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カンボジア: 経済の回復は中国からの投資次第

近年、カンボジア経済は中国への依存度が高まっていると言われています。僕がウォッチしている不動産市場においては、特に投資用コンドミニアムの分野で、中国人向け投資家への販売を目的とした中国系企業の開発の増加が目に付いていましたし、政府の進める主要なインフラ整備のプロジェクトなども中国政府からの支援などが目立ちます。それらに伴って、カンボジアに滞在する中国人の数も増えているようです。

 

これらについては色々と批判もあるところではありますが、カンボジアの発展を助けてきたのは事実ですし、まだまだ自国だけでは予算にも限りがある中、この動きは当面変わらないでしょう。

 

今回は、そんなカンボジアの動向を、中国とFDIという観点から見た記事を読んでいきたいと思います。

www.khmertimeskh.com 

経済成長を支えてきたFDI

カンボジアは2019年には36億米ドルものFDIを獲得しており、COVID-19前の予想では2020年には40億ドル弱のFDIが見込まれていました。近年の急速なFDIの伸び方は以下のグラフに示されている通りですが、 2019年のFDIはGDPの実に13.5%を占めており、カンボジアの経済成長の大きな柱であったことが窺えます。

国別に見るFDI 

2019年のFDI供給元を見てみると、中国が実に43%を占めて断トツです。以下、韓国の11%、ベトナム6%、シンガポール6%、日本6%と続きます(参照元: http://www.xinhuanet.com/english/2020-01/10/c_138694282.htm)。特に、中国の占める割合が大きくなってきたのはここ数年のようですが、これまでのFDIの累計額でも中国が20%強で最大の支援国になっています。

 

ここでちょっと記事の記述に疑問が。

FDIs account for 13.5 percent of Cambodia’s gross domestic product. Inflow from the mainland was valued at approximately $860 million last year – down from $3.6 billion in 2019, according to previously reported figures. 

と書いてあり、前段はいいのですが、後半の記述では、中国からのFDIと全体のFDIの金額が混同されているように見受けられます。まだ公式統計が出ていないのですが、速報ベースでは2020年のFDIはおよそ20億ドル程度だったようなので、中国だけではなく、他国からのFDIも落ち込み、中国が依然として大きなプレゼンスを示していることには変わりないという印象を持っています。

無視できない中国の動静 

東南アジア諸国は、多かれ少なかれ、地域最大の経済大国である中国の影響を受けています。中でもカンボジアは、相対的に経済規模が小さい上に、中国からのFDIが占める金額が大きいために、より色濃く影響が出るのだろうと思われます。

 

カンボジアの経済構造は農業主体であったものから、工業主体へと徐々にシフトしてきています。記事にあるとおり、工業分野へのFDIも15年前には無視できる水準であったものが、全体の10%を超える水準にまで上がってきていますし、工業製品の輸出のGDPに対する寄与率も上がっています。

 

あまり中国の国内情勢に目を向けてこなかったのですが、記事によると、中国では国内での余剰生産分が問題になっているそうで。 特に建設資材や工業関連の余剰生産分などがカンボジアに安価に輸出されたりすれば、カンボジアの経済成長の一助になりそうです。

移動制限の緩和・解除が重要

しかしながら、今年の2月20日に発覚したCOVID-19のローカル感染に端を発する大規模な国内感染拡大が首都プノンペン他のロックダウンを招く事態にまで発展しました。最近になって外国人に対するビザの発給も再開されているようですが、FDIも入国等が通常レベルに戻ってこないと、パンデミック前の水準にまで戻るのは難しいという見方のようです。

 

カンボジアはFDIもそうですが、経済の柱の一つである観光業のこともあるので、特に観光客を呼び戻すために、2021年第4四半期には入国の制限を緩和し、観光客が戻ってこられるようにする方針で動いています。

記事が指摘するように、こうした動きが、もっと一般の外国人にまで広がり、渡航にストレスがなくなることが、経済回復には欠かせない条件になるのは間違いないと思います。カンボジアに限らないですが。

 

ワクチン接種も周辺諸国に先んじて進めているカンボジア(これも中国製ワクチンに大きく頼っています)。個人的にも一日でも早い、入国制限の緩和・撤廃を待ち望んでいます。