知磨き倶楽部

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2018年2月の読書メモまとめ

2月の読書メーター
読んだ本の数:25
読んだページ数:4865

代償 (角川文庫)代償 (角川文庫)感想
妻が買っていた本を何となく気になって読んでみたが、これが序盤からグイッと惹きつけられてのイッキ読み。一般的な意味で幸せに育っていた主人公・圭輔少年の生活に、「遠い親戚」の登場で不穏な空気が流れ始め、やがて起きる悲劇も第一部。長じて弁護士になっていた圭輔少年が、悲劇の過去の元凶となった男・達也少年から弁護を頼まれて対峙せざるを得なくなる第二部。達也少年の薄ら寒い悪意が、行き着く暇を与えない展開を生み出して読む手が止まらなかった。何の「代償」を何で払ったのかは最後のお楽しみ。
読了日:02月01日 著者:伊岡 瞬

銀河鉄道の父銀河鉄道の父感想
直木賞受賞ということで手に取った。実は教科書に掲載された作品以外で宮沢賢治の作品をきちんと読んだ覚えがない。『注文の多い料理店』は小学生時代に本棚にあったような気もするが。。そんな自分は宮沢賢治の生涯もついぞ知らず。本書では父・政次郎の視点で宮沢賢治の短い生涯が描かれているが、これは大変に興味深い物語だった。田舎の金持ちのドラ息子。それでも温かい目で見れてしまうのは、父親目線で描かれ、自分自身も父の立場にあるからか。これは読んでよかったな。
読了日:02月02日 著者:門井慶喜

警視庁公安部外事二課 ソトニ イリーガル 非公然工作員 (講談社+α文庫)警視庁公安部外事二課 ソトニ イリーガル 非公然工作員 (講談社+α文庫)感想
ソトニシリーズ2作目。今回、筒見は暗躍しながら物語が進む。それでも筒見の伝説的な力量はいかんなく発揮されるが、やっぱりミステリーじゃなくサスペンスだなと。代わりに(?)物語の表に立つのは現役ソトニの絢音。優秀な気配が漂う朝倉の立ち位置が気になる。次作にも登場するかな? 今作の方が前作ほどフィクションとノンフィクションの間の曖昧さを感じなかった。
読了日:02月06日 著者:竹内明

算数が好きになる本 算数を学ぶ意味と方法がわかる (世の中への扉)算数が好きになる本 算数を学ぶ意味と方法がわかる (世の中への扉)感想
算数が嫌いなわけじゃないが好きでもないという息子(小4)にどうかと思って読んでみた。前半は小学生でもついていけそうな文章かと感じたが、後半少しばかり言葉遣いとか小4程度には難しいかなという部分も。算数(一部数学)のレベルとしては難しいわけじゃないが、これもやはり後半に中学レベルの理解力を求められる箇所あり。これ読んで算数が好きになるだろうかというと正直疑問だが、その前にこれ読む気にさせられるかどうかもそこそこのハードル。
読了日:02月09日 著者:芳沢光雄

珈琲の世界史 (講談社現代新書)珈琲の世界史 (講談社現代新書)感想
『コーヒーの科学』の著者によるコーヒーを巡る歴史本。好きを極めるとここに至るという素晴らしいお手本。バリバリ理系の著者だけど、好きだからこそ文系分野までカバーしてしまう。文系人間の僕には前著よりも遥かに読み易く面白い。また「情報のおいしさ」も実感するためには、やはりコーヒー飲みながら、といきたいところ。僕の場合はカフェイン中毒なだけで、ナポレオンと同じく味への拘りはというと…(汗)
読了日:02月11日 著者:旦部幸博

羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界 (集英社新書)羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界 (集英社新書)感想
平昌オリンピックでフィギュア個人戦の日程始まる前にと思って急いで読む。これはマニアックに演技の細かいツボを技術的な部分メインに挙げていくので、読み手を結構選ぶだろうなあ。僕がフィギュアスケートを一番よく観ていたのは高橋大輔選手の全盛期の頃だから、色々変わってきている。羽生結弦の凄さも感じるけど、あの頃ほど興奮できない自分に少し驚いたり。怪我が心配だけど、ライトなファンとしてオリンピックでの彼の演技は純粋に楽しみ。
読了日:02月12日 著者:高山真

刑事の怒り刑事の怒り感想
夏目刑事シリーズの短編(+中編)集。少年(少女)期の心の傷が根っこにあっても、今回のシリーズは今までと雰囲気が違う。やはり娘の事件に一区切りがついて何かを変えようということか(異動もしたし)。いつもながら事件が解決しようが全くハッピーエンドにならないが、植物状態になってしまった人たちを支える周囲の強い気持ち(願い)が救い。
読了日:02月12日 著者:薬丸岳

だから、居場所が欲しかった。バンコク、コールセンターで働く日本人 (集英社学芸単行本)だから、居場所が欲しかった。バンコク、コールセンターで働く日本人 (集英社学芸単行本)感想
事実は小説より奇なり。フィリピンの困窮邦人の話は、ある意味分かりやすい背景だったが、バンコクのコールセンター(日本語さえ話せれば英語もタイ語も必要とされず採用枠が広い)で働いた経験のある人(現役含む)がバンコクに来て、そこに居続ける背景はぶっ飛んだ話が多くて驚く。ただ、底に流れるのはタイトルにもあるように「居場所」。逆に言えば日本という国の閉塞感というかマイノリティに対する疎外感というか。これは自分の中のベスト何冊かに入るノンフィクション。
読了日:02月12日 著者:水谷竹秀

わが子に教える作文教室 (講談社現代新書)わが子に教える作文教室 (講談社現代新書)感想
ちょっと前に息子がやっている通信教育の保護者向け冊子で紹介されていたので読んでみた。子供の作文を読んで「まだまだ」と思いつつも、自分自身が習ったことがあるわけでもなく、上手くかけるわけでもないので、どう言ってあげたらいいのか悩んでしまうから飛びついたわけだが、なるほど、「指導しよう」という発想から改めるべきかも。嫌々書かされて子供が上達するものでもない。いかに楽しませるか。あとは親の忍耐だな。ハイライトしまくりのお勧めの一冊。
読了日:02月14日 著者:清水義範

宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八感想
人類が宇宙に出て行く前の段階で、「何か」に取り憑かれて突き動かされてきた人たちがいた。後世に有名であろうとなかろうと。僕のような大多数の普通の人にとっては、華々しく活躍した人のことよりも、技術畑で支えになってきた人の物語の方が響く部分もあれば学ぶ部分もあるもので、本書には単純に宇宙に向かうワクワクした楽しさだけでなく、ビジネス的な面でも読めるところあり。技術者系なのに、妙に文学的な文章で読ませるなあ。
読了日:02月16日 著者:小野雅裕

大人の教養として知りたい すごすぎる日本のアニメ大人の教養として知りたい すごすぎる日本のアニメ感想
アニメも日本の文化として世界に受け入れられるようになってきたわけだから、自国の文化として「教養」を身につけておこうよ、という大上段で入って岡田節を展開させる。取り上げられているテーマで観たことないのは「この世界の片隅で」だけ。宮崎アニメとガンダムは定番。シン・ゴジラは意外性を狙いつつ鉄板の庵野ネタ。読み物として普通に面白いけど、想定の範囲に収まっていて驚きがなかったな。
読了日:02月17日 著者:岡田 斗司夫

りゅうおうのおしごと!2 (GA文庫)りゅうおうのおしごと!2 (GA文庫)感想
愛弟子あいに必要なものは好敵手。次第にそのことの重要性を意識した竜王。その流れに乗って、竜王の周りにはさらに小学生女子(天衣)が増えロリコン疑惑は深まる。竜王永世名人、あい対天衣、銀子対月夜見坂といったところが将棋勝負としては読みどころ。
読了日:02月17日 著者:白鳥 士郎

原稿用紙一枚で好きな本を紹介していきます: 書評集原稿用紙一枚で好きな本を紹介していきます: 書評集感想
小説を中心とした書評集。一つ一つが短くて僕的には物足りない。自分の書評もそうだが、僕はある程度まとまった分量のものの方が好みに合うようだ。とはいえ、積読状態だった「わたしを離さないで」読んでみるかなあと思っただけでも良しとしよう(妻からは僕の好みには合わないと思うと忠告されているのだが。。)
読了日:02月18日 著者:Marie

身の丈にあった勉強法 (幻冬舎単行本)身の丈にあった勉強法 (幻冬舎単行本)感想
お笑い芸人ロザン菅が、京大卒の相方宇治原のエピソードを中心に「普通の人の勉強の心構え」を綴る。小学生の息子の親の目線で読むが、正直心構え自体は大したことない。だけど、ーちょうど授業での先生の脱線話のように宇治原エピソードが面白すぎて本自体には引き込まれる。まあ、子供をみるには忍耐だよなあと思う次第。僕自身は、宇治原の考えの方が近いし分かるんだよね。
読了日:02月18日 著者:菅広文

スリーパー 浸透工作員 警視庁公安部外事二課 ソトニスリーパー 浸透工作員 警視庁公安部外事二課 ソトニ感想
バングラデシュ大使館勤務に“飛ばされた”筒見。密命で動いていたら殺人容疑で追われることに。北朝鮮の潜伏工作員との戦いは、特に入国や帰国の場面などにリアリティを感じて前作よりも現実味を帯びる。“北”側で物語の中心になる倉本は、現代の若者ぽいとでも言おうか、僕が想像する北の工作員と比べると遥かに人間臭い。サスペンス要素が少し薄れてヒューマンドラマ要素が強くなって受け入れ層が広そうだし、今作は相当良かった。これで最後?いや、あの終わり方は。。
読了日:02月18日 著者:竹内明

ゴールデン・ブラッド GOLDEN BLOOD (幻冬舎文庫)ゴールデン・ブラッド GOLDEN BLOOD (幻冬舎文庫)感想
「奇跡の人工血液」ゴールデン・ブラッドを題材に、日本の医薬品認可の遅さに切り込むのかと思ったら変化球。まあ、医薬品認可に絡んだ清濁が渦巻いて事件は起こるのだけど。最初、主人公の圭吾のイメージが掴みづらくて物語には入れなかったが、爆弾事故後から一気に進んで気がつけば読了。もう少し掘り下げてくれても良かったかな。軽い雰囲気の捜査一課刑事の東海林の味がいい。
読了日:02月19日 著者:内藤了

シリーズ・企業トップが学ぶリベラルアーツ 宗教国家アメリカのふしぎな論理 (NHK出版新書)シリーズ・企業トップが学ぶリベラルアーツ 宗教国家アメリカのふしぎな論理 (NHK出版新書)感想
本来易しくない話だが、非常に分かりやすく、読み易く書かれている。「土着化」したキリスト教という話は分かりやすく大変興味深い。反知性主義についても、モヤっとしていた理解がクリアになった。そういう視点を持っていないとアメリカという国の理解は出来ないのかもしれない。ポピュリズムのくだりなどはアメリカのみならず日本でも同じだね。
読了日:02月20日 著者:森本 あんり

聖書物語 旧約編(新装版) (講談社青い鳥文庫)聖書物語 旧約編(新装版) (講談社青い鳥文庫)感想
一般教養として子供に読んでおいてもらいたくて購入。自分自身久しぶりに読んだが、子供向けには興味を持ちそうな話ばかりだし、分かり易くていいのではないだろうか。海外にいると色々な宗教を信じている人に会うし、学校でもおそらくそうだろうから、少しだけでも知識を入れておけると視野が広がるんじゃないかな。教養として知ってないと前提で理解できないこともあるし。
読了日:02月21日 著者:香山彬子

聖書物語 新約編(新装版) (講談社青い鳥文庫)聖書物語 新約編(新装版) (講談社青い鳥文庫)感想
子供用に旧約編と合わせて購入。こちらも、世界で一番読まれている書物の断片だけでも知識としてもっておいてもらいたいとの意図。単純に物語として比べると旧約編の方が子供の興味はひきそうだな。環境の関係上、息子は欧米の小説を読むことも多いけど、聖書の知識ゼロだと理解に苦しむ場面もきっとあると思うので、まあ参考になってくれればいいな。
読了日:02月21日 著者:香山彬子

りゅうおうのおしごと!3 (GA文庫)りゅうおうのおしごと!3 (GA文庫)感想
年齢制限というルールが生み出す厳しい状況は、様々なドラマを生む。ここまで「いい人」だった桂香さんの心の底が描かれたのが今作。合わせて「将棋指し」として生きる人の覚悟も描く。ラノベだけど、その辺のドラマは現実に基づいていて胸をつく。『泣き虫しょったんの奇跡』で描かれたような編入制度は女流にはないのかな。なさそうだな。女流の厳しい状況も垣間見える。主人公が振り飛車を身に付けようと苦心する辺りは今後の展開にどう生きるかな?
読了日:02月22日 著者:白鳥 士郎

僕がカンボジア人になった理由 (幻冬舎単行本)僕がカンボジア人になった理由 (幻冬舎単行本)感想
国籍変えてオリンピック出場を目指すということで批判も受けた猫ひろしさん。2016年のリオ五輪で出場を果たし、なぜカンボジア国籍をとってオリンピックを目指したのかを語る。オリンピックでの様子や東南アジアでの大会の様子など、興味深い内容がいっぱい。東南アジアでの大会やカンボジア代表チームの話などは、「ああ、分かる!」という感じで情景が浮かぶ。まだ頑張ってほしいなあ。プノンペンで見かけられたらいいな!
読了日:02月23日 著者:猫ひろし

ひらめきを生む「算数」思考術 問題解決力を高める厳選43題 (ブルーバックス)ひらめきを生む「算数」思考術 問題解決力を高める厳選43題 (ブルーバックス)感想
公務員試験に出そうな問題というか。懐かしいような問題も多いが、解くのは正直あまり面白くなかった。僕に「ひらめき」が生まれやすくなったかどうかも甚だ疑問だが、普段と違うことを考えられたのは事実なので、頭が動きやすくなるということはあるかもしれないなと期待。
読了日:02月25日 著者:安藤久雄

ラストレシピ 麒麟の舌の記憶 (幻冬舎文庫)ラストレシピ 麒麟の舌の記憶 (幻冬舎文庫)感想
昭和の初期、戦争前に宮内卿天皇陛下のための料理を作る立場にあった天才料理人の山形直太郎と、現代で腕はいいのに店がうまくいかずに「最期の料理請負人」として生計を立てる佐々木充。唯一の共通項は一度食べた味は忘れず再現出来るという「舌」を持つこと。そんな佐々木が山形が残したと言われる「至高のレシピ」を探し出して再現することに。淡々とした雰囲気で最初はどうかと思ったけど、読み進めると熱くて面白い。ただ、料理を扱っているわりに食べたくはならないんだよな。
読了日:02月26日 著者:田中経一

幻夏 (角川文庫)幻夏 (角川文庫)感想
どこか飄々としながら冴えている鑓水、鑓水の営む興信所で働く(?)修司、警察官の相馬の3人が事件の解決に動く。なんだか3人の関係性の説明がなく進むなと感じていたのだが、読後に解説を読んで、前作となる『犯罪者』という小説があったと知った。今回は「冤罪事件」をテーマに置きつつ、相馬の少年時代の思い出に繋がっている話。読む手は止まらないし、前作も続きの作品も読もうと思った程度に面白い。
読了日:02月27日 著者:太田 愛

男の子は10歳になったら育て方を変えなさい!男の子は10歳になったら育て方を変えなさい!感想
息子がもうすぐ10歳になろうというタイミングで妻が購入。男の子の異性の親として母親向けに書かれているものの、同性の父親にも多くの示唆に富んだ内容だった(ただし、僕はいわゆるイクメンでは全くない)。ただ、著者が男性ということもあり、女性に受け入れられる内容なのかどうかは判断がつかない。海外に住んでいると、環境の違いで難しいこともあるが、自分の少年時代を顧みると腹落ちする内容ではある。
読了日:02月28日 著者:松永暢史

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