知磨き倶楽部

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【カンボジア】カンボジア証券市場は買い手市場

以前に本ブログでも取り上げたカンボジア証券市場。2021年6月16日に同国最大の商業銀行にして唯一の上場銀行であるAcleda銀行の従業員持株会による株式売却が承認されたというニュース以来、同行の株価が大きく落ち込んで推移しています。

 

まだ半月ほどですし、そもそも情報開示は少ないし、比較対象企業はないしで評価の難しい話なのではありますが、今日はAcleda銀行が上場した際に主幹事を務めたYuanta証券のコメントが記事になっていましたので、読んでいきたいと思います。

www.khmertimeskh.com

Acleda銀行株価下落に伴う追い記事

同行の株価が急激に落ち込んで以来、幾つかの関連記事が出ていたので、興味をもって見ていました。いくつか紹介しておきます(見出しから元記事に飛べます)。

Mass flood of ACLEDA selling rocked CSX index last week - Khmer Times

これは週が明けた2021年6月21日の記事です。名前は出していませんが、専門家のコメントとして、今回の決定は無責任だとの批判を取り上げています。また、上場から時間がそれほど経過していない中で、流動株を大量に増やすような従業員持株会による株の放出をするべきではないとの助言を会社側にした、というコメントもあります。

総じて市場関係者は批判的な中、今日読んでいく記事の主体であるYuanta証券のMDは「大した量の放出ではない」と読めるようなコメントをしているのが印象的でした。

Six new companies are expected to join securities exchange - Khmer Times

直接的な追い記事ではありませんが、Acleda銀行ショックからの回復が見られない中、今後のIPO予定がリリースされていました。Acleda銀行ショックの一因として、前掲の記事にもコメントがありますが「Acleda銀行の規模が株式市場全体に比して大きすぎること」があると考えられます。その歪みを是正する動きで市場参加者のセンチメントを改善しようという感じですかね。

ただ、8月に上場を予定していると報じられている会社は、Growth市場という、日本で言うとマザーズのような市場。カンボジアではこれまで1社も上場していませんし、規模は小さいだろうということが想定されますので、歪みの解消にはなかなか繋がらないかなと。SBI Royal証券が主幹事を務めるようで、日系の活躍が喜ばしい。

CSX index Q2 ‘report card’ defined by ACLEDA float - Khmer Times

これは今回取り上げた記事の前日のもの。CSXのActing Directorが、レギュレーター側という立場で、Acleda銀行という特定株について「Under Market Value」だというコメントをするということに驚きました。

“The stock is currently undoubtedly [trading] under market value, given its low price to earnings [PE] and price to book [PB] value ratios. It would be almost impossible to find a large commercial bank stock with similar risks and returns in ASEAN countries with a PE less than 10 and a PB less than 1.5,” she continued.

Under Valueなの?

前掲のCSXのActing Directorのコメントにもありますが、今回のYuanta証券のコメントにも同様のコメントがあります。

“The stock price of ACLEDA Bank appears to be undervalued based on its ROE [return on equity] of 15 percent and PE [price to earnings ratio] multiple of nine times,” Yuanta Securities Managing Director Kyung Tae Han told Khmer Times.

彼らは証券会社ですし、主幹事としてIPO時の公募価格算定もしているはずなので、ポジショントーク分は差し引いて考える必要はありますが、客観的にundervaluedに見えるのかどうか、少しばかり見てみたいなと思いました。

 

カンボジア国内市場では比較対象がありませんので、お隣のベトナム市場(ホーチミン市場)に上場しているベトナム最大の商業銀行ベトコンバンクを見てみました。

時価総額ベースではAcleda銀行の10倍以上の規模がありますが、2020年決算ベースで見るとROEは21%、P/Eは25倍です(2021年7月7日時点での情報)。時価総額2位のテクコムバンクでもROE18%、P/E15倍。これだけ見ると確かにPERで10倍を切っているAcleda銀行の現状は上値余地がありそうですね。

 

ただ、時価総額の面でAcleda銀行に偏り過ぎている市場の歪みだとか、市場参加者自体の数の少なさ、ベトナムカンボジアの国力差(成長力の差、市場規模の差)なんてものを考えると、ベトナムの同業と比べるなら割安にならざるを得ないのかなという気も。 個人的には、もう少し「見」でいいかなと思っています。

※ だから金持ちになれないんだ!ということかもしれません、あしからず。

 

参考記事(過去記事)

以前にAcleda銀行株のことを取り上げた際に、カンボジア証券市場の概略などもさらっと書きました。 

chimigaki.hatenablog.com