知磨き倶楽部

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【本の紹介】将棋級位者から脱するためにーその1(『将棋「初段になれるかな」会議』)

下手の横好きのレベルを脱しませんが、数少ない趣味と呼べるかもしれないものの一つに将棋があります。周りに将棋を指す人もおらず、もっぱら将棋ウォーズで顔どころか、性別も年齢もわからない方々と対戦するのみの日々ではありますが。

 

細々続けていますが、将棋ウォーズで2級になってから、かれこれ数年は停滞しています。それどころか、最近では勝率も落ちており、下手すれば3級降格の目も出てきました。

せっかく将棋を指すなら、やはり勝ちたいと思うものですし、「初段」の響きには憧れもあります。プロ棋士の書いた戦術書を読んでみたりもしますが、いかんせん基本がなっていない僕に指しこなせるわけもなく、勝率上昇に寄与しているとは言い難い。

 

そこで今日は、正にそんな級位者である僕のような人間をターゲットにした本を紹介しつつ、己を振り返りたいと思います。

本書の概要

本書は、ライターの岡部敬史さん(将棋ウォーズ3級)、漫画家のさくらはなさん(将棋ウォーズ1級)のお二人が、これまた将棋ウォーズ級位者の編集者の方も交えて、高野秀行六段(本記事執筆時点)に級位者の視点で色々お伺いしながら棋力の向上を目指す、という内容になっています。

なので、全くの初心者(駒の動かし方も覚束ないレベル)の方には早い内容です。

また、戦術書のように長い棋譜があったり、細かく場合分けをしながら深く研究するというタイプの本でもありませんので、タイトルからも分かるとおり、すでに有段者の方には簡単すぎるというか、参考にならないのではないでしょうか。

そう、まさに僕のように初段の前に立ちはだかる壁にぶつかって停滞しているような級位者のための本なのです。

 

級位者が覚えるべき10の格言

将棋には先人の積み上げた色々な格言がありますが、初心者が特に意識すべきなのは、まずここで挙げられている10個で十分だと教えてくれています。はたと思い当たる節もあり、まずはここから自分の将棋を見つめなおして再出発です。

1.自陣は「攻め」と「守り」に分けよ

飛車の近くでは戦いが起こりやすいので、玉は飛車から離す、というのは当たり前にやっていることだけれども、初心者は「左は攻め」「右は守り」とはっきり分ける方がお勧めと。本書では、居尾車派の高野六段が初心者には四間飛車をお勧めしている(居飛車だと攻めの「角」が守り側に居るから)。

でも、僕は振り飛車の捌きが全くわからず、居尾車が好き。。

2.玉の囲いは「金銀3枚」

調子に乗って守りの銀まで攻めに参加させてしまうことがあるような。。これをするから攻められて一気に瓦解するなんてことが起こる(汗)。

3.攻めの順は「歩、銀、大駒(飛車と角)、最後に桂」

最近の若手プロ棋士の流行として早めに桂馬を跳ねて活用するという動きがありますが、初心者には無理だと高野六段は指摘しています。むざむざ桂馬を相手に献上して、早々に盤上の天秤が相手に傾いてしまうのです。

4.馬は自陣で使え

高野六段がおっしゃる通り、相手陣で「馬」を作れても、戻ってこれずに「攻め」でも「守り」でも戦いの場から遠いところでぽつんと馬が寂しそうに佇んでしまうことが。一手損するように感じても、自陣に引き戻すことで馬をきちんと活用すること。

5.敵陣の竜は、無駄に動くべからず

逆に「竜」は一旦相手陣に入り込んだら、どっしり構えておくと。相手の囲いの急所を睨んでおく、あるいは玉のラインに入れておくのがいいのかな。王手飛車には常に注意を(汗)

6.飛車の「2枚換え」にはご用心

駒には擬似的に点数を割り振っておくと盤上での損得計算などができていいと教えていただいていますが、飛車の場合だけは注意しましょうと。「金」「銀」2枚と飛車の交換なら点数上は得になりますが、それでも初心者の場合は飛車の方が価値が高いことが遥かに多いと。

7.「王手」より「詰めろ」

これは相当意識しないといけないけれど、確かに負ける時って相手の方はきっちり「詰めろ」をかけてくることが多いなと。この前提として自玉には詰みがないことを確認できる程度には、詰め将棋を勉強しておく必要があります。「詰めろ」をかけたはいいけど、自玉が詰んでしまうようではお話になりません。

8.一歩千金

これは有名すぎる格言ですが、歩切れを起こした時に身に染みます。相手の方が巧いなあと思う時って、歩の使い方が巧い時が多いんですよね。

9.常に「と金」を考えよ

快勝できた時のことを振り返ってみると、「と金」が巧く相手方をかき乱した場合というのが少なからずあります。先日読んだ戦術書でも「と金は穴熊の天敵」と書かれていて、「相手にと金を作らせない」「と金で相手を攻略する」ことを意識させられたばかりです。

10.「底歩」は堅し

これ、自分で底歩を打った時よりも、相手に打たれた時の方が実感しやすいのは何なんでしょう(涙)まさに「一歩千金」と言うべき堅さを発揮されてしまうことが。

 

その他、「手筋」や「攻め筋」などにも覚えておくべきものはありますが、まずはこの格言を最低限意識して将棋を指すことが大事ですね。

 

将棋を指す以外での勉強

毎日詰め将棋を解く

詰め将棋は大事です。必ず詰むということが分かっているため、実戦とは違うという意見もあるようですが、解答を覚えてしまえば実戦で同じ形が出てくれば詰ませられるわけですし、自玉に詰みがあるのかどうかを判断するためにも。

3問でも5問でも、毎日時間を決めて解くこと。注意すべきなのは、1問1問に時間をかけすぎないことです。考えて分からなければ解答を見る。そうやって自分の中で型を増やしていくことが次に繋がります。

棋譜並べもやってみる

盤なりソフトなりが必要ですが、今やインターネットで棋譜は簡単に手に入る時代。これは是非やってみた方がよいと高野六段も言っています。

特に、棋譜並べというのはプロの技をそのまま再現できるわけです。他の競技(サッカーでも野球でも)ではプロの真似などとてもできませんが、将棋の棋譜並べは、自分の技量に関わらず、プロがやったことを寸分違わず再現できるという稀有な体験です。「良い手」を指した時の「なんだか気持ちいい」を味わうだけでも意味があるというので、これはやってみたいですよね。

 

とはいえ、一番大事なのは「自分が楽しい」ですよね。あくまでも趣味なわけですし。勝った方が楽しいのは間違いないですが、末永く続けるために楽しむ気持ちを忘れずに指していくぞ!

 

おまけ

本書の制作を通して、さくらはなさんは何と初段に到達されたそうです。効果実証済。言い訳無用です。

 

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