知磨き倶楽部

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【中国】中国恒大が破綻の危機

中国の巨大デベロッパー中国恒大の経営不安に関するニュースが、先月頃から目立つようになってきています。日本のメディアでも登場回数が急に増えました。

これまで中国の海外投資、特に東南アジア向けの投資には関心を持っていましたが、個別企業の動きにはあまり注意を払っていませんでした。ただ、今回の案件は今後への影響が大きそうなので、この辺りで振り返っておきたいと思います。

 

www.nytimes.com

 

 

中国恒大とは

香港市場に上場する中国大手の不動産開発業者です。同社グループのウェブサイトによると、1996年の創業以来、中国280以上の都市で1,300以上の開発プロジェクトを手がけ、1,200万人の顧客を抱えるという巨大さ。

2020年末の時価総額ランキングでは、中国不動産開発業者の中で第3位の地位にあり、民営4強の一社として認識されています。また、Fortuneが発表している世界トップ企業500社の2021年版では、122位にランクされています。

英語名はChina Evergradeです。

fortune.com

 

何が起こっているのか

巨大企業らしく中国恒大は3,000億ドルもの負債を抱えており、足元で手掛けている開発プロジェクトも800近くあります。ただ、中国政府は目下、急騰する不動産価格をハンドリングするために銀行に対して、一社当たりの貸付額だったり、不動産業向け融資が全体ポートフォリオの伸びよりも増加しないようにといった総量規制を行うよう指導しています。そのため近々償還を迎える巨額の社債が償還できないのではないか、という懸念が急速に持ち上がっています。

もともと、新型コロナによる影響もあったでしょうが、開発の遅れで購入者からは訴訟を起こされていたようですし、2020年中にすでに中国恒大の株価は2019年末に比べて4割ほど下落していました。経営破綻の噂が取り沙汰されるようになって株価はさらに急落していますし、社債についても実質利回りがとんでもない数字になっています。先週には、FitchやMoody'sといった格付け会社も同社の「破綻の可能性」についてかなり高い確率で起こりえるという趣旨のコメントを出し始めていました。

 

中国恒大は今週13日の月曜日に「インターネットで流布している、破綻やリストラの噂については全く真実ではない」とのコメントを発表しましたが、14日の火曜日には深刻な問題に直面していることを認めると共に、リストラのための専門家を雇ったことも公表しました。リスクマネジメントの観点からは、あまりいい対応とは思えませんね。

このような事態を受けて、中国恒大のみならず、中国の不動産市場自体に対する不安や他の中国不動産開発会社に対する懸念も広がり、金融市場は動揺しています。

 

中国恒大は他の事業(EV事業や不動産管理事業など)や香港のオフィスビルの売却に動いていますが、今のところ確たる売却先は見つかっていないようです。どうもFire Saleで価格がさらに落ちるのを待たれている模様。会社のリリースによれば、子会社を通じて保証していた理財商品(wealth management products)の保証履行もできなかったという事態が既に起こっています。

また、開発中の不動産(住宅)をすでに購入している中国人からも突き上げられています。ニュースが広がって新規の販売にも大きな影響が生じており、2021年8月の新規販売は大きく落ち込んだようです。

 

市場の期待は中国政府による救済

他の資本主義国家でも「too big to fail」な会社に対して政府が救済措置を採る事例は見られます。中国は政府が強力に統制している国ですし、これまでにもそのような事例はありました。

しかしながら、現時点では中国政府に救済の動きは見られないようです。

 

経済への影響

すでに株価や社債利回りなどに見られるように、グローバルな金融市場では中国恒大のみならず、中国不動産開発会社に対する懸念が表面化しています。

一方、中国国内の不動産市場については、中国政府による総量規制などもあり、そもそも不動産市場は下降局面に入っているのではないか、との観測があります。中国恒大のような巨大企業が破綻すると、購入しお金を払っている住宅が完成しない一般消費者、貸し込んだお金が回収できない金融機関、工事代金を受領できない工事関連業者などの数や金額も大きく、一般経済に対する影響も大きくなりそうです。これが更に他の不動産開発業者の破綻に繋がるようだと、目も当てられない状態になりかねませんし、中国の高い経済成長を支えてきた一つの柱が不動産開発であることも間違いありませんので、新型コロナに世界中が苦しんだ2020年ですらプラス成長を維持した中国経済そのものへも甚大な影響が生じそうです。

 

中国にはもともと「シャドーバンキング」などに見られるように実態数字がわからないという不安というか懸念がありましたが、2008年のリーマンブラザーズの破綻で一気に顕在化したサブプライム問題でも、仕組み商品に組み込まれたサブプライムローンによってリスク量が把握できなくなったために影響が図りきれなくなりました。

著名な投資家であるジョージ・ソロス氏は「中国恒大が破綻すれば、中国経済は崩壊する」とまで言っているそうです。

 

まとめ

なるほど、こうやって見ていくと、個別企業の破綻云々レベルの問題では留まらない可能性を大いに感じますね(だからこそ世界中が注視しているのでしょうが)。まだ何が起こるのかわからない状況ではありますが、遅ればせながら、僕もきちんとニュースを追いかけておきたいと思います。

 

おまけ:中国恒大によるリリース(9月14日)

https://doc.irasia.com/listco/hk/evergrande/announcement/a210914.pdf