【インドネシア】住宅所有率が低下ーアフォーダンスの懸念増加
東南アジア諸国の中でも巨大な人口を抱える国インドネシア。足元、再びCOVID-19の新規感染者数が急増し、病床使用率も高止まりが続く状況になっています。2021年6月に発表された世界銀行による国別の経済レポートでは「Boosting the Recovery」と題され、2021年の経済成長率は4.4%と予想されているインドネシアですが、舵取りを間違えると経済回復期待にも水を差しかねません。
今日は経済全体の話はさておき、インドネシアにおける住宅所有率が低下している、という記事を読んでいきます。
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首都ジャカルタにおける住宅所有率の低下が顕著
インドネシアにおける住宅所有率は住宅価格の上昇が要因となって、1999年以降下がり続けているとのことですが、 足元、COVID-19のパンデミックによる影響で実収入の減少もあり、さらに購買力の低下に拍車がかかっているようです。
インドネシア全体での住宅所有率は1999年時点で85%ほどであったところ、2020年時点では80%強という水準。日本は持ち家住宅率60%強程度なので、それに比べるとまだまだ高いんですけど、同じ基準で数字を較べられているかどうかは分かりません。
ただ、州別に見ていくと明暗が結構分かれていて、2020年時点における首都ジャカルタでの住宅所有率は、1999年に比べると約3分の2まで低下し、半分以上の世帯が賃貸住宅に居住しているそうです。
(The Jakarta Postの対象記事より転載)
住宅の販売は回復の兆し
パンデミック下にあっても、2021年1月~3月の住宅販売動向は前年同期比プラスを記録していますし、4月~6月の数字も前年同期比プラスを維持しそうな見通しです。
売れ筋は36平方メートルから70平方メートルの住宅で、政府によるパンデミック下での住宅取得支援策が後押ししていると記事は分析しています。
※ 支援策の内容については以前に記事にしていますので、よろしければどうぞ。
購買力と住宅価格の乖離
購買力に懸念があるという一方で、パンデミックによって住宅販売が落ち込んだ時期も住宅価格指数・平均住宅価格は上昇を続けています。記事が引用しているコメントによると、政府が決める税金の算出根拠となる不動産価格(公示価みたいなもの?)が上がり続けていることが一つの要因だと言います。
2019年の世界銀行のレポートによると、首都ジャカルタにおいては収入に対する住宅価格は10.3倍に達し、地域によっては約12倍にまで達しているそうです。記事にも、これはニューヨークに比べても2倍の水準とありますが、一般的には収入に対して5倍以内というのが住宅購入時の一つの目安(住宅ローンを借りるときなど)と言われていますから、収入に対して住宅価格が高くなりすぎているという印象は強いですね。
また、住宅ローンの平均期間も思ったより短いようです。平均すると約12年。収入の10倍する住宅を買って12年で返すというのは、なんか計算合わない気がしないでもないのですが、住宅を買った人の31%程度の人が、上記の条件で住宅ローンを借りています。ただ、住宅を買いたい人の3分の1は資金不足を理由に断念しているようです。この辺りの金融面での仕組みというかサポート不足というのは、インドネシアに限らず東南アジアの他の国でも見られる状況です。
それでも、借りる人たちは増え続けているといいますから、これが、明日は今日よりよくなるとみなが信じる新興国の強さというか勢いなんでしょうかね。
おまけ(書籍の紹介)
最近以下の本を読みました。この本によれば、ジャカルタの中心部だけで見れば、一人当たりGDPはすでに約5万ドルに達していて、大阪市のレベルを超えているそうです。保守的な試算でも、2030年には軽く東京の一人当たりGDPを追い抜き、10万ドルを超えてくるとか。結構驚愕の数字ではないでしょうか。
そう考えると、単にジャカルタにおける収入に対する住宅価格が10倍と言っても、細かく見ていく必要がありそうですね。
この本は、中国と結びついて巨大経済圏を形成している東南アジア諸国(特にASEAN5と呼ばれる国々)に関して、今起きていることを分かりやすく紹介してくれているので、お勧めです。