも別途紹介済です。

chimigaki.hatenablog.com

 

(2021/197)久しぶりに橘玲氏の著書を読む。統計から小説まで、様々なものを引っ張ってきて自説を読ませる手法が参考になるし、元ネタになった本などは小説含めて読んでみたいところ。ただ「はあ、それで?」なんだよなぁ。先進国社会から距離ができ、なんだが人々がギラギラしている国での生活が長くなった弊害か。ある日突然こういう社会に戻った時の感覚のギャップが怖いな。
読了日:09月05日 著者:橘玲

 

(2021/198)ちょうど橘玲氏の『無理ゲー社会』を読み、格差社会=階級社会のトピックスをアップデートしたところだった為、特集タイトルに惹かれて手に取る。が、職種と資産で単純に階級分けしたストーリーは、分かり易さ優先なのだろうけど如何にも浅く期待外れだ。
読了日:09月05日 著者:ダイヤモンド社

 

(2021/199)桜井亜美さんは20年ほど前に割りと読んだけど、妻が久しぶりに読みたくなったと買っていたのでご相伴。歴然とした階級社会となっている世界は当時より今の方がリアル感あるかもね。低階級から一発逆転を狙う女の子の話だけど、階級差は遺伝子レベルにまで及んでおり、最下級の主人公は援交だとかガンジャだとかに普通に手を出し、基本はディストピア。ああ、これが桜井亜美だったなと。何というか、暗いラノベだよなぁ。
読了日:09月06日 著者:桜井亜美

 

(2021/200)【Kindle Unlimited】3月のライオンの16巻がやっと刊行されると聞き非公式ファンブックだという本書を手に取る。対象は11巻までなので本書だけで追いつくわけでもないし、そもそもその必要性がないほど何度も読み返しているのだけれど。そういう人間にとっては人物紹介中心の本書は物足りないかな。作中に出てくる場所や台詞の元ネタなどの紹介で、本筋とは離れたところを楽しむのが吉。将棋将棋し過ぎていないのが本作の魅力でもあるけど、棋譜をがっつり眺めたいとも思うんだよなぁ。
読了日:09月07日 著者:三月町研究会

 

(2021/201)【Kindle Unlimited】毎月嬉しい悲鳴をあげさせてくれる本の雑誌。次に来るマンガ大賞の1位は、既に妻が読みたいリストに入れていたり。他にも気になる漫画があったので、こちらもリストに追加。息子含めて家族で読めそうなら買おうかなぁ。ミステリの特集は鉄板。広告や単なる新刊情報も含めて細かくチェックして、またリストが長大化してしまった。読みたい本は多い。時間とお金の配分が難しいのは楽しい悩みでもある。
読了日:09月08日 著者:ダ・ヴィンチ編集部

 

(2021/202)妻だったり母だったりする女性たちの群像劇。ブログでの情報発信(というか妄想発信)で承認欲求を満たすことに飢えている千夏子を中心に、それぞれが心に暗い感情を抱えて行動するが、それの根っこは思い込みから生ずる妬みだったり僻みだったりして、ああ、これは僕には理解が難しいやつで妻向きの本だなと。登場する男性陣(夫達)もそれぞれ歪みを抱えているけど外に向かわないタイプが多く、こっちの方が分かるかも。視点が変わりながら畳み掛けるように展開するので、勢いよく一気読み。
読了日:09月10日 著者:宮西真冬

 

(2021/203)舞奈にとっての大会デビューとなる新人大会、文部科学大臣杯以降の恵梨香の環境の変化、希衣の成長などなど盛り沢山のシリーズ第4巻。学年も上がり、ちょっと変わった新入部員も入ってきた。全体が主人公の舞奈の性格によってひたすら明るく前を向くモードになるので、読んでいて安心感が半端ない。次はインターハイから希衣たち3年生の引退・卒業くらいまで一気に行くかな?楽しみだ。
読了日:09月11日 著者:武田綾乃

 

(2021/204)中学2年生の息子は、しょっちゅう妻に「片付けなさい」と怒られている(息子だけじゃないという話もある)。ということで、2014年に発刊されて以来増刷を重ねている本書を手に取ってみる。まさに「なんで片付けなきゃいけないのか」「僕はこれで片付いていると思っている」という息子にピッタリだ。そして片付けができない(苦手な)大人にも。片付けは練習の賜物。「出す」「分類する」「選ぶ」「収納する」の4ステップは分かりやすいし、思い当たる節が随所に。僕も実践しよう。
読了日:09月11日 著者:杉田 明子,佐藤 剛史

※こちらの本は、当ブログで別途紹介済です。

chimigaki.hatenablog.com

 

(2021/205)大駒ぶった切って豪快な攻めを決める対局が楽しい藤森五段のYouTubeチャンネル将棋放浪記から、実際の局面ごとに何指す?の問題に仕立てた一冊。級位者レベルの僕には難解な問題も多いし、例え正解しても自分で攻めを繋げる自信はない。それでも、動画では楽しみが優先して深く考えられないことを、うんうん考えながら読むのは間違いなくタメになる。紙の書籍だとQRコードから直ぐ動画に飛べるようになっているのに、なぜ電子書籍ではリンク貼っておいてくれないのか、、そこは不満です。
読了日:09月12日 著者:藤森哲也

 

(2021/206)【カドフェス2021】桜宮サーガの中に位置づけられるが、2022年の未来を舞台にしたジュブナイル小説。普通よりやや落ちこぼれ寄りの中学生・薫が東城大学医学部の研究室で研究をすることになってしまい、挙げ句出世欲とか名誉欲に囚われた悪質な研究室の教授に良いように利用されてしまう。医局モノの一種だけど、中学生目線で描かれることで易しくなっている。お馴染みの名前も登場するけど、ロジカルモンスター白鳥だけは他の人物が代用。本作含む初期作品は、テンポと切れ味が良くて好きだなぁ。
読了日:09月13日 著者:海堂 尊

 

(2021/207)待望の15巻は銀子が失踪して、あいは関東に移籍してとボロボロの八一からスタート。天衣と一緒に住み始めたり、万智さんと二人で旅館に篭って棋書という名の何かを書いたり、表面上は相変わらずフラフラ。鹿路庭と山刀伐、あいにスポットライトが当たる。将棋の道は修羅の道。女流名跡リーグでは遂に挑戦者も決まり、、。収録された小冊子に300円強の価値はあるか? 銀子ファンなら間違いなく小冊子まで含めて買い。本編では失踪してるせいで出番ほとんどないからね(辛い銀子を見ずに済むのは心穏やかではあるけれども)
読了日:09月14日 著者:白鳥 士郎

 

(2021/208)【Kindle Unlimited】第一特集のマンション管理はなんだか隔世の感があるというか、10年ほど前にマンション売却しちゃったから関心がなかったというか。在住国とはかなり状況が異なるな。追っかけるような流れには当面ならなそう。第二特集の中古マンション動向の方は興味深い。在宅ワークが広がっても居住性より立地含めた利便性重視の動きとか、これも東南アジアだけ見てると逆の動きに見えるんだよね。とはいえ例示が70平米だったからな。それは充分な居住性が確保できそう。ワンルーム投資が気になる。
読了日:09月15日 著者:

 

(2021/209)著者は海外不動産エージェントを業としており、本書は本業のための販促本であることは念頭に置いた上で、それでも東南アジアの中で唯一実地で不動産を見たことのないフィリピンの話は参考になる。現地を訪れずに投資する人がいるのは知っていても、僕にはちょっと考えられないなぁ。失敗しないためのポイントは大体共通している。僕はその他に、その国に何度も行きたいと思うか?が結構大事だと思う。信用できる人物の紹介だから買うもアリだけど、どうしてわざわざ海外不動産に投資するの?という所を考えたい。
読了日:09月17日 著者:風戸裕

 

(2021/210)昭和に入ってからの治安維持法施行と特高による取締りを、小林多喜二、鶴彬、三木清など、実際に治安維持法の下で投獄され、獄死した人物たちを登場させながら描く。時間も場所も異なる全編を貫くのは、特高を管轄する内務省の官僚クロサキ。重たくて暗い基調なのに、どこか軽妙でリーダビリティが高いのは、さすが柳広司さんだな。
読了日:09月18日 著者:柳 広司

 

(2021/211)【カドフェス2021】サトウミサキの行動に、結婚詐欺的な女性の話か?と思って読み進めると、どうも様子がおかしい。何かの復讐の様相を呈し始めるが動機がなかなか明かされない。途中から警察パートになって読者が見ていた「事件」の前から辿り始めることで、漸くサトウミサキ(の相手男性)のパートと警察捜査がリンクして全貌が見え始める。クズな男ばかりなのはそういうことか!と納得しつつ、でも、結局誰も救われないラストに呆然とする。これは今まで読んだ伊岡瞬さんの作品でも上位の一冊だ。
読了日:09月19日 著者:伊岡 瞬

 

(2021/212)小説とか演劇とか映画とかを対象にした初心者向けの批評の書き方指南。書評ブログを書いていた時に「書評なんておこがましいよなぁ」とモヤモヤしていた点がクリアに。特に足りないのは分析だが、これは頭では必要性も方法論も理解できても、実際には素人書評ブロガーには高い壁だ(乗り越えたらすごい障壁になるわけだ)。参考になるのは書く際に気をつけるべきポイント。文章論系の本を読んでいれば目新しいというわけではないが、一連のプロセスの中で読んで腹落ちする。これは期待以上の本だったな。
読了日:09月21日 著者:北村紗衣

※こちらの本は、当ブログで後日あらためて紹介予定。

 

(2021/213)第二特集である新興国ユニコーン企業に関心があって手に取る。大きく取り上げられているモンゴル発のフィンテック会社アンドグローバルには驚いたな。モンゴルにおける携帯電話の普及状況にも驚いたけど。ほんと、レガシーのない新興国は一足飛びにテックが広がって、気づいたらとんでもないことになってる。だから、こうして遅ればせながらでもアップデートしておかないとな。
読了日:09月22日 著者:週刊東洋経済編集部

 

(2021/214)レッドスワンサーガのスピンオフ。当代の天才プレイヤー篠宮貴希のいた青森市高校サッカー部のメンバー視点による連作短編風。レッドスワンファンには、文庫化で追加された最後の2篇が熱い。著者はレッドスワンサーガを読んでいなくても独立して楽しめるように書いたとしているけど、読んでいないと正直微妙かと。読んでいる僕は、一から読み返したくなってしまった。
読了日:09月24日 著者:綾崎 隼

 

(2021/215)小説家である「わたし」の元に話を聞いて欲しいと連絡してきた女性から聞く、女性たち3人に起こった30年以上前の中学時代から続く「人を殺してしまった」という事実の先にある物語。それは友情なのか因縁なのか。そして話し手の女性は「わたし」もその中学校の同級生であった事実には気づいていない。。。これはヤバいほど面白かった。近藤史恵さんの作品は『サクリファイス』シリーズが圧倒的に好きだけど、これは全然違うサスペンスで、かなり好きだ。
読了日:09月25日 著者:近藤 史恵

 

(2021/216)僕は普段東南アジアの国々との関係から中国を見ることが多いけど、本書はヨーロッパやアフリカ、南米の国々を通してみた中国の姿を描き出す。恥ずかしながら名も知らないような国もあり、中国という国の懐というか、影響力の大きさを改めて思わざるを得ない。現在、日本を含むTPP加盟国は中台関係の間で踏み絵を踏まされるような状態になっているようだが、そちらの動向も気になる。一帯一路構想を軸に今後も中国の動向は目が離せないな。本書は全く知らなかった中国のことも知れて刺激的だった。
読了日:09月25日 著者:安田 峰俊

 

(2021/217)予見可能だった高齢化社会の到来と介護の問題。それに無策だった社会に対する問題提起をテーマとしたミステリ。哀しさの方が重くなるテーマだけど、本作が描かれてから10年近くが経ち、高齢化の先にある超高齢化社会の到来が間違いない状況にあっても何も変わっていないように思える社会を思うと、哀しさを超えて薄ら寒い思いすらする。一気読みでした。
読了日:09月26日 著者:葉真中 顕

 

(2021/218東大寺の大仏像建立のために全国から3年間の夫役で集められた者たち。主人公の真楯もそんな一人として造仏所に回された。そこで出会う、集められた仕丁たちのために旨い飯を出し続ける造仏所の炊屋である宮麻呂を軸に描かれる、仕丁として大仏建立に携わることになった下々の者たちの話。辛いに決まっているのだが、真楯の性根故か、全体としてはハートウォーミングにまとまっていると思う。長らく訪れていない東大寺の大仏像を観に行きたくなったな。
読了日:09月30日 著者:澤田 瞳子

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