知磨き倶楽部

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【カンボジア】カンボジアが「White Building」をオスカーに出品

僕はあまり映画を観ないのですが、アカデミー賞の話題くらいは興味があったりします。まあ受賞した映画すら観てないわけですが(汗)

東南アジアのニュースを眺めていると、カンボジアから次のアカデミー賞に立候補する作品のタイトル「White Building」が気になったので、記事を読んでいきます。

ちなみに、White Buildingはカンボジアの首都プノンペンに存在した、実際に人々が生活する象徴的な建造物でした。

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英単語メモ

tenement

(借用者の保有する)借地、借家

a large building deivided into flats/apartments, especially in a poor area of a city

英英辞典では、日本語の「借地、借家」とは少しイメージが違いそうなので留意ですね。

harbour (=harbor)

(感情・思想などを)心に抱く

to keep feeling or thoughts, especially negative ones, in your mind for a long time

他にも複数意味がありましたが、今回の記事の文脈に沿った意味のみ抜粋。英和では触れられていませんが、特にネガティブな考えを抱いている際に使うようなので注意。

gentrification

(下層住宅地の)高級化

gentrify: to change an area, a person, etc. so that they are suitable for, or can mix with, people of a higher social class than before

名詞そのものでは英英辞典に出ていなかったので、元になる動詞の意味を。

 

映画の内容

元記事では以下のように紹介されています。

White Building follows 20-year-old Samnang and his group of friends in a landmark tenement housing block in Cambodian capital Phnom Penh, called White Building. The boys harbour dreams of dancing on television talent contests, while their parents lead more traditional lives. When the White Building faces demolition, the families in the block are hit with the brutal realities of gentrification in modern Cambodia.

White Buildingに住む若者たちが、親世代の考えから脱却して自らの夢に向かってがんばる、的な感じでしょうか。その中で、彼らが住むWhite Buildingが取り壊しに直面するという事態が起こり、近年開発が進むカンボジアにおける残酷な現実に見舞われるようです。

ハリウッド的に分かり易そうなストーリーですが、結末が気になりますね。なにせ、White Buildingの取り壊しと、それに纏わる住民の抵抗は実際にあったことですから。

 

White Buildingの再開発計画

2016年に政府(カンボジア国土省)が主導して、日系企業によるWhite Buildingの再開発が決まりました。

Arakawaという会社は背景がよく分からない会社ですが、現在プノンペンで低中所得者向けの分譲アパートの開発を行っています。

 

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この記事は取り壊しの開始を伝えていますが、ここに至るまでに住民との間で補償額をいくらにするのか、再開発後に戻ってきて住みたいかなどの交渉が長く続いていました。最終的には平米当たり1,400ドルの補償額を支払うことで、全住民と妥結したようです。

The developers plan to make the new building 21 floors, with three floors of parking, one floor for shops and five floors for accommodation – all of which they claim will be 10 percent larger. Investors Arakawa will own everything from the ninth floor up and it is unclear what they plan to put there.

21階建ての近代的なビルを開発し、5階分を住民用の居住スペースとして戻す計画だったようです。開発業者としては9階より上の部分は分譲するなり保有して賃貸運営するなり自由にしていいと(開発資金の回収原資)。

 

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しかし、もともと大多数の住民が、再開発がきちんと行われるかどうかという点に不安があったようです。そのため、多くの住民が補償額を受け取って権利を売却することを選択することとなり、再開発先として決定した際には条件になっていなかった(見込んでいなかった)「住民からの買取費用」を開発業者が負担しなければならなくなったことが、同企業による再開発の資金面でのネックになった可能性が感じられます。

じゃあなぜこの時点で政府との間で条件再交渉に戻らなかったのか、などの疑問はありますが、資金面の不安がどうなったのかについては報道がないまま、取り壊しが始まりました。

 

そしてカジノリゾートへ

紆余曲折ありながらも、2017年7月に取り壊しが始まったWhite Buildingですが、2019年になって驚きのニュースが報じられました。

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プノンペンでカジノ運営の独占権を与えられているNagaCorp社が、White Building跡地における3つ目のカジノホテル群建設の承認を得たという報道です。

当初Arakawa社による計画では21階建てのビルが建設される予定でしたが、3倍近い高さのビル群が出現することになりそうです。もともと中国人観光客を惹きつける原動力の一つとなっていたカジノですが、この計画発表以降、計画地周囲のChina Town化が一段と進んだと聞きます。

 

Arakawa社が取り壊しを行ってから再開発が始まる様子もなかったのですが、こういうことだったのかと勘ぐってしまいます。なぜなら、買取資金が発生する為に資金面に不安があると政府高官のコメントとして報じられた同社が、取り壊しに着手しただけの2017年11月の段階で別のプロジェクトの開発を開始しているからです。

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この辺りの変遷については全く情報が出てこないんですよね。。

今回の映画が楽しみな理由がここにあります。こうしたプノンペンに住んでいる人やプノンペンの不動産を見続けている人には、半ば常識とも言える変遷のあったWhite Buildingについて、その取り壊しに関する様子をどう描くのか。勝手に注目です。