知磨き倶楽部

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カンボジア: コンドミニアム市場アップデート(2021年4月)

COVID-19の影響で4月15日から首都がロックダウンに入っているカンボジア。当初4/28までの予定でしたが、5/5まで延長されています。

COVID-19が不動産市場、特に外国人投資家を対象とした首都プノンペンコンドミニアム市場にどのような影響を与えているのか。国際的な大手仲介会社CBREが定期レポートを発表したことを受けての記事が出ていますので、記事を基にして状況を見ておきたいと思います。

 

www.phnompenhpost.com

外国人主導のマーケットで、2020年はとにかく厳しかった

COVID-19の渡航制限によって外国人投資家が減少したことにより、特に2020年のコンドミニアム市場は価格の低下が起こっていました。

CBREの調査によれば、高級コンドミニアムの平均価格がUSD3,600/㎡からUSD3,000/㎡を下回る水準にまで低下したと。 中級以下でも同じような価格低下傾向が見られました。

外国人投資家の減少を受けてか、建設中のプロジェクトでも中断しているプロジェクトが相当見受けられます。CBREが把握している建設中のプロジェクト279件のうち、13%が中断しているそうです。

 

これは、カンボジアに限らず東南アジアのコンドミニアム投資には共通することですが、プレビルトで販売されている物件というのは、購入者からの継続的な支払(完成前でも定期的に支払う必要がある)を最初から当て込んだ事業計画になっているため、販売が滞れば開発業者の資金繰り計画が大きく狂って工事中断となります。

特にカンボジアでは、開発業者が開発資金を民間銀行などから調達できていないケースが多く、販売動向が工事進捗に直結しやすい構造になっています。

※ マレーシアやタイなどでは、開発業者が民間銀行から開発資金をファイナンスしていることが一般的なので、ある程度の販売水準さえ達成していれば、竣工までは漕ぎ着けられる可能性が飛躍的に高まります。

2021年第一四半期は回復の兆しが?

しかしながら、2021年第一四半期を見ると、高級コンドミニアムと低級(アフォーダブル)コンドミニアムでは価格の反転が見られたとしています。

これ、個人的には反転する要因が見受けられず、記事でも要因分析がないので何とも言い難いのですが。

 

投資家としては利回りも気になるところですが、こちらも2021年第一四半期で2020年末と比べると回復を見ています。

ただ、2020年竣工予定だった物件の竣工が遅れていたりして、これからも市場への新規供給が続くことから、このトレンドが続くのか否かは注意が必要ですし、そもそも1年前と比べればまだ落ち込んでいる水準だという点は押さえておかないといけません。

短期的な懸念事項も大きくはない

カンボジアでは、主に外国人投資家のために、Guarantee Rental Return(家賃保証)付での販売が行われていました(今も行われている)。

これは、一定期間デベロッパーが購入者から借り上げるスキームです。ちゃんと貸せれば何の問題もないのですが、貸せないとデベロッパーが保証した家賃を払えないという事態が起こりえます。

記事では、たとえ賃料相場が一時的に下がったとしても、デベロッパーはうまく管理して債務不履行(家賃保証の不履行)を起こすことはないだろうと見ています。

販売時に家賃保証相当額を価格から差し引いているケースもあり、必ずしも家賃の支払が発生しない(購入者からすれば購入時にすでに受け取っていることに等しい)ような形態もあるようで、こうしたコンドミニアムが市場にどれくらいあり、抱えているデベロッパーがどこまで家賃保証の支払に耐えられるのかが、賃料価格の動向に影響してきそうです。

 

また、家賃保証をなくしたり、家具をつけるのを止めたりして価格を下げ、外国人投資家ではなく、現地のカンボジア人向けに販売を行う動きも見られます。

これ、びっくりするくらい価格が下がるケースがあって、「外国人投資家にどれだけ乗っけて販売していたんだよ」、と思わないでもないのですが、体力に任せて誰も住まないコンドミニアムが増えるよりはよほど健全な動きだと思います。

 

一方、明るい材料として住宅ローンの不良債権比率がそれほど上がっていないという話が書かれていますが、これはどうなんだろうと。

カンボジアではプレビルドの物件に住宅ローンを提供してくれる銀行はほとんどなく、基本的には竣工してから初めて住宅ローンが発生します。なので、開発中のコンドミニアムの販売動向に、住宅ローンの不良債権比率云々というのはいまひとつピンとこない。

じゃあ、ある程度お金持っている外国人投資家はともかく、現地のカンボジア人はどうやってコンドミニアム買うの?と言えば、デベロッパー自身がファイナンスを提供しているのが現状で、これは記事にあるCBCカンボジアの与信当局)では把握できないという問題があります。

銀行金利より高いのが一般的なので、COVID-19で収入が悪化したカンボジア人の方々が、今後投げ売らないとも限らず、このリスクは統計調査からは測れないのが現状です。

それでも長期的には買いの市場

プノンペンコンドミニアム市場は供給過剰の懸念が指摘されているのですが、記事からは、今回のCOVID-19で新規供給が一時的に減少したことで、供給量の調整が入り、結果として需給のバランスが取れるのではないか、という見通しが読み取れます(供給過剰だったことなどない、と強気な発言もありますが、それは流石にポジショントークでしょう)。

特に、上昇一辺倒だった価格に一回調整が入ったことで、サイクル市場に入ったと見れば投資も健闘しやすくなります。

 

個人的には、いいタイミングなんじゃないかと思ったりしますけどね。

 

※写真は高級コンドミニアムが多く作られているエリアです。

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