知磨き倶楽部

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【グローバル】国際平和研究所の世界平和指数レポートを読む

8月23日の日経新聞で「国際平和研究所」(IEP)という機関が発行しているレポートの存在を知りました。日経新聞がこのタイミングで取り上げたのは、やはりアフガニスタン問題の影響でしょうか。

これまで、腐敗度ランキングとかは目にしたことがありましたが、国としての脆弱度を示すランキングというのは、恥ずかしながら初めて見たので新鮮な気持ちで眺めました。

 

今日は、せっかくなので、レポート自体は2021年6月発行とやや時間が経っていますが、最新のGrobal Peace Index 2021に目を通しながら、僕が関心を持っている東南アジア諸国日経新聞の記事ではリスクが集中しているとして取り上げられている地域)について見ていきたいと思います。

www.nikkei.com

国際平和研究所

The Institute for Economics and Peaceが正式名称で略してIEP。2007年に民間人であるSteve Killelea氏によって設立されたシンクタンクで、世界が平和について考える方法についてパラダイムシフトを作り出そうという目的で活動しています。

本部はオーストラリアのシドニーにあり、世界中で本部を含めて6箇所の拠点があります。本部以外の拠点は、ニューヨーク(アメリカ)、ブリュッセル(ベルギー)、ハラレ(ジンバブエ)、メキシコシティー(メキシコ)、ハーグ(オランダ)。ハラレにあるのにアジアには一拠点もないんですね(本部が環太平洋でカバーしている、とも言えますが)。

主な調査分野は「Measuring Peace」「Positive Peace」「Economices of Peace」「Understanding Risk」の4つの分野が挙げられています。調査結果などはOECD世界銀行、国連などの国際機関でも使われているようです。今回は、Measuring Peaceの分野の目玉レポート(に見える)Global Peace Index 2021を読んでいきます。

www.economicsandpeace.org

 

Global Peace Index

今回のレポートは15回目のものとなり、163の国・地域をカバーし、23の指標に基づいて、対象国・地域の平和状態についてランク付けしています。全体の傾向としては悪化傾向にありますし、新型コロナウィルスによる世界的なパンデミックも影響を与えています。

これに目を通しておくと、国際ニュースを読み解くのに良さそうな気がします。

 

ASEAN諸国のGPIランク

IEPでは「Asia-Pacific」として括られていますが、ASEAN加盟の9カ国のみ抜き出してみました(ブルネイは対象外の模様)。

なお、括弧内は2020年版でのランク、国名の後の数字はGPIスコアで、2020年版からのスコアの変化を矢印で示しています。

11位(6位) シンガポール 1.347↑

23位(24位) マレーシア 1.515↓

42位(44位) インドネシア 1.783↓

45位(48位) ラオス 1.809↓

50位(69位) ベトナム 1.835↓

78位(71位) カンボジア 2.008↑

113位(118位) タイ 2.205↓

127位(130位) フィリピン 2.417↓

131位(126位) ミャンマー 2.457↑

 

Positive Peace Index

また、レポートの中ではPPIという指標も算出しています。これは、どれだけ平和を支える社会基盤が整っているかということを示し。GPIと同じ国・地域を対象としてランク付けしています。

通常、GPIの高さはPPIの高さに支えられる、という関係が想定されているため、GPIでのランクがPPIでのランクよりも高い場合、潜在的にGPIが下がるリスクを抱える国として捉えられます。レポートではGPIのランクがPPIのランクよりも20位以上高い国・地域が、Positive Peace Dificitとして分類されています。日経新聞に掲載されている「脆弱度」はここから導かれています。 

なお、今回目を通しているGlobal Peace Index 2021の中では、特にリスクの高いPositive Peace Dificitに分類されたグループの話しかしていませんが、別途Positive Peace Report 2020というものも公表されています。

ついでなので、ASEAN諸国のPPIランクについても見ておきます。

14位 シンガポール 1.56

44位 マレーシア 2.29

68位 タイ 2.91

87位 ベトナム 3.11

90位 インドネシア 3.14

108位 フィリピン 3.37

125位 ラオス 3.61

126位 ミャンマー 3.62

127位 カンボジア 3.63

 

ASEAN諸国の脆弱度

PPIランクは2019年度でしか算出されていないため、Poritive Peace Dificitを算出する際には、時点を合わせるために2019年のGPIランクが用いられています。ASEAN加盟国では4カ国がPositive Peace Dificitに分類されています。

ラオス PPI 125位 対 GPI 55位 脆弱度70

ベトナム PPI 87位 対 GPI 41位 脆弱度46

カンボジア PPI 127位 対 GPI 85位 脆弱度42

インドネシア PPI 90位 対 GPI 49位 脆弱度41

眺めていて思ったのは、ミャンマーのような国は、GPIがそもそも悪いので、脆弱度としては現れてこないんですよね。アフガニスタンはGPIがずっと最低ランクだったそうですし、一つの指標だけ見ていても駄目だという例だと思います。

 

おまけ:日本

ちなみに日本は2021年のGPIランクでは12位(前年も12位)、PPIランク(2019)では16位です。 ここでも、アジアの中でシンガポールの後塵を拝しているんですね。。