知磨き倶楽部

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【カンボジア】首都プノンペンの私立学校が危機

新型コロナによって教育も困難に直面し、新しい教育方法がいろいろと模索されていることと思います。我が子を見ていても、年齢が下がれば下がるほど、オンライン授業ではなかなか対応できない場面が増え、教育関係者も非常に悩ましい状況に陥っているであろうことは想像に難くありません。

 

日本では緊急事態宣言が出ようが、特に小中学校などは普通に運営されているようですが(と言っても校外授業とか行事とかはなくなっているようですね。オリンピックやるのに運動会は中止か!みたいな話をネット上で見かけます)、緊急事態宣言が出ていないにも関わらず、カンボジアの首都プノンペンでは長らく対面授業は禁止されています(そろそろ4ヶ月になろうとしています)。

 

今日は、そんなプノンペンで学校経営が危機的状況に直面しているという記事を読んでいきます。

www.khmertimeskh.com

プノンペンの学校数

記事によると、カンボジアの首都プノンペンには500校以上の私立学校があるそうです。「学校」の定義がよく分かりませんが、人口が200万人とか250万人とか言われる都市で、私立学校だけで500以上って結構多くない?と思ったので、感覚的につかむために、ちょっと日本の都道府県別学校数を見てみました。

 

文部科学省が発表している「学校基本統計調査」には市町村別の学校数が掲載されています。国公立も私立も含んでいますし、幼稚園から大学までカバーしています。初めて見ましたが、日本には56,000校も学校があるんですね。。。

 

面積当たりの学校数でつかんでみると、プノンペンは約680平方キロメートルと言われていますので、平方キロメートル当たり約0.8校ということになります。で、人口が200万人~250万人。

このサイズ感を日本の都市で比較すると、愛知県の名古屋市かなと。人口約230万人で、面積が約326平方キロメートル。それに対して学校数が875校ということなので(公立・私立含む)、約2.7校と、やはり多いですね。ただ、人口密度が違うからとも言えますし、日本の場合、特に小中学校のほとんどは公立学校だという事情もあります。名古屋市には、私立の小中学校は合計で16校しかありません(私立幼稚園はぐんと増えて100を超えますが)。

 

何となくカンボジア(というか途上国全般)は教育体制が整備されていないという印象がありますが、学校数から見る限りは、都市部では整備が進んでいると言えそうです。

プノンペンの学校運営で起こっていること

プノンペンでは、2021年2月20日に発生した新型コロナの国内感染が治まっておらず、未だ全ての学校で対面授業を行うことができていません(学校側からは政府に対して再開の要望など出ているようですが)。一時期「学校が通常運営できないのに学費を下げないのはおかしい、返せ!」という訴えがなされているという記事もあり、オンライン授業と言えどスタッフの数は確保しないといけない学校側は悩ましい状況に直面しているはずです。

 

かかる中、記事によると、教員の給与を下げたり、解雇せざるを得ない事態に追い込まれている学校も出てきているようです。

Mengly said that despite heading what is among the premiere educational institutions in the Kingdom, he had lost about one-third of his total revenue and, as a result, had to cut operational costs which included reducing staff salaries by 10 percent.

記事では、解雇云々よりも、解雇されるということを報道機関に話したら訴えるぞ、と脅されたという談話を問題として取り上げている割合が多いように見えますが。。

 

別の問題として、記事にあるとおり、そもそも生徒の退学が増えているようです(退学した生徒は公立に行くのか、それとも家庭学習で対応するのか、記事からは読み取れません)。各校の学費がどうなっているのか分かりませんが、新型コロナの影響でマイナス成長となった2020年、都市部ロックダウンなどによって実体経済への影響が続く2021年と、プノンペンの人々の経済的な余裕がなくなってきていることが想像されます。

His schools had seen a substantial number of students drop out during the pandemic. He estimated that about a quarter of his student population had difficulty making tuition payments with some asking for scholarships to be made available or fees to be delayed.

参考までに、ここでコメントしているMengly氏の学校American Intercon Schoolsの学費を見てました。 なぜか学費の一覧だけはクメール語でしか掲載されておらず、イマイチ分からない部分もありますが(写真なのでブラウザの翻訳機能も働いてくれず)、年間1,500ドルから2,000ドルの間くらいという感じです。

学費の一覧がクメール語だということから推察するに、英語で教育はするけれど、大多数の生徒(の親)はカンボジア人ということなのでしょう。カンボジア国民所得が一人当たり1,600ドル程度ということを考えると、結構な金額に見えます。

(日本人駐在員に人気のある学校も見てみましたが、さすがに桁が一桁違いますね)

 

スタッフの解雇による教育の質・量の低下と、生徒の退学による学費収入の減少。どちらが先に発生している事象か定かではないものの、負のスパイラルとなって学校現場に襲いかかっている様子がうかがえます。

 

カンボジアの教育については、以前にも、こんな記事を書きました。 

chimigaki.hatenablog.com

ここでも初等教育をまずはしっかりしないと、という意見を述べましたが、新型コロナによって、更なる影響を受けてしまいそうです。