【グローバル】3D印刷住宅の出現
最近プロップテックの分野で注目しているのが3D印刷技術を使った住宅です。現時点では大きさや階数などに技術的な制限はありますが、東南アジアやアフリカ大陸諸国など、まだまだ貧困層が多く良質な住宅供給が限られている地域においては、爆発的な可能性を秘めているのではないかと思っています。
今日は、そんな3D印刷による住宅に関する記事を読んでいきます。
英単語メモ
versatility
多才、多芸、多能
versatileの名詞形で、OALDでは個別項目の掲載がないのでversatileを引用
1. (of a person) able to do many different things
2. (of food, a building etc.) having many different uses
3D印刷住宅の持つ可能性
主に2つの点で3D住宅は世界的な課題に対応できる可能性があります。まず一点は、短い時間で、かつ低コストでの住宅供給が可能となることにより、住宅不足の解消に寄与できる可能性があること。もう一点は、全世界の二酸化炭素排出量の11%を占める建設業において、排出量削減をもたらす可能性があることです。
元記事ではアメリカの事情が語られていますが。技術を持った労働者不足というのが深刻な問題になってきているようです。3D印刷住宅は、全体の工程の80%を自動化することが可能で、人手が必要な工程を5%程度に削減できるとしています。
また、プレファブリックにより、それぞれの建設現場へのトラックでの輸送が削減できることで二酸化炭素の排出削減に繋がると言います。
※ これは3D印刷関係ない気がしないでもないですが。。
地域によっては建設資材が変わることになるので、資材の変更による二酸化炭素削減効果も見込まれています。3D印刷住宅は、現状ほぼセメントを材料としたものになるようですが、レンガ造りからセメント造りに変わることで、レンガを作る際の二酸化炭素排出がなくなります。大きさにもよるのでしょうが、これを10,000ドル以下の価格で行えるところが強みです。
3D印刷住宅普及の壁
アメリカのみならず、ヨーロッパの事例も挙げられており、テックに強い先進国で色々な企業が挑戦を始めているようです(中国とか強そうなんですけど、元記事がThe Economistだからなのか言及はないですね)。
しかしながら、普及には壁があるのも事実。
まずは建設にかかる規制です。まだまだ品質に疑問を持たれる段階でもあり、各国での既存の建築基準などにマッチするのか、建築基準を新しく設定するのかなど、規制上の問題はついて回ります。安全性は犠牲にできませんが、特に国として低所得国に分類されているような国などでは、乗り越えやすい問題じゃないかと思います。実際、サウジアラビアやインド政府は相当前向きなようです。
代表的な企業:ICON
3D印刷住宅における代表的な企業がアメリカのICON社です。2018年に創業して、あっという間に200万ドル以上の資金調達にも成功。急拡大している企業です。
元記事では、メキシコにおいて慈善団体と協力し、10戸の3D印刷住宅(46平米)を建設したことが紹介されています。
ビデオを見る限り、上記で紹介したプレファブリックの事例と違って、ICON社は現場で直接射出していくようなんですよね。ビデオ見てるだけでもかなり楽しいです。
さらに、この記事で触れた2つの可能性とは別ですが、NASAと協力して、月や火星での住宅建設の可能性に取り組んでいるとか。3D印刷機を月に持ち込む話は、人気漫画『宇宙兄弟』でも登場しますが、レゴリスを使った住宅建設まで現実的に検討できるステージに来ているんですね。
おまけ
ICON社の記事を読んでいて、ちょっと気になったのが次のコメント。
“Depending on the size of the house, each printer can produce 12 to 25 houses per year. But even if we built one million houses a year, it would take us a thousand years to get to the 1.2 billion homes that’s needed on the planet right now. That’s too long as far as I’m concerned.”
1台の3D印刷機で作れるのは年間に12~25戸とのことなので、1戸当たりは24時間(印刷機の稼働時間ベース)で作れると言っていますが、1戸当たりの総必要日数は約2週間かかります。MEPとか必要ですしね。
普及の鍵の一つは、どれだけ多くの3D印刷機を用意できるのかということにもありそうです。いくらするのか分かりませんが、この辺の情報も含めて、3D印刷住宅については引き続き見ておきたいですね。