知磨き倶楽部

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カンボジア: 東アジア・大洋州地域経済の回復はまだら模様に(世界銀行)

先日、2021年のタイの経済成長見通しに関するニュースを紹介しましたが、カンボジアにおいても現地で報道された記事がありましたので、ご紹介。

年平均7%で成長してきたカンボジアの経済成長がパンデミック前の水準にまで戻るには、まだ数年を要するだろうという見込みです。

 

www.khmertimeskh.com

いつも思うのですが、世界銀行によるエリア分けの"East Asia and Pacific"って、日本人が一般的に使っているエリア分けと若干違うんですよね。日本語にすると、東アジア・大洋州というそうです(世界銀行のウェブサイトによる)。

"unevenly"は日本語訳では「不均等に」という意味合いですが、元々の世界銀行が2021年3月25日付けで公表したレポートが "Uneven Recovery" と題されているところから取られています。

※ ちなみに元レポートは以下のサイトで見られます。

https://openknowledge.worldbank.org/handle/10986/35272

本記事書くときに見た時には、英語版のほかに、バハサ(マレーシア?インドネシア?)とベトナム語の概要が利用可能になってました。なぜにこの2言語なんだろう。

 

カンボジアにおける2021年の経済成長見通しは4%で、2022年及び2023年が5.2%とされています。

タイと同じく、アンコール遺跡群という観光資源を抱えるカンボジアも、観光産業は柱の一つ。ここの影響は大きいですね。

国内消費に支えられて、卸売りや商業は底堅いとしていますが、足元で急速に広がっているCOVID-19の国内感染は懸念材料の一つです。

 

また、カンボジアにとって外国直接投資(FDI)も重要な成長ファクターです。

記事にもあるとおり、シンガポール、韓国、中国、日本がFDIの重要な供給国ですが、これらの国からのFDIを惹きつけるために重要だとされていることが、さらっと書かれている割に重たい課題が多いです。コネクティビティというのが何を示すのか今ひとつ判然としませんが(ASEAN域内の連携については粛々と進めてきているという認識)、労働者の質とエネルギーコストはずっと指摘されますね。

近年は中国からのFDIでインフラ整備なども大きく進んでいますが、ハードのインフラ整備に加えて、ソフト面での向上にどれだけ取り組めるかは難しい、時間のかかる課題です。

 

域内でも最も高い経済成長を続けてきていたカンボジアですが、2021年はCOVID-19の抑制にも成功し、2020年ですらプラスの成長を達成したベトナムの後塵を拝すことになりそうです。

政策的に引き上げてきた最低賃金が、ベトナムとの外国直接投資の呼び込み競争の足を一段と引っ張ることにならなければいいのですが(既に、最低賃金の水準と労働者の質を見たときに、総合的にベトナムに惹かれる企業が増えてきているという印象があります。もちろんインフラの整備状況なども合わせた複合的な評価だとは思いますが)。

 

 

同じ世界銀行のレポートを元にしたタイに関するニュースについて書いた記事もご参考までに。

chimigaki.hatenablog.com

 

アンコールワット、また行きたいもんです。

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