知磨き倶楽部

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【ASEAN】アジア開発銀行が東南アジアの成長見通しを下方修正

アジア開発銀行(ADB)は、四半期毎にAsia Development Outlookをアップデートして公表しています。2021年9月22日に2021年及び2022年の見通しに関する最新版が公表され、僕が普段チェックしている各国の現地新聞でも取り上げられていました。

4月に公表される年度最初のものと、9月に公表される中間アップデートは、その他の二つに比べて詳細になっています。

2021年4月以降、東南アジアの各国では時期に前後はあれど新型コロナウィルスの国内感染の急拡大に苦しんでおり、それらが如実に反映された結果になっています。

 

www.adb.org

 

 

ASEAN10ヶ国中8ヶ国を下方修正

このブログでも何度か触れている通り、ASEAN各国は2021年4月以降に新型コロナウィルスの国内感染が拡大し、厳しいロックダウン措置により経済活動にも影響が出てきています。

ADBのレポートにもありますが、この間、世界的には輸出入などのものの動きが戻り始め、輸出産業が経済成長を主導していますが、工場閉鎖の措置なども取らざるを得なかったいくつかの東南アジアの国ではその恩恵が受けきれていなかったりします。また、タイやカンボジアに代表されるように、域内でも観光業の割合が高い国は、引き続き経済成長のエンジンの一つが動いていません。

新型コロナのワクチン接種状況もばらつきがあります。東南アジア全域では凡そ欧米の半分程度の水準ですが、シンガポールカンボジア、マレーシアは50%を超えて域内では欧米並み、もしくは欧米以上の接種率を示している一方で、フィリピン、ベトナムインドネシアは遅れが目立ちます。

 

これらの状況を勘案し、ADBはシンガポールを上方修正、フィリピンを据え置きとした以外、他のASEAN加盟国については2021年の経済成長見通しを引き下げました。

 

ASEAN各国の成長見通し:最新版

具体的に、国別に2021年4月時点での成長見通しからの修正を見ていきますと、以下の通りとなっています。

ブルネイ 2.5%→1.8%(2021年)、3.0%→3.5%(2022年)

カンボジア 4.0%→1.9%(2021年)、5.5%→5.5%(2022年)

インドネシア 4.5%→3.5%(2021年)、5.0%→4.8%(2022年)

ラオス 4.0%→2.3%(2021年)、4.5%→4.0%(2022年)

マレーシア 6.0%→4.7%(2021年)、5.7%→6.1%(2022年)

ミャンマー -9.8%→-18.4%(2021年)

フィリピン 4.5%→4.5%(2021年)、5.5%→5.5%(2022年)

シンガポール 6.0%→6.5%(2021年)、4.1%→4.1%(2022年)

タイ 3.0%→0.8%(2021年)、4.5%→3.9%(2022年)

ベトナム 6.7%→3.8%(2021年)、7.0%→6.5%(2022年)

ミャンマーは状況が状況だけに2022年の成長予測は引き続き提示されていません。

 

インドネシアラオス、タイ、ベトナムは2021年だけではなく、2022年の見通しも下方修正となっています。

域内ではタイのダメージが大きく、2020年に6.1%のマイナスとなっていたことを考慮すると、ASEAN加盟国の中で唯一(ミャンマーは除く)2022年末においてもGDP水準が2020年末時点にまで回復しないという見通しです。

 

おまけ1:レポートの構成

レポートは3部構成となっています。

第一部は総括的に、アジア全域の新型コロナの状況やワクチン接種状況などを見ながら、回復傾向に差があることを分析しています。本記事では、僕がフォーカスしている東南アジアのみを取り上げていますが、実は東南アジアは、他の東アジア・中央アジアなどと比べると下方修正幅が大きく、最もダメージのある地域となっています。

第二部は農業に焦点を当てた分析になっています。ここも読み込んでいくとなかなか興味深い話なのですが、普段あまり追いかけていない話なので、自分の中で消化しきれず本記事では割愛しています。

第三部は国ごとの要因分析やコメントとなっています。東南アジアについては国ごとの状況も示されていて、ここも熟読が必要な部分です。

 

おまけ2:東ティモール

本記事ではASEANとして切り出しましたが、レポートでは東南アジアとしてASEAN加盟国に東ティモールを加えた11カ国で括られています。

東ティモールは2002年に独立を果たした東南アジアの中で最も若い国です。2011年からASEANへの加盟申請を行っていますが、現時点では承認されていません。

なお、レポートの中では「Timor-Leste」です。