知磨き倶楽部

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インドネシア: 不動産市場を支える政府の支援策

足元、急速にワクチン接種者数が増加し、一時期に比べるとCOVID-19の感染拡大に歯止めがかかってきたように見えるインドネシア。2021年第一四半期のGDP成長率もマイナス0.7%と、予想より若干悪かったものの、回復傾向が見られました。

 

そのような中、インドネシア政府は2021年に4.5%~5.3%の経済成長を達成するために、経済に与える影響の大きい不動産市場向けに、結構大胆な支援策で販売を促進し、裾野への影響拡大を狙っています。

 

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大胆な二つの施策

1つ目の施策は「民間銀行に対してLTV100%の住宅ローンを認める」というもの。従来は、確か90%が上限だったと思うのですが、これによって貯蓄などが十分ではなく、頭金の支払が難しい若年層の購買を期待しています。

 

2つ目の施策は「完成済の住宅購入に関するVATの課税を減免する」というもの。VATは日本で言うと消費税のようなものですが、インドネシアでは土地・建物の価格割合に関係なく、総購入額全体に対して10%のVATがかかっていました。これを減免することで、実質的に値引きを受けられたような状態を作り出して、住宅購入意欲を促進することを期待しています。 

効果の見通し

効果測定にはまだ時期尚早ではありますが、僕なりに見通しを立ててみたいと思います。

 

1つ目の施策に対しては、結局は民間銀行の与信審査によるものなので、効果は限定的なのではないかと予想しています。予算上難しいのは分かりますが、ここに政府保証をつけるとかしないと、借り手の返済能力に対する不安が軽減されない銀行が住宅ローン提供に踏み切れないと思うからです。

 

2つ目の施策に対しては、結構効果出るのではないかと思います。VATの減免分をどう販売価格に反映するかは各デベロッパーによりますが、納付義務がなくなるのであれば、大胆に反映させてくるはずです(実際、そのような動きが見られます)。マーケットを壊さずに住宅価格を下げられますし、あまり他国でも見られない例なので期待しています。

足元の反応

記事からは2つ目の施策について、既に市場でも反応が出ているようで、販売数に結果が表れているようです。もう少し長期での適用を期待する声も根強いようです。

さらなる期待

僕は基本的に住宅市場をウォッチしているのですが、工業用不動産についても記事では触れられています。特にEVを含んだ自動車産業を狙っているようです。

インドネシアは、郊外に工業団地が形成されることで周辺に大きな街が形成されているという事情もあります。日本人学校ジャカルタ郊外のブカシ県チカラン(工業団地が集まるエリア)に開校されました。新たな産業が入ってくることによって、こうした住宅市場の盛り上がりが期待できます。

 

今回の記事は、主に現地のインドネシア人向けの住宅市場に関するもので、外国人が高級コンドミニアムなどへの投資を考える場合とはやや異なりますが、大きな市場動向として、自分の知識をアップデートしてみました。