カンボジア: 高等教育の重要性
教育が重要だということは今更言うに及ばずという気もしますが、高等教育の重要性を啓蒙する記事がカンボジアの媒体に出ていましたので、カンボジアという国に焦点を当てて考えてみたいと思います。
英単語
いい機会なので"significance"と"importance”のニュアンスの違いを辞書で見てみました(形容詞のImportantとsiginificantの違いからの類推)。
Significantは主に文語体で使用される単語で、特定の視点から影響力があって注目に値する、という意味での重要性。統計に基づいて客観的に述べる場合は、Significantを使用する。
Importantは口語体で好まれる単語で、「重要な」という意味では最も一般的。主観的な意味での重要性。
(ウィズダム英和辞典第3版参照)
なるほどね。
一つ覚えでimportantを使って文章を作ることが多いのですが、特に仕事面ではsignificantを使ったほうがよかった場面がありそうです。今後は気をつけてみよう。
カンボジアは、まず初等教育に力を入れるべきでは?
高等(大学以上)教育が将来に繋がる重要なファクターであることは論を待たないところだと思いますが、記事でカンボジアの状況を読む限り、まずは初等教育を普及させることが第一という段階じゃないかとも思います。
記事によれば、カンボジアの初等教育における就学率は思っていた以上に高く、小学校レベルで93.5%に達しており、中学校レベルで55.7%、高校レベルで25.7%になっているようです。ただ、中退率は依然として高く、その点が問題として残っていると指摘しています。
中退の理由には触れられていませんが、農村部での貧困が一因であることは想像に難くありません。高等教育のためのスカラーシップや政府の補助などの必要性に触れられていますが、まずはこっちじゃないですかね、と思う次第。
たとえ無償で教育が受けられても、家族の日々の糧を得るために子供を労働に連れていってしまうという状況の改善は、相当時間がかかりそうですが、そうしたところでの意識改革を行っていかないといけないのは途上国共通の課題でしょう。
あとは初等教育の質の確保ですか。
カンボジアは、OECDが実施するPISA-Dという途上国向けにデザインされた国際的な教育レベルの測定プログラムに参加しています。
2018年度調査には9カ国が参加しており、ここにちゃんと参加するということ自体が、国としてきちんと取り組んでいこうという姿勢に見えますし、その点は素直に評価されるべきです。
とはいえ、残念ながら、カンボジアの平均的な15歳の学生たちのレベルは、PISA-D参加国の中で比較しても平均に届いていません。
上掲の図を含め、元のレポートはかなり詳細な分析をしていて、これはこれでカンボジアの教育事情のみならず、生活事情も垣間見えて非常に興味深いレポートです。
https://www.oecd.org/pisa/pisa-for-development/PISA-D%20national%20report%20for%20Cambodia.pdf
社会貢献活動として「カンボジアに学校を作ろう!」という動きが日本でも時々聞かれます。そうした動きに対して批判的に言われることではありますが、「ハードよりソフト」という段階にカンボジアも来ているのではないでしょうか。
特に教員というのは、日本でも議論になるポイントですが、その社会的な重要性の割りに、待遇面で恵まれていない状況だとも聞いています。
記事でひっかかったのは、カントリーサイド(農村部)の学生たちが高等教育に進めない理由の一つとして、language barriersが挙がっていることです。
自国で公教育を受けて、自国で高等教育に進むのにlanguage bariiersが存在するという状況。カンボジア特有の暗い歴史(クメール・ルージュ)が要因だと聞いたことはありますが、この辺の解消も大きな課題でしょうね。
(逆説的ではありますが、大学を卒業したようなカンボジア人と会うと、普通に英語で会話が出来ます。結構文法とかはちゃめちゃで、大学での教育にこれで大丈夫だったの?と思うこともありますが、概して日本人とは比較にならないくらい意思疎通に困らないレベルになっています)
事業のために進出する外国人という目で見ると、やはりこの初等教育の平均的なレベルで隣国のベトナムに大きく水を開けられている状況というのはマイナス要因です。最低賃金の設定がほとんど変わらない中、ここまで差がついていると、「ベトナム人の方が勤勉で優秀なのに、最低賃金水準がほとんど変わらない」という理由で、ベトナムが選好されてしまう結果になりがちです。(最低賃金の議論は別途ありますが、ここは一般論として目を瞑ります)
僕は、個人的にカンボジアが好きなので、外国人ながら、この辺は口惜しい気持ちになります。
COVID-19が国際的に広がり、カンボジア国内でももちろん問題になっている中、この記事を書いている時点においては、カンボジアでは教育機関での対面授業が行えず、オンライン授業になっているようです。
オンライン授業は、もともと低学年の生徒たちには難しい問題がありますが、特に農村部では教育へのアクセスという面で、経済的な問題も大きく影響してきます。