【本の紹介】2021年10月の読書記録
2021年10月は39冊を読了しました。当月は長期休暇があったことなどから、一日一冊以上のペースで読んでしまいました。
やや乱読気味に、妻が買っていたのに僕は読まずに放置していた書籍などを掘り起こして読み進めました。
当月読んだ中からお勧めの3冊を挙げておきます。
わりと万人に向けてお勧めしやすい一冊だと思います。ガチガチの法廷物ほど堅苦しくもなく。
個人的に成長物・再生物が好きなのですが、明るい基調の本書は同好の士には勧めやすいです。ライトノベル寄りの軽さはありますが、だからこその読み易さでもあり。
最後の一冊はやや人を選ぶかもしれません。歴史が好きじゃなければ読みたくもない一冊。ただ、世界史を学ぶというよりも、通史の知識をどう組み合わせて論じるのかという方法論を学ぶには、読みやすい一冊になっています。
(2021/219)中学2年生の息子用に。普段から「世界を知る」という目的で僕も読んでみたいと思う本を息子に渡しているのだけれど、本書は「知る」だけではなく「知った世界とどう関わるのか」を考えさせてくれる本。著者の白木さんはその答えとして、若くしてエシカル・ジュエリーのブランドを立ち上げた。その際の考えや、そこに至るまでの行動などの話は高校生から社会人数年目の若者に大いに刺激になりそう。事業計画のあたりとか中学生には少し背伸びかもしれないな。でも、こういうことを夏休みの自由研究でやってもいいのに。
読了日:10月01日 著者:白木夏子
(2021/220)『護られなかった者たちへ』に続く宮城県警シリーズ。東日本大震災後の宮城が舞台となる本作品は、物理的にも心理的にも未だ消えない傷痕を描き出す。震災で行方不明となってしまっているが、戸籍上は生存している方々。事件は海辺で見つかった女性の死体から宮城県警捜査一課笘篠の妻名義の身分証明書が見つかったことから始まる。妻名義の身分証明書に載った見知らぬ他人の写真から、震災による行方不明者の個人情報流用の犯罪の影が。ドンデン返しなんてないし、必要もない。哀しいミステリだ。
読了日:10月02日 著者:中山 七里
(2021/221)社会福祉事務所でケースワーカーとして働く佐々木守が、真面目で優しい一面が故に、あっという間に堕ちていく夏。不正受給者や不正受給をシノギにしようとするヤクザが巧くやる一方で、本当に受給しなければどうにもならなそうに見える人が受給出来なかったり。ただ、不正受給問題を云々という話じゃなくて、要はヤクザ者に近づかれたら詰むよ、という話だよな、これは。
読了日:10月02日 著者:染井 為人
(2021/222)【Kindle Unlimited】東京パラリンピックで悲願の金メダルを獲得した木村敬一さんの半生記。2歳で全盲となってから、2020年に東京パラリンピックの延期が決まった頃までを綴る。そこからは、バイタリティというか前に進む力の強い人だなという印象だ。そして明るい。だから、辛かった時期のことも綴られている本書も、一貫して明るいというか「闇を泳ぐ」のに読む側は光を感じてしまうんだろう。
読了日:10月03日 著者:木村敬一
(2021/223)家庭裁判所調査官補として研修中の望月大地が担当事案(少年事件だったり離婚調停だったり)を通して奮闘する連作短編。同期の2人の芯が強すぎるだけに、大地の苦悩が一般人である読者により分かりやすいというか共感しやすい。自分の身に起こったり、知人から相談されたら抱えきれないであろう種類の問題だが、身近にあり得るだけに余計に。読みながら久しぶりに名作漫画『家裁の人』を読みたくなった(あちらの主人公は判事だけれど)。
読了日:10月03日 著者:柚月裕子
(2021/224)妻の蔵書の中から敬遠していた一冊を手に取ってみたが、これはまさに僕好みの一冊だった(寧ろ妻の嗜好からは外れてるように思う)。地下アイドルをしていた女の子が、事件で顔に傷を負い、情報が売られたことによる人間不信やらトンデモナイ母親やらのストレスで精神的にダメになっていたところから、ラジオ番組の仕事との出会いから再生していく王道の物語。個人的にラジオという媒体に馴染みはないけれど、制作サイドの話なども含めて相当いい話。これは大当たり。
読了日:10月04日 著者:浅葉 なつ
(2021/225)中国、朝鮮、ベトナムそれぞれの歴史を読み解き、現代における各国の行動様式に多大な影響を与えている、それぞれの持つ「トラウマ」などを理解することが地政学的な視点には重要。各国の歴史は単純に興味深い面もあるが、それにしても著者の朝鮮嫌いがダダ漏れ過ぎるw (中国や朝鮮の底流にある)朱子学的思考も大罪を背負わされる。中国の動向は本書刊行後もいろいろあるけど、それらを読み解いて考える上で一つの物差しに出来るかもしれないな。
読了日:10月05日 著者:川島 博之
(2021/226)堀北恵平シリーズ第6弾。正規配属として東京駅おもて交番に戻り名刺も持ったケッペー。立番中に目の前で起こる通り魔殺人と、その後に発覚する妄信殺人。うら交番に行った人は一年以内に死んでしまうという伝説の起源も迫る中、柏村さんからの遺言ともとれる品が出てきて、、と今回も盛り沢山。ダミちゃんで元気を補充しつつ、進めケッペーちゃん!次巻は来春。待ちきれない。。
読了日:10月06日 著者:内藤 了
(2021/227)【Kindle Unlimited】今月号は特集にあまり興味が持てず、取り上げられている書籍情報のチェックを中心に流し読み。食指を動かされた本の数も普段より少なめかな。今月は日頃から積み上がっている欲しい物リストの整理が出来るといいなと願いつつ、次に読む本を物色し続ける。
読了日:10月06日 著者:ダ・ヴィンチ編集部
(2021/228)【Kindle Unlimited】とあるバンドマン。フェスでも優勝したり、その後のイベントも観客動員はそれなりで、星の数ほど生まれては消えていく業界事情からすれば一応成功したと言えるはずなんんだけど。過去から抱えてきたその心中を垣間見る。ただ、全体を覆う退廃的な空気が今の僕には好みじゃないなぁ。
読了日:10月06日 著者:平井 拓郎
(2021/229)【Kindle Unlimited】普段時代小説をあまり読まないので比較が難しいけど、現代ビジネス視点からの著者の声を交えつつ、僕の中の明智光秀のイメージを覆す一冊だった。本能寺の変と呼ばれるようになった「下剋上」は光秀が信長に代わって天下を狙ったものではない、という解釈。万世一系の天皇という存在を、日本人にとってユダヤの神のように捉える。エピローグでの(天下人となった)秀吉が伊達政宗に言った言葉に震える。最後まで面白かった。
読了日:10月07日 著者:波多野聖
(2021/230)【Kindle Unlimited】『国境のない生き方』を読んだ時に、(いい意味で)破天荒な人だなぁと思ったものだが、本書のタイトルを見て、どう異性である「男子」というものを見るのか興味半分、怖さ半分で手に取る。ただ、対象の多くが歴史上の人物だったり、映画の登場人物だったり、読者にとって見知らぬ他人(著者の周囲の人)だったりで、正直、期待したほどのものではなかった。妻の蔵書の中から『望遠ニッポン見聞録』を発見したので、そっちも読んでみようかな。
読了日:10月07日 著者:ヤマザキマリ
(2021/231)海外暮らしが長くなると、逆に日本のことが客観的に見えるとともに、自分の中の「日本人」を意識するという感覚は分かる。著者のヤマザキマリさんは、海外暮らしが僕なんかより遥かに長いし、旦那さんをはじめ普段一緒に居る人たちも日本人じゃないだけに余計にそうだろうな。そんなヤマザキマリさんが感じる日本の(いい意味でもそうじゃない意味でも)特殊性を描いたエッセイは単純に面白い。
読了日:10月08日 著者:ヤマザキマリ
(2021/232)【Kindle Unlimited】Amazonで紹介文を読んだ時、「これ絶対好きなやつ」と思った通り、王道で安心のハートウォーミングな一冊。限界集落で、みんなが幸せになれるようにとの想いから「卵かけご飯専門店」を始めようとする養鶏家のムーさんは、純朴でお人好しで、だから何処か放っておけない。限界集落に急に人が戻ってくるわけじゃないけど、そこに住む人たちが笑顔になるっていうのは大円団だ。読んでるこちらも笑顔で読み終えられて気分上々。
読了日:10月08日 著者:森沢明夫
(2021/233)英国の中〜下流階層の様子を垣間見るが、思春期に入った息子さんの視点や世界(学校)が大きな特徴でありアクセントでもある。前作ほどレイシズム的な要素を感じず、ポリティカルコレクトネスとか貧困の話題が増えた印象がある。2019年時点での話なので、ぜひ次はブレグジット以降の話を期待したい。残念なのは分量が少ないこと。もっと読みたい!ただ、新型コロナウィルスで英国は相当厳しい状況になっていたことの影響なのかな。。
読了日:10月09日 著者:ブレイディみかこ
(2021/234)【再読】無性に読み返したくなって蔵書から引っ張り出す。手元にあるのは単行本の電子化で凡そ7年振り。捨て子から忍びとして育てられた風太郎は、伊賀の忍び集団から見放されてしまい、生きる目的も見出せないままにその日暮らしをすることになるが、ある日から瓢箪に憑いた神様(?)の意向で動かされてしまうようになり、、と突拍子もない設定を併せ持った時代活劇なんだけど、かなり見事に筋を忘れていて初読のように純粋に楽しい。
読了日:10月09日 著者:万城目 学
(2021/235)【再読】瓢箪の神様、因心居士の頼み(脅し)に応じて徳川軍がまさに攻め滅ぼさんとする大坂城に乗り込む羽目になる風太郎。柘植屋敷で過酷な訓練を経た忍びの心を変えるとか、秀頼公の魅力強すぎる。圧倒的な強さを見せる残菊との最後の戦闘。『プリンセス・トヨトミ』が読みたくなった。(先日までポイント還元大きかったんだけどな、時期を逃した。。。)
読了日:10月10日 著者:万城目 学
(2021/236)【Kindle Unlimited】同じマンションに住むパパ友3人が、マンションの理事長の行き過ぎを懲らしめるために企む大人の遊び。中心となる葉山の自由業すぎる感じがやや特異だけど、理事長の小市民的な虚栄心みたいなものとか、管理会社側の狙いとか色々分かりすぎる。単純にスプラッシュマウンテンのように楽しみながら最後の笑いで爽快に着地。物語上ソープは必要なんだけど、貴子の心情がいまいち分かんないなぁ。今時は、あんなにあっけらかんとしてるものなのか。
読了日:10月10日 著者:畠山 健二
(2021/237)第一次世界大戦末期のフランスとドイツが睨み合う最前線で、出世欲(上昇欲)に駆られたプラデルの仕掛けた卑劣な手で、彼の配下だったアルベールは死にかけ、アルベールを助けたが為にエドゥアールは取り返しのつかない重傷を負ってしまう。家族の元に帰されたくないと訴えるエドゥアールの為にアルベールは大それたことをするが。。これが戦争が終わってからもずっと後を引く。ルメートル氏のミステリではない文芸作品とのことだけど、行き着く先を知りたいと思わせる書き振りは健在。早速下巻へ。
読了日:10月11日 著者:ピエール ルメートル
(2021/238)エドゥアールが計画した大それた詐欺話にアルベールも同意してしまう。フランス中を巻き込むことになる計画がどうなるのか、神経質で不安を隠しきれないアルベールを通して見ている僕もハラハラさせられっ放し。一方、汚いやり方で儲けようとしてきたプラデルは窮地に立たされ、詐欺を計画した奴を見つけ出さないと身の破滅。アルベールの悪夢の一つであるプラデルが追い始めたことで僕のハラハラは最高潮に。ミステリじゃなくても、こんなにのめり込むストーリーを描き切るルメートル氏に脱帽。
読了日:10月12日 著者:ピエール ルメートル
(2021/239)サイモン・シン&青木薫のコンビに外れなし。米国で相当評価の高い(らしい)TVアニメ「ザ・シンプソンズ」に散りばめられた数学ギャグとその製作陣(脚本家)を取り上げる。ただ、対象アニメに「名前は知ってるけど」程度にしか馴染みがないことと、数学トリビアを断片的に取り上げる形になって全体でのストーリー性に乏しい為、僕にとっては過去の著作に比べると正直だいぶ落ちるかな。個々のトリビアは普通に楽しめたけど。なお、理解までしたかは別問題。僕はナードではないので。。
読了日:10月14日 著者:サイモン・シン
(2021/240)【Kindle Unlimited】刑事畑を歩み警察学校の校長を務めて定年退官した小早川が、女子大の教授となって初めて担当する「継続捜査ゼミ」では、公訴時効が消滅した未解決事件を取り上げて捜査の考え方などの演習を行う。もう設定だけで面白そう。こんなゼミなら入りたかった。展開はややライトノベル寄りという印象かな。シリーズ化されて第二弾がちょうど文庫化されたところだけど、即購入、とまではいかないかなぁ。面白いのは面白いので一気読み。
読了日:10月15日 著者:今野敏
(2021/241)地方の小さな町の中学校で起きた生徒の死亡事件。事故?未必の殺人?自殺?死亡した生徒がイジメに遭っていた形跡があり大事に。時間軸が前後しながら、死亡した生徒を取り巻く中学校という閉じた世界の関係が描き出されていくが、物凄い閉塞感を感じざるを得ない。でも、思い返せば僕の育った田舎でもきっと同じだったろうとストンと落ちるリアル感。妻の蔵書に単行本時代の電子書籍があるのを見つけて手に取ったのだが、何故当時僕は読まなかったのか。
読了日:10月15日 著者:奥田英朗
(2021/242)妻の蔵書から引っ張り出す。多くの登場人物による群像劇が、物凄いテンポで進んでいき「ドミノ」のように次々と影響し合って迎合するドタバタ系。吸い寄せる中心には爆弾魔がいるのだけれど、吸い寄せられる者たちはお構いなしというか、最後まで自分たちが倒したドミノのピースにも、自分たち自身がドミノのピースになっていたことにも気づくことなく見事に収束していく。一度進み始めたら止まらない「ドミノ」の名の通り、一度読み始めたらページを捲る手が止められなかった。
読了日:10月16日 著者:恩田 陸
(2021/243)【Kindle Unlimited】著者のことは全く知らないので小説に対するバックボーンがどれくらいあるか分からないという不安はありながら、紹介している本の傾向で大体掴めるかなと思って流し読み。割とベタで定評のある本が多く、しかも経済・企業小説系に偏りが見られる(50選の中に池井戸潤さんの6冊を筆頭に、楡周平さん、東野圭吾さんなども複数冊挙がる)。個人的には好きな分野だけど、「へえ、こんな面白そうなのあるんだ」という発見はないかな(大体読んでるし)。
読了日:10月16日 著者:かさこ
(2021/244)1980年代からサブプライムローン危機までの農林中金を舞台にした経済小説。僕も分野は違えど政策金融の水を飲んだ身なので、当時を懐古する気持ちを感じつつ、今でもあの世界にいたらと想像してみるなど、他の小説とは違う特別な感慨を抱いた。舞台となる約30年の間で潰れてしまった金融機関は実名で登場してくるので妙にリアリティもある。僕にとっては相当いい小説だが、一般的にはやや波乱が足りないか?最後ももう少し描いて欲しかったな。
読了日:10月17日 著者:波多野 聖
(2021/245)妻の蔵書から。幼馴染のハンターの初めての一人旅に、自分が素材から選び作った防具一式を送った防具屋の娘ソラ。それから5年。父親の死によって引き継いだ防具屋の主人を務め、客に「生きて帰って欲しい」「道中でこの店の防具を見かけたら持ち帰って欲しい(所有者が生きていれば連れて帰って欲しい」とお願いする。なかなか雰囲気のある話ではあるけれど、やや盛り上がりに欠けるかな。楽しく読ませてもらったが、続きに手を伸ばそうとまでは思えなかった。
読了日:10月17日 著者:菱田 愛日
(2021/246)1919年1月1日に生まれ、死ぬと誕生の瞬間に記憶を持ったまま戻る。世界に極少数ながら存在する、そんな人間の一人として生きるハリーの15回の人生。前半は「死」のない人生がやや退廃的な雰囲気で描かれるが、後半からSFとサスペンス色が一気に濃くなり怒濤の展開となって読む手が止まらなくなる。どうして現実にはそんな人がいないと言える?どうして僕のこの人生は単に1回目なだけで、死んだ瞬間に誕生の瞬間に戻らないと言える?なんて思ってしまうほど、絶妙な設定だなと。面白かった。
読了日:10月20日 著者:クレア・ノース
(2021/247)「読む将」のためのムック本。既出のインタビュー記事で構成されており、ヘビーなファンは既知のものかもしれないけれど、僕のようなカジュアルなファンには非常に良い。藤井三冠と羽生九段について、様々な棋士のインタビューから描写しているわけだが、登場する個々の棋士のストーリーが魅力的。「観る将」も観戦が更に楽しくなるはず。なお、棋譜は登場しない。棋士たちのストーリーを堪能させていただいた。
読了日:10月21日
(2021/248)妻の蔵書から。心に傷を持った涼介は土木工事バイトの募集に応じる形で離島へ向かうが、真の目的は別にある。しかし多くのピンザ(ヤギ)が生息する島の様子を見たり、自殺した父の旧友と交流するうちに、自分でも思いも寄らず、離島でのチーズ作りに取り組む決意をすることに。バイトとして一緒になった2人もそれぞれに傷を抱えており、三者三様に生きるということに向き合うことになる。離島での慣習とか人間関係などから、バラ色系じゃない話だけど、一気読みさせられてしまった。
読了日:10月22日 著者:ドリアン助川
(2021/249)今までで一番落語を聴いたのは小学5年生の頃。ちょこちょここの手の本を手に取ったり、偶にYouTubeで観たりする程度には好きなので、落語に関してはあまり目新しい話もなかった。ただ、2部は他の伝統芸能を落語との対比で整理してくれていて良かった。読み終えたら『昭和元禄落語心中』を読み返したくなってしまった。
読了日:10月22日 著者:立川 談慶
(2021/250)妻の蔵書から。独善的な警察官である夫によるDVから逃げ出した祐子と、妻と1歳になったばかりの子供を17歳の少年に殺されて以来生きる意味を失っていた真鍋の人生が、札幌で交錯した。逃げた妻を追う夫、仮出獄した犯人への復讐を画策する真鍋、真鍋を返り討ちにしようとする犯人。ラストがやや呆気ない感じで終わってしまうけれど、新しく結成された「ユニット」には光があって良かったな。
読了日:10月23日 著者:佐々木 譲
(2021/251)久しぶりの東大ブランド。東大世界史の過去問を高校生が解く思考回路と、塾講師としての説明という形で纏めている。世界史を俯瞰するというよりも、通史の知識を前提として切り口に合わせて再構成する方法を学ぶ感じ。受験生時代に自分も解いたはずの問題も含まれているが、今では筋力不足でお手上げだ。現在の問題に繋がる切り口で再構成して論じることは、答案こそ不要でも、ビジネスパーソンにも必要。まあ、その切り口から自分で設定する必要がある点が大きく違うけどね。ブランド関係なく一読の価値あり。
読了日:10月24日 著者:福村 国春
(2021/252)妻の蔵書から。ある日、人口300人弱の小さな島を大津波が襲い、島で生まれ育った信之、美花、輔が生き残る。それぞれの人生の再生かと思ったら、男二人が過去に縛られたとんでもなく暗い物語。これまで読んだ三浦しをんさんの作品からは想像もつかない暗さで、タイトルに付けられた「光」を全く感じられない。ちと口直しが必要な気分。
読了日:10月24日 著者:三浦しをん
(2021/253)【再読】直近に読んだ三浦しをんさんの本の読後感が良くなくて、口直し的に安心して楽しめるこちらを久しぶりに読む。高校卒業を迎えても特に進路を定めていない勇気を見かねて担任が(本人への相談もなく)手配したのは、携帯電話も通じないような山奥での林業従事。当初こそ嫌がりながらも、受け入れ先の人たちの人情やら、林業そのものに魅せられつつ成長していく様を、本人が1年を思い起こしながら綴るという形式。軽い雰囲気を全体に纏いつつ、ガッチリ王道のお仕事系成長小説になっていて、安心して楽しめる一冊。
読了日:10月24日 著者:三浦しをん
(2021/254)巨大な人口が形成する市場とそこに発生するビッグデータ、さらに起業やイノベーションを促す方向づけがなされたことで、数々の巨大プラットフォーマーやテック企業が誕生した中国の発展を見る。ただ、本書刊行後の中国政府の規制やらの動きは、やや押さえにかかっているようにも見え(アリババ傘下のアントやディーディーの例など)、逆にますます目が離せないなと。そんな今を見るための基本的な知識を押さえるのに本書は適しているが、内容的に賞味期限は早そうなのでお早めに。
読了日:10月26日 著者:趙 瑋琳
(2021/255)妻の蔵書から。ただ、妻も買っただけで積読だったという。。凄惨系ホラー小説。食人習慣を有し一般社会とは断絶したかのような暮らしを営む一族が、休養で田舎に滞在していた都会人に襲い掛かる。食人の場面などの描写が凄惨なので、それ系が苦手な人は避けた方が無難。作者が描きたかったのが暗澹たる、この世に勝者はいないという世界観であり、狙って陰鬱な雰囲気にしていることも重要なポイント。ホラー映画の感覚を多いに取り入れているけど、僕は凄惨系よりも心理系の方が怖いな。凄惨系の映像は観たくないが(汗)
読了日:10月28日 著者:ジャック・ケッチャム
(2021/256)焚書が行われている未来を舞台にしたディストピア小説として有名な『華氏451度』の解説。単なるディストピア小説とか読書礼讃小説としてではなく、寓話として読むという切り口。実は読んだことないのに解説から入ったんだけれど、分かりやすい解説のおかげで読んでみようという気にまでさせられた。息子用に買い与えていたので、蔵書には洋書ならあるんだよなぁ。僕にはハードル高そうだったけど、本書のおかげでかなり内容も把握できたし、手を出してみよう。
読了日:10月29日
(2021/257)製薬会社のMR(営業)を中心に、医者との関係、製薬会社としての葛藤、ライバル製薬会社との競争の裏側、製薬会社内部での派閥争いなどなどてんこ盛りされたエンタメ小説。利益は勿論大事だが、患者ファーストを忘れてはいけないとする営業所長の紀尾中は主人公に相応しいけれど、やっぱり社長の万代と経営企画担当常務の栗林とは器が違う。そりゃそうだと。経営側の論理が一番分かり易い。馴染みのない業界の話に楽しませてもらった。
読了日:10月29日 著者:久坂部羊