知磨き倶楽部

書評及び海外ニュースの紹介等を中心とした情報を発信します

【カンボジア】投資家のための家賃保証の留意点

国内であるか海外であるかに関わらず、不動産投資を行う際に重要な検討事項として「賃貸できるのか(テナントが入るのか)」という点があります。現地に住んでいない海外不動産投資の場合、この点の検討がなかなか難しく、いくらメインは転売による売却益を得ることであろうと、不安になるポイントでもあります。

 

この投資家の不安を解消又は緩和するために「家賃保証」を付して販売しているものがチラホラ見受けられます。これ自体「誰が保証してくれるの?」「ちゃんと履行してくれるの?」などの不安がないわけではないですが、何もないより遥かにマシです。

 

今日は、カンボジアで行われている「家賃保証」に関する記事を読んでいきます。

www.khmertimeskh.com

英単語メモ

intricacy:

複雑(さ)、錯綜、複雑な間柄・事情

1. [pl] the complicated parts or details of sth.

2. [U] the fact of having complicated parts, details or patterns. 

1の意味の際は複数形で使い、2の意味の場合は不可算名詞らしいので、ここでは1の意味。

layman:

(聖職者に対して)平信者、俗人、しろうと、門外漢

1. a person who dose not have expert knowledge of a particular subject

2. a person who is a member of a Church but is not a priest or member of the clergy

最近の傾向としては性別を意識させない「layperson」の方がいいのかも?

 

家賃保証(GRR)とは?

読んで字の如くですが、購入した住宅などの不動産が完成した後、一定期間の間、開発業者だったり物件管理業者だったりが借り上げてくれることを保証してくれるものです。日本だとリースバックと言ったりする仕組みと同じです。

特に完成直後で他の購入者との賃貸の競争も激しい時期だと、なかなか借り手が見つからずに期待した家賃収入を得られない可能性がありますが、家賃保証があれば、その心配からは解放されます。保証する側は、自社で使うことはなく、AirBnBなどで運用したり、保証賃料以上の価格で借り手を見つけてきて利ざやを稼ぐ(あるいは空室期間の補填をする)などします。

元記事に引用されているHuttons CPL(これは仲介業者)によれば、カンボジアでは税金や手数料などを控除した後で、販売価格に対して年率4%~9%での保証を2~5年間行うというのが平均的な条件のようです。

 

元記事はカンボジアですが、他国でも同様の条件を見たことはあります。むしろ、カンボジアは他国の事例を導入したという印象ですが、取引慣行として法的に縛りを入れるという意識が薄い分、注意は必要です。

なお、元記事にもあるとおり、カンボジアでは一般的に「GRR(s)」という呼称で販売条件の一つとして定着しています。

 

カンボジアにおける家賃保証の注意点

特別に「カンボジアだから」という内容ではないような気もしますが、家賃保証に法的な規制がない(はず)ので、一定の規制やプラクティスのある売買契約書以上に、実は気をつけたいポイントです。 

保証内容が書面に記されているか

まず第一に、保証内容がきちんと書面に記されていることです。何を当たり前なことを、と思ってしまいますが、これ、意外に契約書面になっていないようなのです。現地で、にはなるでしょうが、法的に保証の履行を求められるような形になっているかどうかの確認をしておきたいところです。

 

かかる費用は把握できているか

次に、どんな費用がかかるのか、ということです。これは上記で保証内容の書面に記載されている内容を確認する際に、合わせて確認すべきポイントです。表面上高い保証をしている場合でも、やたらと費用がかかる可能性もありますし、逆に表面上低い保証でも、実は税金やら管理費やら何もかも差し引いた後の数字なのかもしれません。

元記事ではこんな指摘がされています。

A common mistake that some novice investors make is to take the GRRs being offered as a reference point to calculate their returns.

見落としがちなのは家賃に対する源泉税でしょうか。保証主体がカンボジアの法人格である場合(こちらは非居住者だとします)、14%は源泉税として控除されてしまいます。

また、非居住者でカンボジアに銀行口座がない場合の送金の取り扱いも注意したいところです。極端な場合、毎月数百ドルの家賃を海外送金してもらうと、送金手数料が数パーセントに相当する額になりますが、支払の頻度はどうなるのか、送金手数料は誰が負担するのか、という点は利回りを考える際に、投資金額によっては意外に無視できない影響が出る場合があります。

慣れてる投資家には当然のポイントなんですけどね。ここの確認を怠ると、購入時に借りたローンの弁済原資の計算が狂うことにもなりかねません(カンボジアでは、一般的には非居住の外国人が現地で住宅ローンを借りることはできないため、起こりにくい問題だとは思いますが)。

 

保証金額(利率)は適正か 

また、提示されている保証金額=家賃が市場に照らして適正かつ現実的か、ということです。ここは、仲介業者任せで物件を探していると検証が難しいのですが。

In general, the projected GRR is usually lower than the market rental rate by about 20 percent, to protect the developer from any losses. This means, that anything higher than 20 percent [a year] is likely too good to be true.

周辺の家賃相場並みの保証を期待するのは間違っています。それでは保証側に旨みがありません。その場合は、販売価格にすでに投資家に支払う保証額が上乗せされている(=適正な物件価格よりも高くなっている)可能性が大です。もちろん、将来の家賃上昇を見込んでいる場合もありますので、一概には言えませんが。

現地に信頼できる伝手がないと、ここの検証は本当に難しいです。仲介業者は、投資家がよほど今後も繋がるお得意様になる可能性がなければ、セールストークしかしません(彼らにお金を払うのは、投資家ではなく販売する開発業者側です。ここは勘違いしてはいけません)。なので、保証額が自分の期待値の中に収まっていれば、保証期間後の家賃が下がっても仕方なし、くらいの覚悟は必要かもしれません。

 

保証主体に保証能力はあるか

最後に、保証主体(開発業者だったり、物件の管理業者だったり)に保証能力があるのかどうか、ということです。個人的には、こんなの家賃相場を調べるよりも遥かに難しいと思いますが。

なので、最悪のケースを想定して、家賃相場くらいは仲介業者に頼らずに自力で調べておいた方がいいですし、保証履行がされない場合に、自力で貸し出す権利を取り戻せるのかどうか(通常の賃貸借契約で言えば、家賃を払わない賃借人を追い出せるのかどうか、ですね)も保証内容の書面を確認する際に注意したい点です(通常、保証期間中は投資家には権利がありません。もう保証主体に貸しちゃってるわけですから)。

 

なお、最近出てきた事例だと思いますが、保証期間中にforce majuereに該当する出来事が起きた場合に、保証人は保証家賃の支払を止めたり、減額をしたりできるのか、という点に触れています。

背景にあるのは、カンボジアでは新型コロナの影響の救済策として「物件所有者(貸主)はできるだけ借主の要請に応じて家賃の減額など考慮してあげるように」という政府からのお達しが出たことだろうと思います。

予測不可能なので「force majuere」なわけですが、何が起こるのかくらいは把握しておいた方がいいですし、先の書面にどんな風に記載されているのかは確認しておくに越したことはないでしょう。

 

家賃保証に対する僕の見解

現地で出来ることが極端に限られている外国人投資家にとっては、投資の際の安心材料になりますし、悪いことではないと思っています。ただ、保証額を単純に販売価格に上乗せされているだけだと、将来の転売時の期待価格が狂いますので、その点は注意したいかなと。

ちなみに、広告を見ていると、カンボジアでは家賃保証に加えて「買取保証」も提示されているケースがあるようです。例えば、5年間の家賃保証+5年後に一定金額での買取保証など。投資資金の性格やリターンに対する期待(期間や金額など)などで選択肢として捉えるのはありかと思いますが、保証期間中の転売に重石になるんじゃないかという気もしています。

なお、一般的に言えるのは、販売・仲介業者以外からの情報を自分でも調べることが大事です。新型コロナの影響で渡航が非常に難しくなっている今は、正直検討の土台に乗せることも難しいですが、反面、現地情報がインターネット経由で取りやすい環境も生まれましたし(いろんな面でDXが加速したのは間違いないです)。間違っても、業者の方からの情報だけで判断しないようにしたいところです。