知磨き倶楽部

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【カンボジア】初のGrowth Board上場案件のIPO説明会を視聴して

ここ数年、ずっとカンボジア証券市場を観察していますが、設立以来ずっと上場会社が存在しなかったGrowth Boardに、漸く1社目の上場が承認されました。

これからブックビルディング期間が始まる予定というタイミングですが、たまたま上場説明会をオンラインで視聴する機会がありましたので、記事を読みながら、説明会でメモした内容を加えて簡単にまとめておきます。

www.khmertimeskh.com

Growth Board上場第一号

カンボジア証券市場(CSX)には、Main BoardとGrowth Boardの二つの市場が整備されています。日本で言うと東証一部とマザーズでしょうか。

上場要件が違うわけですが、これまで上場している7社は全てMain Board。今回承認を得たDBD Engineering Plc.がGrowth Boardの第一号案件となる予定です。

なお、今回の上場主幹事は、日系のSBI Royal証券が務めています。

DBD Engineering Plc.ってどんな会社?

1995年設立ということで、カンボジアが内戦を終えて、まだまだ混迷期であったであろう頃から続く会社です。カンボジア国内なら立派に老舗の一つと言えるのではないでしょうか。 

主な事業はMEP(Mechanical, Electrical and Plumbingの略:建築における建設設備の機械・電気・配管周りの仕事)で、工場建設の他、商業施設建設や集合住宅建設などに関与しています。クメール語の説明会で何を言っているのかほとんど分かりませんでしたが、イオン2号店(開業済)や3号店(建設中)にも携わっているとのこと。

今後の受注残も順調に積み上げているようで、きれいな成長ストーリーを語っていました。

公募の条件は?

5,000,000株~6,461,538株の新株発行による調達で、公募価格はKHR2,380/株となる予定です。説明があったのかなかったのか定かではありませんが、おそらくブックビルディングの結果で変わってくるということでしょう(最低ラインは主幹事が引受保証入れてるのかな)。上場前での発行済株式数が12,000,000株ということだったので、最低でも29.4%、応募が集まれば35.0%の新株が発行されることになります。

ただし、一般公募に回ってくるのは1,100,000株~2,415,384株で、3,400,000株は現地の有名企業であるRoyal Groupによる引受が決まっているようですし、新株発行のうち10%はESOP(従業員持株みたいなもの)に割り当てられます。

(Royal Groupによる引受は結構アピールしてたように思ったのですが、現地の英文記事には名前がないですね。クメール語で何か言ってたのかな。。)

 

なお、既存株主はManaging Director(社長)とCFOの二人のみ。さすがに短期で売却してくることはなさそうなので、ESOPを通じて従業員が取得した株式を売却しても、市場に大きな影響はなさそうです。

※ 2021年6月にAcleda銀行の従業員持株会による株式売却が市場に与えたショック

chimigaki.hatenablog.com

注目すべきは、配当保証が付されている点です。公募価格に対して年率5.5%の配当を3年間保証しています。配当性向ではなく、実額保証の配当政策。。なお、この配当保証は既存株主には適用されないとのことです。

お買い得なの?

この点に関しては自己責任ですからw

説明会で示された2020年決算数字を基に計算すると、公募価格はP/Eレシオで約36倍、PBRで約2.2倍です。2020年は新型コロナの影響もあるので、ここを基準に計算するのは正直、酷な気がしないでもないです。2019年決算数字を基にすれば、P/Eレシオは10倍くらいですから、まあ妥当な水準に見えます。

ただ、カンボジアの建設業界は国自体がまだまだインフラ整備を推し進めていて、新規での建築も増やしていこうという状態に見えますので、成長素地がありそうだなとは思います。

上記でちょっと触れましたが、もし仮に主幹事がある程度の引受保証を入れているのだとしたら、あのSBIですし、お買い得なのかもしれませんね(他力本願)。

 

ちょっと気になるのは、参加者が(英語で)質問していた「2020年決算で収益性が落ち込んでいる理由は何か?」という質問に対して、会社側が(クメール語で)「新型コロナの影響で資材の価格などが上昇したこと」と答えていたことです(クメール語なので単語の端々から感じた雰囲気での理解ですがw)。僕の理解(というか推測)が当たっているとすると、2021年の決算見通し数値で、収益性が2019年を若干上回る程度にまで改善されていた点が解せない感じもしています。

一方で、剰余金は割りと潤沢にあるように見えたので、たとえ収益性が改善しなくても、配当保証の実行には問題なさそうにも見えました(調達資金のうち4割程度が特定の使途を明示されていなかったので、配当原資としては最悪タコ配的な・・・?)。まあ、短期的には株価は上がらない可能性ありますけど、長期投資なら。

 

ブックビルディング期間は7月26日から8月18日まで。手続きが順調に行けば8月30日には上場です!

※ 繰り返しますが、投資は自己責任ですからw

おまけ

ほとんど英文の元記事参考にしてない記事になりましたけど、同じ英文記事を参照して日本語で紹介している記事がありました(時々読んでます)。

tameninaru-info.com