知磨き倶楽部

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【本の紹介】どうしても片付けられない僕らが採るべき4ステップ(杉田明子・佐藤剛史 著『中高生のための「かたづけ」の本』)

我が家の息子は中学2年生になりましたが、どうしても「かたづけ」ができない模様。本人的には片付けているつもりなのかもしれませんが、親の目から見ると常に足りていない。自分が中学生だった頃を振り返っても、そんなもんかもしれないなとは思いますが、大人になれば「かたづけ」の重要性が身に沁みるだけに、つい自分のことを棚に上げて口を出してしまいます。

 

ただ、親の言うことを素直に聞く時期を過ぎてしまったのも事実。もっと小さい頃にきちんと「かたづけ」を習慣にしておいてあげれば、今の親子の苦労はなかったはずです。反省することしきりですが、かと言って放置もできません。

そんな時に見つけたのが、こちらの本。「中高生のための」と銘打たれていますが、「中高年」となった僕にも思うところが多々ある、いい本でした。息子にも是非読ませたい一冊でした。

 

 

「かたづけ方」って習いましたか?

本書で指摘されていることですが、「片付けなさい」と煩く言われてきた経験はあるものの、そう言えば片付け方って教わった記憶がないなぁと。仕事をするようになると、「かたづけ」そのものの必要性も重要性も理解はできるようになりますが、誰も「かたづけ方」自体は教えてくれません。

片付いた後の状態を説明されたりはしても、そこに至るためのプロセスとして、一体どうすればいいんだよ?と途方に暮れてしまうことも無きにしも非ず(だいたい、「片付けなさい」と怒られるときなんていうのは、相当に散らかっていることが少なくない)。

いきおい、見えるところにあるものを適当にどかして、見えないところに押し込み(時には捨て)、なんとなく目に付くところにあるものが整って置いてあるように見える状態を作ることを「かたづけ」と呼んでしまうことも。

しかし、これではいつまで経っても「かたづいた」状態にはなりません。頭ではわかるんですけどね。。

 

「かたづけ」にも練習が必要

ただ、本書の精神としては、「かたづけ」は後天的に身につけられるスキルです。

僕の趣味の将棋で言えば、どれだけ理想系をを見せてもらおうとも、自分で繰り返しやってみないことには身につきませんし、そもそも最初からプロと同じことなどできるはずもありません。サッカーでもそうでしょうし、野球でもそうです。

そして、これが重要だと思いましたが、これらのプロ競技と違うと言える点は、「かたづけ」においては才能の壁はない、ということです。きちんと「かたづけ方」を知り、練習を繰り返せば、誰だって「かたづけ」ができるようになるはずなんです。そう、僕らがきちんと片付けられないのは、「かたづけ方」を知らず、その場を繕うだけでやり過ごし、練習してこなかったからなのです。

 

「かたづけ」のための4ステップ

そこで、本書で示されている「かたづけ方」が、個人的にはとても刺さりましたので、これから自分自身の「かたづけ方」を見直す意味でもまとめてみます。

「出す」

最初のステップは、とにかくまず全部「出す」ことです。

我が家は結構な頻度で引越しを行うので、実は、このステップは定期的に家全体でやっているはずなのですが、息子は手伝わないので経験が極端に足りないですね(妻と息子が一時帰国している時期に僕が一人でやってしまう、という事情もありましたが)。

とはいえ、家全体(子供で部屋が与えられていれば子供部屋全体)に手をつけるのは心理的にも現実的にもハードルは高いです。だったら、まずは重点的に取り組みたいところ、例えば勉強(仕事)机とか、その中でも引き出し一つとかから始めてみたらいいと言います。とにかく「出す」。このステップを踏まないと「かたづけ」が始まりません。

「分類する」

次に取り掛かるのは、出したものを「分類する」ことです。

ここで時間がかかって「かたづけ」が進まないことって多いですよね。つい、発掘された資料やら本やら読み始めてしまうとか。読みながら「要るか要らないか」判断してるんだよ、という声もあろうかと思いますが、本書では、このステップではそのような判断は挿まないことを強調しています。とにかく同じ種類ごとに分類することに集中する、というのが大切なポイントです。

また、分類しながら捨てる、というのもお勧めされていません。とにかく「分類」に集中です。

「選ぶ」

分類が終わったら、初めて「選ぶ」というステップに進みます。

いったん全部出してから分類すると、自分が溜め込んでいたものの総量が目の前に示されることになります。机を整理したら、はさみが3つも4つも出てきたり、消しゴムが4つも5つも出てきたり。辛い現実を目にすることにもなりかねませんが、ここで目を逸らさないことが「かたづけ」スキルの上達には重要です。サッカーの練習でもそうですが、なぜ出来ないのか、なぜ失敗したのかの自省や振り返りは上達には欠かせません。

「選ぶ」際にも、あまり極端にする必要はありません。「使うもの」「使わないけどとっておきたいもの(お土産とか思い出の品とか)」「わからないもの」「捨てて大丈夫なもの」などに分けます。「要る・要らない」とか「使う・使わない」とかの二分法だと迷いが生じますし、ストレスもかかります。特にストレスは、練習のハードルになりますので、「捨てる」ことにストレスを感じるようなら、全部「わからない」でもいいんじゃないかと思うくらいのゆとりを持った方が健全です。

「収納する」

最後に選んだものを収納します。

ここで大切なのは想像力です。どこに収納すれば「使う」際に便利なのか。これは実際に使ってみないとわからない部分もありますので、最初は「仮」でいい、というか「仮」に収納すべきと本書は言います。

ただし、大切なのは「自分で考えて決めること」です。使うのも自分だし、使った後に元の場所に戻すのも自分ですから。出しっぱなしにしてしまう癖があろうとも、一回自分の決めた収納場所があるのであれば、その後の対応は随分と楽になるはずです。

また、分類したものを混ぜないことも大事です。「わからないもの」に分類したら「使うもの」とは混ぜない。「使わないけどとっておきたいもの」はそれ用に収納を考えるなど。たとえば、普段使う筆記用具と一緒に、友達にお土産でもらったけど使わないペンとか、ちびて使えなくなった消しゴムとか。溜め込みたいならそれでもいいのですが、それは分けて収納すべきなのです。

 

まとめ

本書では詳細に説明されていますので、ぜひ実際に読んでみてもらいたいと思いますが、僕はこの4つのステップがすとんと腹に落ちた感じがしました。なぜ「かたづけた」と思った傍から崩壊していくのか。自分の「かたづけ」の欠点も見えてきました(収納時の想像力が足りないとか、せっかく分類したのに混ぜちゃうとか、収納時に問題が偏っています)。

 

本書で例示されていた中で印象に残ったのが幼稚園の事例。つねに先生が片付けているから教室が綺麗に保たれているのではなく、園児がきちんと片付けているのです。そう言えばそうだったような気がします。。

なぜ園児に出来ることが僕らに出来ないのか(園児の頃に出来ていたはずのことが出来なくなるのか)。それは、ものが分類され、置き場所が決められていないからです。園児には「かたづけ」のために全部出すという発想はないし、そもそもしないでしょう。でも、片付けの時間には「元にあった場所に戻す」ということだけ教えれば「かたづいた状態」を取り戻すことができるのです。

 

そう考えると、やはり僕(ら)に足りないのは「自分で分類して、選んで、収納場所を決める」というステップです(あれ、ほとんどじゃん)。本書でも繰り返し述べられていますが、「かたづけ」の練習は家に居ながらいつでもできます(むしろ家じゃなきゃできませんが)。

将棋なら居飛車矢倉の組み方、サッカーならリフティングなど、小さなことから練習を繰り返し、積み上げるはずです。「かたづけ」もまずは小さなことから始めればいい。才能なんてなくても出来るようになるのだから。息子にも棚の一段からでも始めさせるべく、まずは練習の準備として、ルールブックに該当するであろう本書を読ませてみます。