知磨き倶楽部

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【タイ】外国人がタイで不動産を購入することはどれくらい難しいのか?

日本人に限らず、中国人などの海外投資先としても人気の高いタイ不動産。

人気が高いだけに、多くの日系仲介会社も日本人向けに販売していて、日本語媒体でも情報の入手が比較的しやすいのですが、たまたまタイのお隣カンボジアのメディアで記事を見かけました。

 

カンボジアに比べるとタイは20年から30年ほど進んでいるような感覚を個人的には持っているのですが、そんなカンボジアの媒体でどう紹介されているのか。以前に仕事の関係でタイの不動産購入をお手伝いした際の経験も思い出しながら、読んでいきます。

www.khmertimeskh.com

どんな不動産が買える?

まず、タイでは外国人が単独で土地を購入することはできません。もちろんタイ人(又はタイ法人)に過半を所有してもらって会社を作って買うという手段はありますし、そういう仕組みを前提に販売している業者に会ったこともありますが、個人投資家にはハードル高めです(こういうのに騙される人は後を絶たない)。

したがって、タイでの不動産投資といえばコンドミニアム(マンション)の区分所有権というのが基本になります。全体の40%まで、という制限はありますが、これは普通分譲業者がコントロールしているので、買う際に心配するポイントではありません(上限に達していれば「外国人枠は売れてしまった」と言われます)。

ちょっと分かりにくいのが、建物一棟だけを購入することは可能、というくだり。賃借権付建物、みたいな感じですかね。個人で探していて、あまり見かけるケースはありませんが。。

 

とにかく、タイ不動産投資=コンドミニアム(区分所有権)投資、と考えて大きくは外さないと思います。

ハードル高めの投資方法も

近年の法改正で、外国人にも30年のリースホールド(賃借権)が認められるようになったようですが、色々問題はありそうです。記事では、賃貸人の許可なしに、転借や賃借権自体の転売はできないということが挙げられていますが、投資には向かない感じです。そもそもリースホールドの延長は認められるのに登記ができなくて、勝手に対象の土地を賃貸人が売っても善意の(かどうかは明記されていませんが)第三者への対抗要件がないというのは、30年先の話ですが致命的な気がします。

(権利関係、所有権なり賃借権なりがきちんと保護されるかという点は大事)

ベトナムのように原則リースホールドしか存在しない国は別ですが、外国人にも所有権がきちんと認められている国では、個人投資家でのリースホールドへの投資は二の足を踏んでしまいます。

 

前述した会社を設立して土地を保有するという方法も記事では触れられています。

Khmer Timesが発行されているカンボジアでは、これがかなりこなれたスキームとして知られていて、信頼できる知り合いがいなくても、弁護士事務所なんかに相談すれば何とかなります。

ただ、タイでは弁護士事務所自体が、そうしたスキームの提供を行うことは違法だったはずなので、プライベートで見つけてこないといけないところは、やっぱりハードル高いですよね。調べれば、そういうビジネスをしている会社も見つけられますけど。

 

そのほか、投資委員会の許可があれば、みたいな話も書かれていますが、これは完全に事業用じゃないでしょうか。個人投資家が手を出せる話じゃないと思います。

投資用にローンは借りられる?

現地の銀行で住宅ローンが借りられるのかどうかは、投資のしやすさにおいては重要なポイントです。

2011年頃に個人投資家によるマレーシア不動産(コンドミニアム)への投資がブームになりました。その一因として、居住していない外国人でも現地の銀行で、物件価格の70%とか85%とかのローンを借りられる、という点がありました。マーケットが軟調になって不良債権が結構出て大変なことになったやに聞いていますが。。

 

タイの現地銀行は外国人には住宅ローンを提供してくれないと書いてあります。

僕の経験では、タイに進出している外資銀行の中には、タイ国外のアカウントでタイ不動産購入用の住宅ローンを提供するサービスを提供する銀行はあります(担保は購入物件)。自分の居住国の銀行が進出していて、サービスを提供してくれていないと難しいので、日本人にはやや狭き門だとも言えます(日系銀行は、国内で取引のある事業者向けのサービス以外には、あまり積極的ではない)

日本では、日本国内で賃貸業を営んでいれば、その事業の海外展開という名目で、日本国内の不動産を担保にしてローンを提供する制度(海外展開・事業再編資金|日本政策金融公庫)を日本政策金融公庫が提供しています。これは、海外で借りることを思えば(為替リスクはあれど)相当低利で借りられることになるので、一考の余地があると言えますが、本来の制度の目的からすると、どうなんだろうと思わないでもないので、ご利用は自己責任で。

 

そのほか、外国人がタイの不動産を購入する際には、購入資金も外貨でタイ国外から送金しないといけないという規制もあります。しかも、送金指示書に「For Purchase of Condominium」と明記しないと不動産購入資金として認められず、後日所有権移転の際に証明書不足で所有権の移転ができなかったりします。

当時の記憶では、CondominiumとApartmentは違うから気をつけて、とも言われました。何が違うのかは教えてもらえませんでしたが、ちゃんとした分譲業者(仲介会社)から購入すれば、この辺の手続きはそんなに心配しなくても大丈夫でしょう。

最後に

どれくらい難しいのか?というタイトルですが、コンドミニアムに限ればそんなに難しいことはない、というのが、記事の内容から把握できる範囲と、僕の経験に照らした感想です。

 

最後まで記事を読んで気がつきましたが、この記事のクレジットはGrobalpropertyguide.comなので、別にカンボジアのメディアがカンボジア人向けに書いたわけではないのですね。

ただ、それをわざわざ引っ張ってきてカンボジア人向けの媒体に掲載したという意味合いを考えてしまいます。絶対数が少ないので目立ちませんが、お金持ちの人などはタイ国籍を取得して、タイ人として土地に投資していたりしています(カンボジアでは二重国籍は合法)。カンボジア人によるタイ不動産投資を促しているのでしょうか。