知磨き倶楽部

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カンボジア: 日経新聞はカンボジアに対して偏見を抱いている

なかなか刺激的なタイトルが目に入ってきたので、連日になりますが、カンボジアの記事を読んでいきます。

 

www.khmertimeskh.com

日経新聞のアンチ中国(アンチカンボジア)姿勢への批判

日経新聞及びその英語版であるNIKKEI ASIAについて、その分析力などに敬意を払った書き出しではありますが、地政学の要素が入るとアンチ中国の旗を掲げ、それに続いてアンチカンボジアの姿勢をとる、と批判しています。

when geopolitics is involved, it seems to carry the anti-China flag, and subsequently anti-Cambodia, whom is treated by the newspaper as China’s proxy.

「アジアの未来」における批判

もともと、NIKKEI ASIAにおいて「中国の代理人」的な位置づけでの報道がたびたび行われてきた(とカンボジアは捉えている)という背景はありながら、本記事のきっかけになったのは、2021年5月20日・21日に日経新聞社主催で行われた「第26回国際交流会議 アジアの未来」です。

futureofasia.net

2021年5月21日の日経新聞でも、カンボジアのフンセン首相の「中国に頼らなければ、いったい誰に頼ればいいのか?」との発言が採り上げられていましたが、もちろんカンボジアではもっと詳細にフンセン首相の発言は報道されています。

※その中では、「以前は日本にも大きく支援してもらったが、その際には誰も日本に頼りすぎだなどの批判をしなかった」という発言もあります。

 

また、この記事では、日本経済新聞社が企画し、公衆の面前でカンボジアを「中国の代理人」として描き、名誉を毀損したとまで書いており、非常に強い論調だと感じます。

This is one of the greatest public display organised by the Nikkei to defame and portray Cambodia as China’s proxy. 

自国のことを顧みろという批判 

そして、日本だって高度成長を達成できたのは、安全保障まで含めてアメリカ合衆国に大きく頼ったからだろう、と続けます。 カンボジアに「ありもしない」中国海軍基地のことで批判する前に、自国にあまたの「実在の」米軍基地を抱える国のことを省みろ、とも。

 

石原慎太郎の『Noと言える日本』を引っ張り出してくる辺りは、日本人的には懐かしさすら感じてしまいますが、実はこの辺りの主張の仕方は、カンボジアっぽいなぁと思わされる箇所でもあります。

日本経済新聞社の体制への批判 

記事は、執筆体制の批判にまで及びます。日本経済新聞社カンボジアに駐在記者がいませんので、通常はバンコクハノイシンガポールの駐在記者が記事を書きますが、彼らをオフィスから出ず、カンボジアの政府関係者などに当たりもせずに記事を書くとコケおろします。

さらには、日本経済新聞社は記者やリポーター、編集者の偏見や先入観などを徹底的に調べるべきだとまで言います。

The Nikkei’s writers normally wrote on Cambodia mainly from Bangkok, Hanoi, and Singapore. They are lazy reporters who take refuge in their cozy offices without talking to real policy-makers in Cambodia. They also lack Asian values in terms of respect. To ensure its independence and impartiality, the Nikkei should scrutinize its writers, reporters and editors on their biased and prejudice background. 

 

そもそも日経新聞に限らず、日本語媒体でカンボジアのことが報道されることは多くない中、たまに取り上げられれば中国寄りだという論調が目立つのは確かです。ちなみに、カンボジアの旧野党党首も、現政権のワクチン政策に関して中国一辺倒なあり方を批判していましたが。

しかし、「Opinion」カテゴリーとはいえ、報道機関が、名指しで他国の報道機関のことをここまで激しく書いたものの掲載を認めるということは、いったい何なのでしょう。

 

なお、本記事を掲載しているKhmer Times紙は、一般的には政権寄りの媒体と認識されています。