知磨き倶楽部

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グローバル: BCGによる就労先としての人気国調査2021年版から思うこと

僕は東南アジアで働き始めて10年目になったところで、これからも当面は東南アジアで働いていたいなと思っています。

あまり国に拘りはないと思っていましたが、やっぱりイスラム教の国は難しい面が多いなとか(働いた経験はあります)、ユーラシア大陸に位置する国のほうがいいなとか、だんだんと輪郭が形成されてきて、選べるとしたらどこがいい?と聞かれれば答えられる程度にはイメージがついてきました。

 

Twitterにこんな記事が流れてきたことをきっかけに、記事の元になった調査に目を通したので、「日本」のランクについて少し見ておきたいと思います。

www.nst.com.my

調査は、コンサルティング会社のBCG(ボストンコンサルティンググループ)と、オンラインリクルーティング会社のThe Networkが共同で行ったもので、今回の調査で3回目です(初回2014年版、前回2018年版、今回2021年版)。

www.bcg.com

今回の調査は2021年3月公表なので、BCGのウェブサイトに従って2021年版と呼びますが、レポートの中では「2020」として扱われています(調査時点が2020年11月~12月くらいに見えます。普通、調査時点を明記するんだけどなぁ)。

 

調査の対象は190カ国、20万人強。

ただ、日本からの回答者数は50人未満ということで、残念ながら日本人の傾向をこの調査から読み取ることはできません。

(あくまで「どこの国から回答したか」なので、日本人が50人未満というわけでもないかもしれませんが、日本国外から回答した日本人は、それだけで日本人全体の傾向を示すには適していないとも思いますし)

調査によれば、総じて国外で働きたいと思っている人の割合が減ってきていますが、COVID-19の影響が拍車をかけているかもしれませんね。

リモートワークを望む人の割合は高まっていることも顕著な傾向です。

 

今回の調査結果では、これまで首位だったアメリカが2位に陥落し、カナダがトップに躍り出ました。

ただ、回答には、COVID-19の影響が出ている可能性を排除していません。

レポートでは、20位までにランクインした国の順位変動幅と、それらの国での100万人当たりCOVID-19感染者数を比較していて、両者の間には、わりと綺麗な相関関係が見られるとしています。

(東アジア・環太平洋の国の順位が相対的に上がっている)

ここは単純な相関というより、因果関係があると考えたほうが自然ですよね。

感染者数を2020年11月26日時点の数字で取っているので、その後感染が急拡大したなどの事象が発生すれば、直近では順位落ちるかもしれません。

 

そのような中、日本は大きく順位を上げて6位にランクインして(2018年調査では10位)、アジア諸国の中ではトップです(次点はシンガポールで、7位にランクイン)。

今や日本の給与水準は相対的に高くなく、働きに来る場所としての日本の魅力は低下している、なんてことが言われたりしますが、これは真逆の結果ですね。

調査対象者の真剣度が分からないので、じゃあ実際行くか?というと、日本に限らずですが、また違った決断があるのかもしれない点には注意が必要だと思います。

 

どんな人が日本に行きたい(move to for work)と思っているのでしょうか。

これがちょっと興味深くて、

ー Highly Educatedに分類される人々に限ると、10位に入ってこない

ー Less Educatedに分類される人々の中では5位にランクイン

ー Digital Talentsに分類される人々の中では6位にランクイン

ー Blue-Colorに分類される人々の中では2位にランクイン

ー White-Colorに分類される人々の中では6位にランクイン

ー Yongerに分類される人々の中では6位にランクイン

ー Olderに分類される人々の中に限ると、10位に入ってこない

という結果でした。

 

それぞれに何人ずつが分類されているのかという情報がありませんが、Highly EducatedとかOlderの中での人気が相対的に低いというのは、高度化人材の流入を求めながらうまくいっていない現状と合っていて、ああ、そういうことなのかなぁとも思ってしまいます。

 

ただ、全体的に、どうも調査母集団に偏りがありそうな調査だなぁという感じです。

日本からの回答者が50人未満ということは既に触れましたが、ベトナムからの回答者も50人未満である一方、ネパールとかパキスタンからは50人以上回答していたりするんですよね。

アジアの中で5,000人以上が回答している国は、インドネシア・フィリピン・シンガポール・マレーシアの4カ国のみで、中国とタイから、それぞれ1,000人以上が回答しています。

人口構成比とかけ離れてますからね、こういう母集団情報には気をつけて読みたいところです。

(ちなみに、全体では5,000人以上が回答している国が12カ国あり、これだけで調査母集団の3割を占めます。人口で世界1位・2位の中国もインドも、この12カ国に入ってないです、念のため)

 

とはいえ、時々こういう調査も元のレポートを辿って読んでみると面白いなと思います。

ランクインした国の中では、1位になったカナダは、行ったことはないですが、話を聞く限り、僕も興味がある国ではあります。

今現在がどうなのか分かりませんが、アングロサクソン系の国の中ではアジア系民族にとって住み良い(差別が少ない)国だと聞いていますし。

ちなみに、冒頭で書いた「選べるならどこの国がいい?」という質問に対して僕が答えるであろう国は、ランクインしていないんですけどね(笑) 

 

 

※ 写真は、以前にユーラシア大陸最南端地点を訪れたときのもの。マレーシアにあります。

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