知磨き倶楽部

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【カンボジア】Acleda銀行株が大幅下落ー従業員持株会による売却承認で

カンボジアの最大手にして唯一の株式上場銀行でもあるAcleda銀行。従業員持株会社が24%強の株式を保有していましたが、その一部について市場売却の承認が降りたということで株式価格が下落しています。

久しぶりにカンボジアの株式市場を見ながら読んでいきます。

www.khmertimeskh.com

カンボジア株式市場について

カンボジアの株式市場(CSX)は2012年に第一号案件が上場して以来、上場する会社が伸び悩み、 2021年6月現在でも株式を上場している会社は7社に留まっています。

上場株が増えないので市場参加者もなかなか増えない。CSXが発表している資料によると、2021年3月末時点での国内証券口座総数は27,953(うち外国人名義の口座は4,295)。年率15%弱の増加をしているようですが、やはり少ない。

また、上場銘柄を見ても、政府関連企業の上場が目立つほか、各銘柄とも流動株の少なさが顕著です。そのためなのか、各社とも情報開示も非常に少ない印象で、市場によるガバナンスという面でも、まだまだこれから、という感じでしょうか。

なお、米ドル経済だけど株式市場は現地法定通貨であるクメールリエル建てでの取引になります。

Acleda銀行株について

Acleda銀行はカンボジア最大の銀行として、株式市場活性化のためにも株式上場が望まれていた中、2020年5月25日に上場しています。当初は、従業員持株会社であるASA社の株式を上場させるという報道があったりして、Acleda銀行本体として資金調達の必要性は感じられず、もともと従業員にエグジットを提供するための上場という色合いが非常に濃かった記憶があります。

上場の際も新規に発行した株は1%(公募用のマーケティングでは2%と言ってましたけど)。オーバーアロットメント枠も確保していたはずですが、ASAの持分からの放出は入ってなかったんですかね。予定していた上場スケジュールが、公募期間終了後(引受金額の支払後)に突然わけの分からない理由で延期されたり、公募が思惑通りいかなかったんじゃないかと勘ぐってしまうような出来事もありました。

とはいえ、カンボジア最大の商業銀行ですから時価総額はそれなりに大きく、2021年6月16日終値ベースで約15億米ドル。CSX全体での時価総額が約22億米ドルですから、全体の7割を一社で担っています。この辺の歪さも、市場が活性化しないと解消されていかないですね。

今回の株価下落を見てみる

チャートを見てみると上場以来、終値ベースで公募価格を下回ったことはぼぼなく(一度、ほんの僅か下回っただけ)、厳しいマーケット環境下にあって徐々に値を下げながらも踏ん張っていた印象です。それが一気に底抜けましたね。

記事によると、24%強を保有していたASA社の持株のうち、4%分について市場での売却が承認されたそうです。上場時の販売株が1%相当だったとすれば、流動株は一気に5倍になる計算でしょうか。ただし、会社の開示資料によると、残りの20%強の持分はロックアップ期間というだけのようなので、いずれ放出されてくる可能性があります。

<Acleda銀行株チャート: CSXのウェブサイトより>

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ちなみに、本記事執筆時点でも株価の下落は続いていて、値幅制限一杯の10%下落です。企業価値が下がったわけでもなければ、持分の希薄化が起こったわけでもないのですけどね。公募時につけられていたプレミアムが、ここに来てやっと剥げ落ちた感じでしょうか。

他の銘柄への影響

前述のとおり、Acleda銀行株はCSX全体に占めるシェアも大きいので、市場インデックスも大幅下落です。発表から二日で、市場全体の価値が16%程度縮小しています。個別銘柄の影響が大きすぎて、インデックスだけ見ているとカンボジアで何が起こったんだと思ってしまいそうです。

ただ、昨日は大きな動きは見られませんでしたが、本記事執筆時点(2021年6月17日)で見ると、各銘柄軒並み下げています。個別銘柄ごとの要因があるのかどうかは分かりませんが、全面安になるような経済全般での要因が見当たらず、Acleda銀行の影響だと思われます。新聞記事では前向きなコメントが繰り返されていますが、市場参加者には受けが悪い話だった、ということでしょうか。

 

どの銘柄も企業価値が変わっていないのならチャンスかもしれませんけどね。日頃から見ているわけではないので、元々のプライスが適正だったのかどうかも判断がつかず、投資しようとは思えないです。。