【タイ】不動産市場の回復見通しが後退
7月12日から始まったロックダウンの8月31日までの延長を決めたタイ。政府は同日、2021年の経済成長見通しについても、今年３度目となる下方修正を発表しており、明るい兆しが見えにくい状況になっています。唯一、バンコクにおける陽性率が下がり始めているというニュースがありましたので、一日も早いロックダウンからの脱却を願っています。
今日は、そんなタイの不動産市場の回復見通しが後退したという記事を、経済見通しの下方修正の記事と一緒に読んでいきます。
経済全体の見通し
タイは2021年第２四半期の経済成長の実績を7.5％と発表しました。 これは2020年の第２四半期が大幅に落ち込んだことによる反動ですが、2021年第１四半期と比べても0.4％の成長を達成しています。従前の予想では、年率ベースで6.4％、2021年第１四半期からは1.4％のマイナス成長とされていましたので、市場予想を上回る結果となりました。
経済回復への明るい兆しとしては、輸出が増えていること、財政支出が増えていることが挙げられています。
しかしながら、主要産業の一つである観光業については、足元の新型コロナウイルスの状況に鑑みて、外国人観光客数の予想を50万人から15万人へと引き下げるなどしており、引き続き厳しい見通しがうかがえます。
第２四半期の実績が市場予想を上回った一方で、タイ政府は2021年の成長見通しを、0.7％～1.2％へと下方修正しました。下方修正は今年に入って３回目となります。
2020年11月時点の予想：3.5％～4.5％
2021年2月時点の予想：2.5％～3.5％
2021年5月時点の予想：1.5％～2.5％
今回（2021年8月時点）の予想：0.7％～1.2％
不動産市場の回復見通しは大幅に後退
住宅市場は、新型コロナ以前の水準にまで回復するのに2025年までかかるとしています。以前はどれくらいの期間を見込んでいたのか明示がありませんが、個人的にタイの不動産関係者と話した限りでは、2023年頃と聞いていました。
足元の指標も悪化しています。
housing transferは2021年第１四半期との比較では回復しているように見受けられますが、前年同期比ベースでは2020年第１四半期以降、件数・金額共に減少が続いています。こうした市場の傾向は、住宅の新規供給や住宅ローンにも影響しており、現時点では回復の兆しが見られないとしています。
2021年第２四半期の数字は新型コロナ前の2015年～2019年の5年間の平均を下回っていますが、元記事では2021年第３四半期も回復は期待できず、2021年第４四半期に５年間の平均に回帰するとみています。ただし、それでも2021年全体では、2020年に比べて件数ベースで5.7％、金額ベースで6.2％の減少と見込まれています。
これらは先日記事で取り上げた不動産開発業者の先行き景況感が悪くなっている、という話とも整合しています。
Presalesでは強気な動きも
元記事では、タイの大手デベロッパーの一社であるPruksa社のコメントが出ていますが、広域バンコクにおけるPresalesの様子を見ると、特にSingle-detachedと呼ばれる土地付き住宅の販売が好調で、全体で前年比16％販売が増加していると言います。なお、こちらの指標では、2020年第４四半期以降、増加傾向が続いています。
また、市場全体の完成在庫も4％ほど減少していると言います。
ただし、足元の経済状況が芳しくない点についてはやはり留意が必要だと思います。Presaleで購入した方々が引き渡し時点で住宅ローンを借りることができる状態にあるのか、という点が懸念の一つです。特にSingle-detachedなどの戸建ては竣工までの期間がコンドミニアムに比べると大幅に短いためです。
それでも、購買意欲が沈みきっているわけではない、というのは明るい材料であることは間違いないでしょう。5,000,000タイバーツ以上のSingle-detachedを買える購買層には、新型コロナによる影響もないと言っています。
個人的には、現在は外国人が手を出せない戸建て住宅が市場を支えている格好で、投資として考える際の対象となるコンドミニアムは厳しい状況が続いている、という見方を基本として持っています。一方で、新規供給も出にくい環境であるため、しっかりとした業者が開発した完成済みのコンドミニアムであれば、値引き幅も期待できるし、いい機会だと思うんですよね。
投資に回せる余裕資金が手元にあればなぁ･･･と思いつつ。。。
