知磨き倶楽部

書評及び海外ニュースの紹介等を中心とした情報を発信します

2018年7月の読書メモ

2018年7月に読んだ本をまとめて紹介します。

当月は一人の時間が長かったこともあり、読了数は59冊となりました。折角なので、もう少し骨太な本も読んでおきたかったところでしたが。。

数が多いので面白かった本も多かったのですが、あえて3冊のお勧めを選ぶとすれば、

 

女刑事音道貴子 凍える牙(新潮文庫)

女刑事音道貴子 凍える牙(新潮文庫)

 

今更ながら人気の音道刑事シリーズの第一作目。ついシリーズを読破してしまったほど楽しめました。 

色々な意味で生ける伝説の一人ですね。業界が違えど、ビジネスにおいて参考になるだけでなく、人生の考え方においても示唆に富んだ一冊でした。  

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

 

これも今更ながらの一冊です。様々な登場人物の独白というスタイルで事件の真相描写が進んでいきながら、物語の奥に潜んだ「狂気」が最大限に高められていきます。これは「なんで読んでなかったんだ!」と悔やんだほど。


サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門 (講談社+α新書)サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門 (講談社+α新書)感想
箱買って節税と副業しましょう(それで資産形成へ)という話かと思ったら、ゼロイチ起業ではなく既存事業を買収(事業承継)しましょうというガチな話。基本的には大企業に勤める40代から50代くらいの中間管理職層をメインターゲットに書かれている。僕は大企業勤めでもないし、日本に住んでもいないし、日本の会社と取引もないので、管理職としての経験はあるけど目先で考えられる話ではないかな。成長の続く東南アジアでは、まだまだ地場優良企業が後継者不足云々という話でもないし。
読了日:07月01日 著者:三戸政和


老後の資金がありません (中公文庫)老後の資金がありません (中公文庫)感想
『七十歳死亡法案、可決』を読んで面白かったので、老後という似たテーマを描いた本作も読んでみた。老後のためのお金が娘の分不相応な結婚式と突然の親の葬式代の負担でほぼなけなしに。さらに夫婦揃ってのリストラで先行きは真っ暗。しかし、ケアマンションに住んでいた義母を引き取って面倒を看ることを決めたことから色々変わり始める。そこに、この話の救いというか明るさがある。現実に我が身にも降りかかり得る出来事に、空恐ろしくもなるが、これを買ったのが妻だということが、笑って本を閉じるだけではいられない気持ちにさせる。
読了日:07月01日 著者:垣谷美雨


悪徳の輪舞曲 (文芸第三)悪徳の輪舞曲 (文芸第三)感想
御子柴弁護士シリーズ第四弾。今回は実の母親の殺人容疑の弁護。高額の弁護料を請求するとはいえ、普段の御子柴と違う、自身の過去と向き合わざるを得ない依頼を受ける流れが続く。相変わらず安定の面白さ。ただ、自身の母親の弁護というのが過去との繋がりでは最大級にも思えるのだが、今後のこのシリーズがどうなるのだろう。個人的には事務員の洋子さん関係か、宏龍会絡みなどを予想するが、何にせよ次回作が待ち遠しい。
読了日:07月01日 著者:中山七里


オンライン!16 超頭脳戦と毒牙イゴート (角川つばさ文庫)オンライン!16 超頭脳戦と毒牙イゴート (角川つばさ文庫)感想
小学5年生の息子用。僕は本作16巻が初読み。息子が面白いと言ってシリーズ通して飽きもせず何度も読み返すので一度読んでみる。成る程、ゲーム好き・冒険モノ好きな小学生男子を鷲掴みにしそうな内容。展開自体は一直線で単純明解。友情とかの少年漫画王道系と同じだね。それぞれのバトルルールとかにもう少し捻りとか考える要素があるといいんだけど、、なんてのは親目線過ぎるか。16作も続いてまだ続くんだから、やっぱり人気あるのかな。せめて息子が対象年齢であるうちに終わってくれれば。
読了日:07月01日 著者:雨蛙 ミドリ


知らないと恥をかく世界の大問題9 分断を生み出す1強政治 (角川新書)知らないと恥をかく世界の大問題9 分断を生み出す1強政治 (角川新書)感想
アメリカ、ロシア、ヨーロッパ、中東、アジアの主要国の動きがコンパクトにまとまっていて、シリーズ通して安定したクオリティ。トランプ大統領アメリカ・ファーストが各国に伝播して分断化が加速している。一方で中国の一帯一路政策は着々と進展している。ヨーロッパと中東の動きは疎くなりがちなので、このシリーズは助かる。日本のプレゼンス低下は否めないな。
読了日:07月02日 著者:池上 彰


罪の声罪の声感想
実際のグリコ・森永事件を下敷きに、フィクションの世界で真相の推論を描く。それも事件発生から30年を経過した現代を舞台にして、巻き込まれた子供の哀しい行く末に焦点を当てる。巻き込まれた本人の視点と、過去の未解決事件を追うという新聞記者としての視点から展開し、やがて両者が交錯する。読み応え十分のミステリでページを捲る手は止まらずイッキ読み必至。
読了日:07月03日 著者:塩田武士


バルス (文芸)バルス (文芸)感想
ネット通販、宅配、非正規労働者の問題をテーマに取り上げたビジネス小説。ひょんな思いつきレベルと全く同様の手口で起こったテロ行為。起こり得るかもしれない、起こったとしたら…という想像が容易にできるところが本作を身近に捉えやすく、面白くしているように感じる。大企業への就職と中小企業への就職という掘り下げれば面白そうな筋もあったんだけど、それはあくまで味付け。ただ終わりはちょっと寂しいかな。もう少しドキドキなりどんでん返し的なものがあると良かったのに。
読了日:07月03日 著者:楡周平


小学館ジュニア文庫 NASA超常ファイル~地球外生命からの挑戦状~小学館ジュニア文庫 NASA超常ファイル~地球外生命からの挑戦状~感想
小学5年生の息子用。ディスカバリーチャンネルのノベライズということで、『宇宙兄弟』読んで天文台にも行って宇宙への関心も高まりつつあるだろうと願って勝手に買ってみた。僕としては、もう少し一つ一つのトピックスを深く掘り下げてノベライズしてくれてたらなあと思うものの、子供用には結構な情報量だし、飽きも来にくくていいのかもしれない。「男なら宇宙にロマン感じるよね〜」と話したことはあったけど、果たしてこの本はどう受け取ってくれるかな(子供が読む前に僕が待ち切れずに読んでしまった。。)。
読了日:07月04日 著者:伊豆平成


将棋から学んできたこと これからの道を歩く君へ (朝日文庫)将棋から学んできたこと これからの道を歩く君へ (朝日文庫)感想
羽生善治さんが小中学生向けに行った講演を基にした一冊。講演自体は2002年のもので、羽生さん自身も随分若い頃のもの。それでも、小学生時代の将棋との出合いから将棋を強くなるためにしてきたこと、考えてきたことなどは最近の著書などでもブレていない。メインは会場での小中学生(父兄からの質問もチラホラ)との一問一答。子供らしい質問に真摯に答える羽生さんが和やかで良い。振り仮名がないけど言葉使いが小中学生向けだし、分量的には多くないので息子にも読ませたい。
読了日:07月04日 著者:羽生 善治


しゃぼん玉(新潮文庫)しゃぼん玉(新潮文庫)感想
新潮文庫の100冊】ひったくりや強盗傷害の果てに当てのない逃亡生活をする主人公の翔人が辿り着いたのは山深い田舎の村。田舎特有の無警戒な人懐っこさと人情の中で、荒んだ翔人の心が徐々に変わっていく様を描く。明るさはないけど、田舎の言葉が全編に温かみを加えて読んでいて非常に心地が良い。田舎で成長する話としては、三浦しをんの『神去なあなあ日常』の方が単純に面白いが、こちらは犯罪要素が絡んで緊張感があり、その後の翔人も気になる終わり方が余韻になって良かった。
読了日:07月04日 著者:乃南 アサ


川の深さは (講談社文庫)川の深さは (講談社文庫)感想
オウム真理教による地下鉄サリン事件を下敷きにして、その裏で蠢いた政治的陰謀。駒の一つだった少年の動きと自ら巻き込まれた元マル暴警官で現警備員の桃山。途中の思想的な記述がやや煩わしいのと、後半の戦闘(戦争)に現実感が持てなくてやや入り込めず。楡周平の朝倉恭介シリーズのような感じだけど、そこまでハードボイルドしてるわけでもなく、それなら朝倉恭介の方が自分は好きだな。
読了日:07月05日 著者:福井晴敏


名探偵ホームズ 緋色の研究 (講談社青い鳥文庫)名探偵ホームズ 緋色の研究 (講談社青い鳥文庫)感想
小学5年生の息子用。そろそろ僕の大好きなシャーロックホームズの魅力を知ってもらいたくて、数年前に漫画版を読ませても全く響かなかったことを顧みずに勝手に買い与える。大人版で全部読んでいる僕には物足りないが、もっともいただけないのは挿絵にホームズの雰囲気が感じられないこと。新聞連載だから英文で読ませるのもどうかと思ったけど、そっちから攻めるかなぁ(それだと僕がついていけない気がして気がすすまないし、あんまり強制するのもなぁ)。
読了日:07月06日 著者:コナン・ドイル


くちぶえ番長(新潮文庫)くちぶえ番長(新潮文庫)感想
新潮文庫の100冊】息子が小学4年生の時に妻が買った本。小学4年生のツヨシ君が、転校してきたマコトちゃんの言動で成長していくとともに、マコトちゃんへの淡い初恋も。大人が読んでも、昔を思い出して優しい気持ちになる話なのだが、果たして日本の小学校に通ったことがなく、転校という珍しい出来事への感覚も違う息子はどう受け止めただろう(インターは毎年新しい子が当たり前に入ってくるし、駐在の任期が終わって帰る人も毎年いる)。クラスには可愛い子もいるのに勿体ないぞ、と思ってしまうほどに、まだまだ「男の子」だからなあ。
読了日:07月07日 著者:重松 清


獅子王アレクサンドロス (講談社文庫)獅子王アレクサンドロス (講談社文庫)感想
世界史で習ったアレキサンダー大王の東征について、史実を基にしながら、著者の視点で描かれる物語。現代からの視点(後日談としての解説)が所々に挿入され、濃厚な世界史の授業を受けているかのよう。こんなに濃厚なら授業も面白いが、それは無理な相談。せめて個人的にこういう本で楽しめることを喜ぼう。前半では偉大さが勝るアレキサンダーも後半では傑物に付き物の狂気の勝る描写に。死後、あっという間に帝国が崩壊していく様に、一代限りのとてつもない偉大さを感じずにはいられない。
読了日:07月07日 著者:阿刀田高


読むだけ なるほど! 英文法読むだけ なるほど! 英文法感想
小学5年生の息子が独習できる英文法書を探して手に取る。結論としては息子の独習には向かないが、むしろ僕個人のコミュニケーション手段としての英語を向上させるという目的に合う。特に受験英語的な文法をベースにしつつ、実際にはそのまま使われないような場面や、文法から外れているように思える使い方の文法的背景などの解説が良い。分かってないと聴けても理解できない時もある一方で、分かっていれば聴こえなくても類推できる時もあるからね。一つ一つの例文が短いのもサッと頭に入って良い。
読了日:07月08日 著者:南谷三世


知の越境法~「質問力」を磨く~ (光文社新書)知の越境法~「質問力」を磨く~ (光文社新書)感想
メインのターゲット層は若いビジネスパーソンかな。とはいえ、単に仕事人生において役立つばかりではなく、その後にも生きてくる話。そういう意味では、池上さんが本書の中で取り上げているように、リベラルアーツの重要性を再認識する。振り返ってみれば自分自身も「越境」してきたからこそ現在があるわけだが、まだまだ越境していかないといけないな。
読了日:07月08日 著者:池上 彰


ともにがんばりましょう (講談社文庫)ともにがんばりましょう (講談社文庫)感想
労働組合の団交が舞台。主人公は新聞社の社会部記者として働く28歳の武井。所謂コミュ障なのだが根は真面目で芯のある「いい奴」。なぜか興味も知識もない組合執行部に任命されることでドラマが始まる。僕は新卒で勤めた組織の組合は御用組合みたいなもんだったし関心もなかった。今の組織には組合なんてない。なので内実は分からないが、団交などなかなか緊張感のある展開。テーマは堅いが、笑いあり恋愛要素ありできちんんとエンタメしていて面白かった。
読了日:07月08日 著者:塩田武士


ストロベリーナイト 警部補 姫川玲子 (光文社文庫)ストロベリーナイト 警部補 姫川玲子 (光文社文庫)感想
姫川玲子シリーズ第一弾。若くして警視庁捜査一課主任警部補になっている姫川玲子。僕個人的には馴染みのある水元公園付近で発見された他殺体から捜査が始まる。昇進こそ早いがエリートというわけではなく、また過去にトラウマとなる傷を抱えているらしい姫川に、最初はあまり魅力を感じられなかったのだが、可愛げや人間味が見えてくることで魅力が増してくる。話のテンポが小気味よくて刑事ドラマとして絵にしやすいだろう。ただ、続きも読むかは微妙…。買った妻次第かな。
読了日:07月08日 著者:誉田 哲也


本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘I」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘I」感想
前々から気にはなっていたが、このライトノベルがすごい2018で第1位になったと知って読む。異世界転生モノだけど、変なバトルやらお色気やらあるわけじゃない。本が好きで好きでたまらない女性が、何故か本が高価すぎて身近にない世界で、しかも自分では殆ど何も出来ない実年齢5歳、身体年齢3歳の女の子になってしまい、どうにか本を手に入れたいと現代から持ち込んだ知識だけを頼りに試行錯誤、四苦八苦する。異世界モノは好きじゃないけど、この話は面白い。本を手に入れて司書になるまでの道程を見てみたいな。
読了日:07月09日 著者:香月美夜


グーグル、モルガン・スタンレーで学んだ 日本人の知らない会議の鉄則グーグル、モルガン・スタンレーで学んだ 日本人の知らない会議の鉄則感想
職務上会議に出席する機会も多いので、もっと効率の良い、効果のある会議にしたいと思って本書を手に取る。日本人相手の会議だと本書の指摘は確かに当たっている。ただ、気まぐれなオーナーが、アジェンダ無視して準備不足だろうと自分の関心事を取り上げることはなかなか止め難いのも事実なので(目下の関心事とその度合いが分かるので、それはそれで優先順位付けには役立つ)、まずは自分がコントロール出来る会議から試す。ただ、そうなると相手は多国籍だし、日本人とは違ったマインドでもある。まあ、試行錯誤だな。
読了日:07月09日 著者:ピョートル・フェリクス・グジバチ


ゴルゴタ (徳間文庫)ゴルゴタ (徳間文庫)感想
陸上自衛隊特殊作戦群の分隊長を勤める「最強」の男・真田聖人。設定がハードボイルド。妻を惨殺された後々真田聖人の生き様もハードボイルド。動機の根本は違うけど、まるで『ランボー』。相手になる長間警部も相当いいキャラだけど、真田聖人の格好良さが際立ちすぎる。まるでアメリカが舞台のような、平和ボケした日本では荒唐無稽にしか思えないシーンでも、冷めた目になることなく話に引っ張られてイッキ読み。
読了日:07月10日 著者:深見真


教室に雨は降らない (角川文庫)教室に雨は降らない (角川文庫)感想
臨時の音楽専任教諭を勤める23歳音大卒の主人公森島。小学校で起こるちょっとした(というと現実が分かってないと言われるか?)事件を、何だかんだで解決に持っていく「青春ミステリー」らしいんだけど、ミステリーとしては今ひとつ。子供達への教育を通じた森島自身の成長とか、音楽の力とか、ベタだけどそういう点を強調した方が良かったのではないかと。何だかんだでイッキ読みはさせられたけど。
読了日:07月11日 著者:伊岡 瞬


多動力 (NewsPicks Book)多動力 (NewsPicks Book)感想
Kindle Unlimited】本書の中で堀江さん自身が言っている通り、様々な媒体を通じて多量の発信を既に行なっているので、真新しい内容はない。本書をまとまりよくしているのは、インタビュアーとライターの力量だろう。色々言われることもあるかもしれないが、僕自身は、周囲に「多動力」を発揮しているようにしか見えない人が何人かいるので腹落ちはする。自分が全て踏襲できるとは思えないけど、やれるのにやれていないことは即刻改めるべきと思った。
読了日:07月11日 著者:堀江貴文


悟浄出立(新潮文庫)悟浄出立(新潮文庫)感想
新潮文庫の100冊】再読なのに初読時と同じく、西遊記沙悟浄を主人公とした長編小説だと勘違いして読み始める(初読は単行本版なので3年以上前)。実のところは表題作の「悟浄出立」をはじめ、異なる中国故事を題材とした5編の短編集。これも初読時と同じく1つは元になるお話が分からない。それぞれの話の詳細を大半忘れていたこともあり改めて楽しめたけれど、西遊記沙悟浄視点で描いてくれる長編の方が絶対読みたい。短編集の中でも表題作がやはり一番面白かった。
読了日:07月11日 著者:万城目学


新選組の料理人新選組の料理人感想
蛤御門の変による火事で焼け出され妻子とはぐれた菅沼鉢四郎が、新撰組の賄方として入隊する羽目に。物語における新撰組側の代表は幹部の一人である原田左之助左之助の印象には他の新撰組関係の本と違和感はないが、土方歳三は特に司馬遼太郎と描くそれとは異なり個人的には違和感。重苦しい時代や新撰組の事情を背景にしながらも、一線から外れている菅沼の視点で描くことで軽快なエンタメ小説となっていて面白かった。
読了日:07月12日 著者:門井 慶喜


超一流の雑談力超一流の雑談力感想
Kindle Unlimited】業界の会合やらパーティーやらに参加する機会が増える一方で、どうにも「雑談」というのが苦手でシンドイと感じていたところなので手に取ってみる。書かれていることは割と普通で、むしろ出来ることも少なくない。詰まるところは僕の英語力の問題だ。日本語なら出来ても、英語では拡げられる話にも自ずと限界があり、幅広く話せないことがシンドイことの主因なんだと明確に認識できたことはプラス。じゃあ、まずやるべき事は一つだね。
読了日:07月12日 著者:安田正


女刑事音道貴子 凍える牙(新潮文庫)女刑事音道貴子 凍える牙(新潮文庫)感想
音道貴子シリーズ第一弾。機動捜査隊に所属する音道刑事と、捜査の相方となる滝沢デカの視点が入れ替わりながら話が展開する。女刑事をハナから認めない滝沢デカが時代を感じさせるが、実は今でも変わってなかったりするのかな。個人的には滝沢デカの古臭さには共感できないが、理解はできる。他の女性刑事モノに比べても孤軍奮闘な印象が強く残る。妻に「あなたには合わない気がする」と言われていたので期待せずに読んだが、十分楽しめた。
読了日:07月13日 著者:乃南 アサ


生き残り錬金術師は街で静かに暮らしたい 01生き残り錬金術師は街で静かに暮らしたい 01感想
ありふれた錬金術スキルを持っていた女の子が、200年の仮死状態から覚めてみると唯一の錬金術師になっていた、という少しばかりチート系の設定。犯罪奴隷のジークムントと一緒に、変わり果てたかつての都市で薬屋の開店にまで漕ぎ着ける、というのが今巻。異世界ファンタジーは好みの分野じゃないけど、ほのぼの系は好きなので面白かった。これは続きも読もう。
読了日:07月14日 著者:のの原 兎太,ox


どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルールどこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール感想
Kindle Unlimited】これまでに自己啓発書の類を何冊か読んでいるなら、「仕事」に関する取り組み方というか考え方に特に目を見開くようなところはない。ただ、登録後放置している人材紹介会社への登録内容くらいは、転職する気がなかろうと毎年アップデートしておこうかと。今は肩書の力で成り立っていることも少なからずあるので、名前で成り立つことを増やすために、もっと「ギブ」して働こう。
読了日:07月14日 著者:尾原 和啓


雪の鉄樹 (光文社文庫)雪の鉄樹 (光文社文庫)感想
全編密度の濃い展開。主人公の雅雪は「償い」のために、両親のいない遼平を、親類でもないのに面倒を見ている。遼平の実の祖母には邪険(というレベルで済まないが)にされながらも。繰り返される「13年」と「7月7日」というキーワード。13年前の回想と行き来しつつ、なぜ雅雪が遼平の面倒を見ているのかが明らかになっていく。それぞれ登場する家族に、それぞれの事情はありつつも、歪んだ、あるいは壊れた関係が生む罪深いものがテーマに置かれる。惹きこまれた。
読了日:07月14日 著者:遠田 潤子


無人島に生きる十六人無人島に生きる十六人感想
新潮文庫の100冊】【Kindle Unlimited】 明治32年に太平洋上で遭難し、数ヶ月を無人島で生き抜いた16人の乗組員の物語。表現が簡潔で物語としては抑揚に欠けると思っていたが、実話に余計な脚色を加えなかったということかも。それによって難易度的には小学生でも読めそうな感じで、ロビンソン・クルーソーを面白く読んだ息子にも勧められそう。極限状態で重要なことは、やはり希望と規律。本書では、常に全員の前向きな気持ちが感じられ、悲壮感が全く漂ってこないことに驚く。
読了日:07月14日 著者:須川邦彦


角川つばさ文庫版 サマーウォーズ角川つばさ文庫版 サマーウォーズ感想
小学5年生の息子用。映画に忠実に沿っているらしく、息子が面白かったというので読んでみる。僕は映画を見ていないので、小説としては今ひとつ描きこみだ足りなくて不完全燃焼ながら、小中学生向けのつばさ文庫にそんなことを望んでも詮無いこと。テンポも良いし息子が面白かったというのは分かる気がする。仮想現実空間での戦闘とか、ゲーム好きな息子には設定だけで堪らないだろう。映画観てみたくなったくらいには面白かった。
読了日:07月15日 著者:蒔田 陽平,貞本 義行,杉基 イクラ


悪と全体主義 ハンナ・アーレントから考える (NHK出版新書)悪と全体主義 ハンナ・アーレントから考える (NHK出版新書)感想
NHK100分de名著で2017年9月に取り上げられたものを加筆・修正してまとめたものが本書。そもそも「ハンナ・アーレント?」という恥ずかしい状態だったが、全体主義の兆候が見え隠れする昨今において、第二次世界大戦直後に全体主義を考察した政治哲学者とのこと。メインとなる『全体主義の起源』は、西洋の歴史や経済、思想などの知識を背景として求められるものだということで、直接当たったところで理解の程など知れたところ。その点、本書は非常に分かりやすく、自分自身に取り込み、自ら考えるための本として有意義な一冊だった。
読了日:07月16日 著者:仲正 昌樹


女刑事音道貴子 花散る頃の殺人(新潮文庫)女刑事音道貴子 花散る頃の殺人(新潮文庫)感想
音道刑事シリーズ第二弾。音道刑事の日常をうかがわせるような短編集。軽い事件を描きつつ、音道刑事の周囲を彩る人々が肉付けされていく感じがして、短編集はあまり好きではない僕だけど、これは今後のシリーズの充実に期待を持たせてくれる出来で良かった。しかし、振り返ればこのシリーズが描かれていた頃、僕は本シリーズの舞台となっている立川に通勤し、周辺に住んでいたんだよな。あの頃読んでいればと悔やまれるが、後追いでイッキ読み出来るのも捨て難い楽しみ。
読了日:07月17日 著者:乃南 アサ


NONG KHAI: メコンの彼方にNONG KHAI: メコンの彼方に感想
Kindle Unlimited】若い頃にカンボジア難民のキャンプを訪れようと誘われて無鉄砲に現地に向かった野津。紆余曲折の末にラオス難民キャンプを訪れることが出来たが、そこで衝撃的な事件に出会す。40年の時を経て海外日刊紙の日本支社特派員となっていた野津は、馴染の古本屋で一冊の美しい装丁の本を見つけるが、そこから止まっていた時計の針が動き出す。友人に当時のラオスから逃れたオーストラリア人もいるので、物語の背景で刺さりまくり。次回ビエンチャンに行ったら友好橋を渡ってノンカイに行ってみたい。
読了日:07月17日 著者:龍村暁


少年たちは花火を横から見たかった(角川つばさ文庫)少年たちは花火を横から見たかった(角川つばさ文庫)感想
小学5年生の息子用。主人公典道が小学6年生だった頃の夏、気になっていた同級生の女の子なずなとの思い出を昔語りに綴ったスタイル。息子は面白かったというが、僕には?マーク。何というか置いてけぼり感と言うか中途半端感が拭えない。友情を描いたわけでもなく、むしろ小学生特有の「友達」感にリアルを見る。「花火を横から見たら丸いのか、平べったいのか」という疑問への解答も敢えて暈している(ちゃんと読めば分かるけど、作品が書かれた頃って創作花火少なかったのかな?)。息子にも同じこと聞いてみようw
読了日:07月17日 著者:岩井 俊二,永地


東大教授がおしえる やばい日本史東大教授がおしえる やばい日本史感想
「東大教授」の冠に版元がダイヤモンド社ということで手に取ったが、全ての漢字には振り仮名が付き、巻末の推薦図書も小学生高学年からとされているなど(司馬遼太郎が入っているが。。)、どうも小学生高学年くらいの子供をターゲットにしているらしい。内容も歴史の流れではなく歴史上の人物(小学6年生の社会に出てきそうなレベル)の偉業と、笑えるようなエピソード(これを「やばい」と命名してタイトルに使っている)を紹介しているのみ。はっきり期待外れ。息子に読ませるかどうかも悩ましいレベル。。
読了日:07月18日 著者:本郷 和人,滝乃 みわこ,和田 ラヂヲ,横山 了一


女刑事音道貴子 鎖(上)(新潮文庫)女刑事音道貴子 鎖(上)(新潮文庫)感想
音道刑事シリーズ第三弾の上巻。音道刑事にも彼氏が出来ているようで安心した途端、殺人事件の捜査の中で、音道刑事が何者かに連れ去られてしまう事態が起こる。ところどころで滝沢刑事が担当している無関係に思える事件が挿入されてくるので、どこでどう絡んでくるのだろうとワクワクもしたり。昔堅きな滝沢刑事の設定は、音道刑事をうまく際立たせている。さて、下巻の展開が楽しみ。
読了日:07月18日 著者:乃南 アサ


女刑事音道貴子 鎖(下)(新潮文庫)女刑事音道貴子 鎖(下)(新潮文庫)感想
音道刑事シリーズ第三弾の下巻。連れ去られ捕らえられた音道刑事の心理描写と、救出のために(救出チームの一員として)奮闘する滝沢刑事。音道刑事が男社会における女性という立場に苦しんできたことを忘れさせるほどに救出チームは「仲間」として音道刑事を捉えているところが熱い。一方の音道刑事は極限状態で色々な面で心理的に限界が近づくが。最後まで息を呑む展開で楽しめた。この事件を経て次作以降で音道刑事の環境がどう変わるのか、変わらないのか、が非常に気になる。
読了日:07月19日 著者:乃南 アサ


時をかける少女 (角川つばさ文庫)時をかける少女 (角川つばさ文庫)感想
小学5年生の息子用。何十年も読まれている名作とのことだが、僕自身は子供のために買った今回が初読み。児童向けだから仕方ないとはいえ、深みがなくて何だかなと思ってしまう。それでも、息子は面白かったと言っているし、SFの入り口してはきっと良い。表紙の女の子のイメージが、文字からのイメージとリンクしないのもなぁw そりゃ今の子の目を引かせないとダメかもだけど、今風過ぎるよ。
読了日:07月19日 著者:筒井 康隆,いとう のいぢ,清原 紘


老人と海 (光文社古典新訳文庫)老人と海 (光文社古典新訳文庫)感想
新潮文庫の100冊】【Kindle Unlimited】ずっと昔に読んだはずだが、ほとんど初読に近いような気になる。翻訳者の小川氏が言う通り、「不漁続きだった老人が、挽回するために大物狙いで沖合に出て、壮絶な消耗戦の末に仕留めた巨大なカジキを、帰りに出合った鮫の襲来で食い尽くされるが、最後まで屈することなく、骨だけになったカジキとともに帰港する」と、まあ、言ってしまえばそれだけの話。老人は静かに激することなく海に向かい合い、その強さを感じずにはいられないが、小川氏の訳は評判通り読み易かった。
読了日:07月19日 著者:ヘミングウェイ


ノストラダムスの大予言 迫りくる1999年7の月人類滅亡の日 (ノン・ブック)ノストラダムスの大予言 迫りくる1999年7の月人類滅亡の日 (ノン・ブック)感想
Kindle Unlimited】中学生の頃に読んだ懐かしさを思い出して手に取る。電子版での復刊にあたって追加されたというまえがきとあとがきが一番の楽しみだったが、何てことない感じだった。トンデモ本らしくいかにいい加減な解釈で外れまくったかを自虐的に解説してくれた方が面白いのになぁ。21世紀になって今ノストラダムス業界ってどうなってるんだろう?と要らん興味が湧いてしまった。
読了日:07月20日 著者:五島勉


読書の価値 (NHK出版新書)読書の価値 (NHK出版新書)感想
小説家というと数多くの本を読んでいるイメージが強いが、著者の森博嗣氏はそうではない(と本書に書いている)。そんな氏の読書論は、効率的なインプット法に重きを置いた、というか主眼にした、いわゆる「読書法」とは異なる。遅読を進め、自由に連想やイメージをしながら読むこと。読み方としてはむしろ真逆とも言えるかもしれないが、最終的には同じだと思う。要は、読書は最も効率的なインプットだという点と、読んだ内容が血となり肉となることが重要だと。なお、こういう読書記録のようなものは推奨されてないw
読了日:07月21日 著者:森 博嗣


シャーロック・ホームズを予言したノストラダムス (ヒラヤマ探偵文庫)シャーロック・ホームズを予言したノストラダムス (ヒラヤマ探偵文庫)感想
Kindle Unlimited】シャーロキアンノストラダムスの『諸世紀』を楽しむとこうなるのかと。シャーロックホームズを実在の人物として大真面目に研究しているわけだから、日本で五島勉氏の『ノストラダムスの大予言』が流行った時に、それに興味を持ったとしても不思議はない。本家イギリスでのシャーロキアンはどうだっただろうか。そんなに沢山の詩をシャーロックホームズの事件だけに使うわけないだろ、と冷静に突っ込まず、面白がって読むのが正解。
読了日:07月21日 著者:平山雄一


女刑事音道貴子 未練(新潮文庫)女刑事音道貴子 未練(新潮文庫)感想
音道刑事シリーズ第四弾となる連作短編集。なのだが、最初の2つの短編に前作『鎖』からの流れが感じられず、もう外伝に近い扱いなのか?と不安になる。途中から『鎖』との繋がりを描いた内容となると安心感が出るので、やはりこのシリーズは長編が核だ。警察小説にしては事件が未解決のままで話が終わるとか、なかなか珍しいというか拍子抜けな短編もあり、スーパーマンばかりを描かないのも、このシリーズのいいところかもしれない。今回の短編集での登場回数は少なかったが音道刑事の彼氏である晃一はデカい男だ。
読了日:07月21日 著者:乃南 アサ


星を追う子ども(角川つばさ文庫)星を追う子ども(角川つばさ文庫)感想
小学5年生の息子用。新海誠原作の児童版。小説を読んで頭の中に映像を思い描くことが苦手な僕でも、かなり容易に物語を頭の中で映像化できることに素直に驚く。況や息子にをや。イザナミ伝説を下敷きにしつつ、アガルタへ赴く主人公アスナとモリサキの旅は冒険物語そのもの。そこに淡い少女の恋心やら葛藤やらが加わることで、とても爽やかで綺麗なものになっている。アニメも観てもいいかもしれない。
読了日:07月21日 著者:ちーこ


本を遊ぶ 働くほど負ける時代の読書術 (朝日文庫)本を遊ぶ 働くほど負ける時代の読書術 (朝日文庫)感想
久しぶりに小飼弾氏の読書論。薄っぺらい自己啓発本(及びそんなものばかり読む人)はけちょんけちょん。何でも幅広く、むしろ自分から遠い分野こそ読め。最近、歴史小説を意識して読み始めた自分自身に合う点でもあるが、科学系・哲学系なども読んでいきたい(敬遠してたのは確か)。2013年の本の文庫化とのことだけど、結構アップデートされてて良かった。巻末のオススメ10冊みたいなのを鵜呑みにするのは本書の主張に反する気がするが、元々読みたかったはずなのに敬遠してた本がいくつもあるので、それは読む。
読了日:07月21日 著者:小飼 弾


チア☆ダン 「女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話」の真実 (角川文庫)チア☆ダン 「女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話」の真実 (角川文庫)感想
実話に基づくノンフィクション。映画化もされたそうだが、それは読み終わるまで知らなかった。普通の教師と普通の生徒たちが大きな夢を共有して叶えていく話だが、彼女らを「普通」と言ってしまうことには抵抗がある。大きな夢をお題目として掲げるだけじゃなく、そこに向かって並々ならぬ情熱を持って、夢を叶えるために進み続けられるのは、それだけで一つの才能だ。何かに打ち込んだことがあれば感動すること間違いなしの一方で、自らを顧みて喝を入れられることになる。
読了日:07月22日 著者:円山 夢久


女刑事音道貴子 嗤う闇(新潮文庫)女刑事音道貴子 嗤う闇(新潮文庫)感想
音道刑事シリーズ第五弾となる連作短編集。音道刑事が巡査部長に昇進し、立川の機捜から隅田川東署に異動してからの日々。所轄署の刑事に変わったことで事件への絡み方も変わった。このシリーズはそれまでの内容が時々顔を出すし、音道刑事の心情にも影響しているので、順番に読み進める方が断然面白い。女であることによって軽んじられるという場面は減ってきた。滝沢刑事の親としての顔がみられる話や、音道刑事の恋人晃一に疑いがかかる話など、相変わらずバラエティに富んでいる。
読了日:07月22日 著者:乃南 アサ


約束のネバーランド ~ノーマンからの手紙~ (ジャンプジェイブックスDIGITAL)約束のネバーランド ~ノーマンからの手紙~ (ジャンプジェイブックスDIGITAL)感想
原作コミックの9巻と同時に発売になったスピンオフ小説。原作でノーマンが出荷される前日に、ノーマンが原作にも登場する手紙を書きながら過去を回想しているという設定(少しだけレイの立場で描かれているところもあり)。なので、原作でノーマンが出荷される辺りまでは読んでいないと話が分からない。原作読んでいない人が手に取ることを期待していないのかもしれないけど。振り仮名がついていないけど、内容的には子供向けだと思うから息子にも読ませよう。
読了日:07月22日 著者:白井カイウ,出水ぽすか,七緒


ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望 ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望 ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望感想
ペイパル・マフィアと呼ばれるペイパル創業グループのドンにして、フェイスブック初の外部投資家、トランプ政権のアドバイザーとしても有名なピーター・ティールに関する初の評伝。フェイスブックなど投資先のことも取り上げられているが、投資家としてはオマハの賢人と呼ばれるウォーレン・バフェットにも共通する考え方が参考になる。人との付き合いに関する複利効果、業界が違うとはいえ、すぐれた企業の三段階など、ビジネスに直結する内容に富んだ一冊。
読了日:07月24日 著者:トーマス・ラッポルト


女刑事音道貴子 風の墓碑銘(上)(新潮文庫)女刑事音道貴子 風の墓碑銘(上)(新潮文庫)感想
音道刑事シリーズ第六弾の上巻。やはり長編の読み応えは格別。そして滝沢刑事とのタッグ再び。音道刑事シリーズなのだが、滝沢刑事だけは常に別格扱いで準主役として滝沢刑事目線で進む場面もあることから、物語の深みが違う。今回の端緒は隅田川東署管内で白骨死体が発見されたこと。やがて別の殺人事件との奇妙な繋がりが見えてきて…。ノンストップで下巻に突入せざるを得ない。
読了日:07月25日 著者:乃南 アサ


女刑事音道貴子 風の墓碑銘(下)(新潮文庫)女刑事音道貴子 風の墓碑銘(下)(新潮文庫)感想
音道刑事シリーズ第六弾の下巻。白骨死体の身元が割れて捜査方針が変わってからはおおよそ一直線。大きなどんでん返しを狙うのではなく、身勝手な犯人の理屈に哀しさと理不尽さが漂う。音道刑事の人間関係にも変化が。信頼していた同僚(先輩)との関係、恋人との関係、滝沢刑事との関係。男社会の中で肩を並べて奮闘する、奮闘出来る女性の心情は共感を一部の共感を呼びそうだ。ところで、ずっと続編出ていないようだけど、これで完結なのかな…。それは寂し過ぎるが、それでも悔いのない素晴らしい出来。
読了日:07月26日 著者:乃南 アサ


新潮文庫の100冊 2018新潮文庫の100冊 2018感想
ウェブで見て100冊は知っていたけど、Kindleでも無料で発刊になったのでパラパラと。ウェブでは書籍名のあいうえお順で味気ないけど、こっちだと5つのタイプに分けているのね。読んだことあったり読みたいと惹かれる本が見事に偏っている。Kindle化されていないものも多いけど、ボチボチ読もう。
読了日:07月26日 著者:新潮文庫編集部


十五少年漂流記 〔完訳決定版〕 (創元SF文庫)十五少年漂流記 〔完訳決定版〕 (創元SF文庫)感想
Kindle Unlimited】この歳になって初読み。なるほど確かに名作。イギリス系寄宿学校の生徒だというところが、困難な最中にあっても子供達が規律を失わないポイントかもしれない。時代背景が分からないが、感心するしかないほどの優等生ブリアンがフランス人と設定されているのは、ヴェルヌの矜持というか当時のフランス人感情なのか? 原題は「二年間の休暇』なわけだし、過酷だけど林間学校のような雰囲気もある。子供に読ませたい。
読了日:07月28日 著者:ジュール・ヴェルヌ


夜見師 (角川ホラー文庫)夜見師 (角川ホラー文庫)感想
ホラーの枠組みを相当幅広に捉えている。ただ、ほぼラノベというのが僕の感想。他の作品でもそうだったが、作者の文体からの印象がとにかくラノベ。そう思って読めばお色気要素がない分、軸をもって話は進むし、まとまるので気楽に安心して読めるのだが、安心して読めるあたりがホラーじゃない、という気がせんでもない。系統としてあまり好みではないので少々辛め。
読了日:07月28日 著者:中村 ふみ


4TEEN (新潮文庫)4TEEN (新潮文庫)感想
新潮文庫の100冊】石田衣良氏の作品は初読み。妻の本棚に何冊もあったのに、あまり明確な理由もなく敬遠してきた気がするので直木賞を受賞した本作から。中学2年生、14歳の男子4人。彼らを主人公にした連作短編集。どんな些細なことも大きな事件になる年頃。仲間4人の中では一番特徴がなさそうに見える(つまり大半の読者と同じ)テツローの目線で進むからこそ、読み手側も在りし日(大抵の黒歴史はこの頃のものだろう)を思い返してみたりする。さらっと読む青春物語。小学5年生の息子にはまだ早いか。
読了日:07月30日 著者:石田 衣良


告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)感想
湊かなえ女史の作品は本作が初読み。娘を生徒に殺されたという先生の当該生徒を含んだ生徒たちへの終業式後の「告白」。そこから、関係する人間たちによる「告白」という形で物語が進行しつつ事件が様々な角度から語られるが、一体どこに話の落とし所が来るのかが読めないままにイッキ読みさせられてしまった。何というか「狂気」の物語だ。最後を読んだ時に訳もわからず、何の救いもなく、ただ渦巻く狂気と一緒に取り残された。描き出し方といい一級。とても惹き込まれ楽しめた。
読了日:07月30日 著者:湊 かなえ


ツナグ (新潮文庫)ツナグ (新潮文庫)感想
新潮文庫の100冊】連作短編の形だけど、一つの長編として最後にキチンと集約していく。生者の願いで死者との間を一生のうちに一回だけ(死者側は死後一回だけ)繋いで合わせてくれる使者(ツナグ)。その不思議な体験をする生者の側の心理がサスペンス。大抵は死者と会うことで読み手としても解きほぐされていくんだけど、女子高生の嵐美沙の話だけが別枠な印象。これを「中学生に読んで欲しい30冊」に入れるか新潮社。ラノベ風になりがちなテーマ設定を文学に落とし込んでいて、その面では読ませたい小説だけど。
読了日:07月31日 著者:辻村 深月

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