カンボジア: ABA Bank社債の上場
2019年8月23日、カンボジア証券市場に、4銘柄目(発行主体としては3社目)となる社債が上場されました。発行主体はカンボジアで躍進目覚しいABA BANKです。
これまでの上場社債も金融機関が発行するものでしたが、今回は「初の商業銀行発行の社債」という触れ込みです。
機会があってDisclosure Documentを読んだので、簡単に概要をご紹介します。
1、ABA BANKとは?
まずは発行主体について。
カンボジア中央銀行(「NBC」)のレポートによると、2017年末時点での貸出金額の規模で国内第3位、総資産の規模で国内第4位、預金額の規模でも国内第4位に位置づけられています。
Disclosure Documentから拝借しましたが、パブリックになっているので大目に見てもらいましょう。
ちなみに、国内最大手はACLEDA BANKという銀行です。日本のSMBCが18.25%の株式を保有していることでも知られています。左から5番目に名前があるSathapana Bankは、日本のマルハンが母体となっている銀行ですね。また、右から2番目に名前があるANZ Royal Bankは、2019年8月19日に、やはり日本のJ-TRUSTによる買収手続きが完了してJ-TRUST Royal Bankに名称が変更になりました。結構、日本のプレゼンスありますね。
ABA BANKは、1996年に設立されていて、現在はNational Bank of Canadaのグループ会社になっています。同行による持分割合の増加が始まる2015年頃から活動が目に付くようになった印象があるのですが、やはり、2014年以前の活動記録がDisclosure Documentにも全く記載がありません(汗)
なお、National Bank of Canadaはカナダ第6位の民間銀行です。
2018年末時点で66本支店を展開し、従業員数4,000名を超える銀行です。2016年末時点では43本支店で従業員数2,000名以下だったようなので、その急速な拡大ぶりが窺えます。
2、発行条件は?
期間3年でクーポンレートは7.75%。他の社債も期間は3年なので差はないですが、クーポンレートは一番低いです(他の社債は8%~9%)。償還は期限一括。S&Pによる格付けは”B”です。
主幹事証券会社はSBI Royal証券で、ここでも日本のプレゼンスが感じられます。
ちなみに、額面はKHR100,000とリエル建てです。カンボジアはUSドルが流通通貨としては最も多いのですが(9割くらい)、法定通貨は一応リエルなので、上場株式も社債もリエル建てになっています。
一般的な商取引ではUSドル建てで全然OKで、ABA BANKでも米ドル口座の方が固定性預金などの商品種類は充実しているように見えます。
機関投資家は最低KHR800,000,000(8,000口)から、個人(リテール)投資家は最低KHR4,000,000(40口)から申込み可能となっていたようです。
本社債発行で調達した資金は、主に農村部での小規模事業者及び中規模事業者向けのローンの拡大に充てられるようです。とりわけ、女性起業家向けのローンが15%ほどあるらしく、女性起業家支援の拡充も期待されます。
また、カンボジアの銀行は、貸出債権の15%をリエル建てにするようNBCの通達が出ているはずですが、リエル建てで調達できているので、リエル建て貸出の積み増しも意図しているようです。
3、公募の結果は?
募集社債数1,280,000に対して、848,210の応募があったとのことです。
カンボジア証券市場での前例も多くないですし、何とも言い難いところですが、あまり芳しい結果には見えないですねぇ。
社債引受人のリストを見ると、機関投資家は多くても5社、残りの60名は個人(リテール)投資家という感じです。
カンボジアは、そもそも証券口座の開設数が2万口座強(2018年末時点)しかないということなので、幅広くリテールが集められるという状況ではないのでしょうけど。
とはいえ、せっかく内容見る機会があったので、今後もABA BANKの動向には注目しておきたいです。