知磨き倶楽部

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【タイ】外国人に対する不動産所有制限が緩和されるかも?

タイは、特別なスキームなどを組まないと外国人が土地を保有することが難しい国だという認識ですが、タイ人の不動産屋と話をしていた時に、一定の条件化で外国人の不動産所有制限が緩和されるかもしれないとの話を聞きました。

マレーシアでMM2Hが改悪方向にある中、外国人の投資及び滞在を呼び込むために何かしらしてくるかもとは思っていましたが、現状から比べると、なかなか思い切ったことを考えていそうな感じです。

 

今日は、タイの英字新聞Bangkok Postの社説に当たる記事を読んでいきます。

www.bangkokpost.com

 

 

英単語メモ

controversial

議論の、物議をかもす

causing a lot of angry public discussion and disagreement

brand

(罪人、家畜に)烙印を押す、(人を)(~だと)決めつける、(良くない経験が)(人・心に)傷跡をのこす、(よくない経験が)(心に)(あることを)刻みつける

to describe sb as being sth bad or unplesant, especially unfairly

to mark an animal with a BRAND to show who owns it

名詞には日本語にもなっている「ブランド」の意味がありますが、動詞で使うと、「ブランド」から連想されるプラスのニュアンスが全くないことに留意ですね。

なお、英英辞典では受動態で使われることが多いとの記載もあります(元記事では能動態ですけどね)。

tantamount

(~に)同等で

having the same bad effect as sth else

これは、英和では感じられなかった「bad effect」の部分に留意が必要そうです。

traitorous

反逆(罪)の、裏切る、不忠な

giving away secrets about your friends, your country, etc.

 

タイ政府が検討している内容は?

当ブログで以前に記事にしましたが、タイで外国人が不動産を購入すると言えば、一般的には「コンドミニアム(区分所有権)」です。

chimigaki.hatenablog.com

しかし、足下の不動産市場にも如実に現れている通り、現地の購入者層はやはり戸建て住宅を選好する傾向が強く、外国人市場が失われてしまったコンドミニアム市場は大きく低迷しています。

個人的にはこれはタイに限ったことではないと思っていますし、外国人としても戸建て住宅あるいは土地に投資が出来ればと思わないでもありません。東南アジア各国でも制限付きとはいえ、外国人に戸建て住宅の所有を認めている国もあります(元記事ではカンボジアもそうだと書かれていますが、カンボジアにそんな特例あったかなあ)。

 

元記事を読む限り、主な内容は10年間の滞在ビザを与えることだったり、対象者の国外所得に対する課税を免除する税制メリットだったりするようで、不動産の所有制限というのはその一部のようにも見えます。

ただ、不動産の所有制限というのはセンシティブな話題で、批判が巻き起こっているようです。

 

対象者は?

タイ政府が想定する対象者は富裕層(50歳以上、年金生活者含む)、デジタルノマド、高度化人材という感じです。富裕層には資産要件もありますし、所得制限もありますがデジタルノマドの要件は現時点では結構曖昧で、若年層にもチャンスがありそうですね。

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不動産の所有制限緩和

現時点での案としては、特定の住宅開発プロジェクトの中で、10百万タイバーツ以上の住宅が外国人の購入・所有対象になるようです。大体30万米ドルくらいですから、富裕層にとっては大きな壁ではなさそうです。

これはマレーシアでの最低購入可能価格に近く、段階的に引き上げていくと市場にも悪影響が出ますが、最初からこのラインであれば現地購入者との棲み分けも行いやすいのではないかと思います。

(現地での売れ筋を見ていると、10百万タイバーツ以下の物件が通常のタイ人には購入しやすい価格帯のように見えます)

 

また、コンドミニアムに対する所有制限も、現行の49%までを70%~80%程度に引き上げようとしているようです。こっちの方は外国人投資家の目から見ると、そんなに外国人ばっかりターゲットにして出口大丈夫なの?という気もします。タイのコンドミニアム市場は外国人の買い手の存在もそうですが、外国人以上に現地の購入層もたくさんいるという点が、投資目線では一つの安心材料でもありますが、果たして。

 

ただ、コンドミニアムの所有制限が引き上げられると、多くの日系企業が参画している開発プロジェクトなどの持分割合も引き上げられる可能性があります。現行法の下では、土地を所有するためには現地資本が過半を超えていないといけないはずですが、コンドミニアム作るなら70%までいいよ、とか。そうなると開発業者の投資も呼び込めそうですけど、そこまではいかないかな。

 

現地での批判と元記事の立場

元記事によれば、「売国」的な計画だとして批判の声が上がっているようです。また、国民ですら住宅を購入できない層が存在するのに、外国人に住宅を購入するインセンティブを与えてどうするのか、との声も。

元記事は末尾に「These editorials represent Bangkok Post thoughts about current issues and situations.」とありますので、社説的なものだと判断していますが、これらの批判には懐疑的な立場です。

That said, accusations the government is selling out the country are exaggerated. Bluntly speaking, whether housing inequality is addressed or not has nothing to do with this scheme. Even without incentives being offered to foreigners, inequality would not magically be solved.

手放しでこの方向性に賛同しているわけでもありませんが、少なくともきちんと議論され、この施策が周辺他国との競争において有意義なものであれば導入も已む無しという立場を取っているように読めます。

 

外国人投資家の立場としては、ただ成り行きを見守るだけですが、この方向性が示されている以上、頭の片隅に「タイの戸建て住宅」という選択肢を置いておくのは悪くないことだと思います。

個人的には、3000万円前後でマレーシアにコンドミニアム買うなら、タイで戸建て住宅買う方が投資的にも面白そうな気はしています。ただ、投資期間中のレンタルとか外国人には更に手が出なさそうな不安もありますけど。

 

この動きは引き続き見ておきたいと思います。