知磨き倶楽部

書評及び海外ニュースの紹介等を中心とした情報を発信します

2018年12月の読書メモ

2018年12月に読んだ本をまとめて紹介しておきます。

11月にゲームに取られてしまった時間を面白い本たちが読書に引き戻してくれて、読書数は33冊となりました。

また、当月中に購入した金額は21,432円。以前のKindleセールで買い溜めて積読していた本をかなり消化できました。

その中から3冊をピックアップすると、 

連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)

連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)

 

中山七里さんの初期の傑作です。結構グロい描写も多いので好き嫌いはあると思いますが、後に「どんでん返しの帝王」の異名を取る作者の力量が遺憾なく発揮されており、読んで損のない一冊です。 

三井物産社長から国鉄総裁まで務めた石田礼輔氏の生涯を描いた一冊です。「国鉄」の名称から分かるとおり、決して最近の話ではありませんが(戦前だったりもします)、職業人としての清冽な生き様は、やり方云々といった小手先論ではなく、仕事に向かう姿勢など精神論の深いところで感銘を受けます。 

高校サッカー部を舞台にした青春物。サッカー好きな小学5年生の息子にどうかなと思って手に取った一冊でしたが、僕がはまってしまって、大晦日の一日をシリーズ4冊読破に当てることになってしまいました。 

 


世界を変えた14の密約 (文春e-book)世界を変えた14の密約 (文春e-book)感想
密約という言葉に陰謀論的な匂いがしたけど、純粋に資本主義的発想を突き詰めて行動する巨大な資本家たちの行動の結果が世界を変えていくという話。彼らの巨大過ぎる活動は政府活動にも影響を与えないわけはなく、結果として一般人の与り知らぬところで世界が変わっていく。日本は発達し過ぎた旧来のインフラが足枷になるパターンにモロにハマる。日本的な動きからすると他国以上にその足枷は重いだろう。その一方で新興諸国の発展ぶりが想像しやすい(スマホの普及などは分かりやすい一例)。
読了日:12月01日 著者:ジャック・ペレッティ


十二人の死にたい子どもたち (文春文庫)十二人の死にたい子どもたち (文春文庫)感想
第156回直木賞候補作。掲示板などの裏サイトで集まって若者が集団自殺というのは現代的(少し古いくらいか?)な設定だが、集まってみたら起こったことがなかなか珍妙だ。設定上、場面は不変(基本、集団自殺のために集まった部屋)のままで話は進む。「子供」たちの論理で話も展開するため、ややイラッとさせられる子もいるわけだが、そんな気持ちが参加している大人びた子たちに分散して投影されるうちに、この子たちの「話し合い」がどう落ち着くのかを傍観してみたくなる。つまるところ、最後まで本を置けずにイッキ読みだ。
読了日:12月02日 著者:冲方 丁


翻訳というおしごと~翻訳者に「未来」はあるか? アルク はたらく×英語シリーズ翻訳というおしごと~翻訳者に「未来」はあるか? アルク はたらく×英語シリーズ感想
僕が今さら目指せるほど甘い話じゃないが、言葉が好きそうな息子の選択肢の一つになり得るのかもしれないなぁと業界を垣間見てみたくて手に取る。まぁ、レッドオーシャンな分野だし、テクノロジーの発展で置き換えられてしまう恐れのある部分もあるが、プロとしての矜持を持って創意工夫でまだまだ戦える分野でもありそうだ。大事なのは英語力と日本語力。それとプロとして日々研鑽を続けていけること。
読了日:12月02日 著者:実川 元子


英語の品格(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル)英語の品格(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル)感想
巷に溢れる「英語は通じればブロークンでいい」という言い分とは反対の立場で、特にビジネスの場面においては僕は同意。品格というと大げさだが、大人としての節度をもって丁寧に話す、と思えば当たり前のこと。どう言うべきなのか、と時々困る場面に使える表現があったりして、大変助かる。最近ネイティブ(英系)と仕事で話す機会も増えて、彼の表現からも、本書で書かれているようなネイティブの言い回しや考え方が窺い知れる。実践と合わせて学べてよい。
読了日:12月07日 著者:ロッシェル・カップ,大野和基


ファーストラヴ (文春e-book)ファーストラヴ (文春e-book)感想
第159回(2018年上半期)直木賞受賞作。父親を刺殺した容疑で逮捕された女子大生。「動機は見つけてください」と言う宣伝でも書かれていた言葉は、別に警察組織に対する挑戦ではなく、壊れた女子大生の心の現れだったということで抱いていた印象が全く変わる。主人公はそんな女子大生の心を解き明かそうとする臨床心理士で、彼女の目線で事件の真相に迫る。事件そのものではなく、その背景となった登場人物それぞれの幼少期の記憶が紡ぎ出す真相。展開は静かで手に汗握るという感じではないがイッキ読みさせられた。
読了日:12月08日 著者:島本 理生


プラナカン 東南アジアを動かす謎の民プラナカン 東南アジアを動かす謎の民感想
バティックやニョニャ料理程度でしか触れたことのないプラナカン文化だが、マレーシア・シンガポールで過ごした時間を思うと、もっと知りたいと思っていた。期待が高過ぎた部分もあるが、本書はちょっと期待を下回るかな。ただ、日本人としてはプラナカンとの関わり(主に第二次大戦時に日本人がしたこと)を絶対に知識として持たなければいけない。現地で反日感情に曝されることはなかったけれど、そういう歴史を現地の人はキチンと覚えている。
読了日:12月08日 著者:太田泰彦


おとぎ話を科学する! コミック空想科学読本 2おとぎ話を科学する! コミック空想科学読本 2感想
シリーズ物の第2弾。内容としては前作から引き続き、科学的な説明は子供のみならず大人が読んでも為になり、ネタ元が誰にでも分かりやすいだけに、思わず誰かに話したくなる。絵柄の雰囲気が大幅に変わったことは好みが分かれそう。僕は前作の絵柄の方が良いかな。
読了日:12月09日 著者: 


コトラーの「予測不能時代」のマネジメントコトラーの「予測不能時代」のマネジメント感想
久しぶりのコトラー教授の著書ということで楽しみにしていたのだが、ページを捲ると、2009年に出ていた『カオティクス波乱の時代のマーケティングと経営』の改題復刊だと知って意気が低下する。Amazonの内容紹介でも一切触れられておらず、その売り方に憤りを感じる。事例も古臭さを感じてしまうし、10年近く前の本なら敢えて読むことはなかったなと。今でも必要な考え方だけど目新しいわけではない。
読了日:12月12日 著者:フィリップ コトラー,ジョン A キャスリオーネ


星間商事株式会社社史編纂室 (ちくま文庫)星間商事株式会社社史編纂室 (ちくま文庫)感想
星間商事の社史編纂室は明らかな左遷部署。だらだら社史編纂してたはずなのに、どうも会社にはOBが話したがらない黒い過去があるらしいことが分かってきて…。いくらでもシリアスにも書ける題材を、腐女子なアラサー女性を主人公に据え、一筋縄ではいかない室の面々たちを散りばめることで、まったりコミカルにまとめあげている。三浦しをんさんの、こういう作品は大好きだ。
読了日:12月13日 著者:三浦しをん


連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)感想
中山七里さんは好んで何冊も読んできたけど、これは初期の傑作。『さよならドビュッシー』と同時に「このミス大賞」に応募され、最終選考に2作品同時に残ったという逸話付き。途中に散りばめられた描写から犯人を自分の中でも予想するけど、最後に大どんでん返しを食らわされる。これ、最近の作品よりもむしろ衝撃度大きくないか?というくらいに巧妙だ。ただ、残虐描写多目で、その手が好きじゃない人にはキツいのかもしれない。背後のテーマも重いけど、テーマ性より圧倒的なリーダビリティで大満足な一冊。
読了日:12月16日 著者:中山 七里


翻訳地獄へようこそ翻訳地獄へようこそ感想
英語小説の翻訳家による翻訳に纏わるエッセイ集。ブログで現地の英字新聞を翻訳して解説しようと試みて翻訳(小説の翻訳に比べれば遥かに易しいと思うのだが)の難しさを痛感した僕としては、なかなかに楽しく、またためになる話だった。機械翻訳によって翻訳家の需要ってどうなるのだろうと思っていたが、これだけのことを機械翻訳が成し遂げるには、まだまだ時間がかかるのではないか、とグーグル翻訳を見てると思うんだよね。読みにくい翻訳小説の原因もこれで納得。言葉って大事だ。
読了日:12月16日 著者:宮脇 孝雄


合本 検察側の罪人【文春e-Books】合本 検察側の罪人【文春e-Books】感想
雫井修介さんは『火の粉』以来2作目。将来有望な若手検事と、エリート街道に乗ったベテラン検事の二人を主人公にした展開。事件自体の真相は読み手には隠されないから、どんでん返しのハラハラ感はないが、「正義」というテーマを突きつけ続ける。僕自身は、自分の信念に曇りのない最上検事に肩入れしたくなる。若手の青い元気さが眩しくも青臭さの方に気がいくのは歳を取りすぎたからか。上下巻合本のボリューム感が気にならないほどにのめり込んでイッキ読み。
読了日:12月16日 著者:雫井脩介


新・冒険論(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル)新・冒険論(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル)感想
探検家の角幡氏による冒険論。「冒険」は文字通りの生命の危険があるようなガチの冒険のこと。ビジネスの世界などで新規ビジネスへの挑戦などを「冒険」と言う場合とは全く違う。勝手に「新しいことに挑戦しなくなった現代の人々に、探検家が喝を入れる」という構図を想定していたけど全然違った。氏は別にみんなに「冒険」を勧めたりしない。むしろそんなことしないのが普通という。役に立つかというと微妙なんだけど(というか直接役立つことはないか)、考えてみることもなかった面に光が当たって、自分の思考の抽斗の一部が整理された感じ。
読了日:12月18日 著者:角幡唯介


フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体 (ブルーバックス)フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体 (ブルーバックス)感想
何か受験勉強の際に聞いたような言葉だなという程度の印象しかない「フォッサマグナ」。実は世界でも唯一の地形であるとか、形成過程が未だ解き明かされていないとかいうことを本書で初めて知る。著者の藤岡氏は、そんなフォッサマグナの形成過程について本書で大胆に仮説を述べている。その仮説を紹介する過程で、分かっていることや分かっていないことの解説がなされるわけだが、読み終えた今でも正直ピンと来ていない。壮大な地球地質学の一部を垣間見た。
読了日:12月18日 著者:藤岡換太郎


パリの国連で夢を食う。 (幻冬舎文庫)パリの国連で夢を食う。 (幻冬舎文庫)感想
ある国連機関のパリ本部で5年半勤めた著者の体験を基にしたエッセイ。役所などからの派遣でなく、一般公募で始まったところに通常なら並々ならないものを感じるのだが、全編通じて感じるのは行き当たりバッタリ感! そこに独特のユーモアがスパイスになって何とも言えない明るい雰囲気が漂う。妙に理屈っぽく考えて先行き悩んでしまっている人には大いに勧めたい。しかし、国連の、日本の役所以上にお役所なところは意外に思いつつも納得感もあり。働きたいか?と言われると微妙だなぁ。アジアの坩堝でキリキリ舞いしている方が性に合ってるかも。
読了日:12月19日 著者:川内有緒


英語のこころ(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル)英語のこころ(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル)感想
名著『日本人の英語』のマーク・ピーターセン氏による、語彙の問題に焦点を当てたエッセイ集。知らない使い分けなどが頻出するわけだが、じゃあそれ使う機会あるのか?と自問するとあんまりなさそうなものが多い(汗) そういう意味では、普段のような文法系の話の方が幅が広くて万人に役立ちそう。語彙は確かに大事だけどね。
読了日:12月21日 著者:マーク・ピーターセン


スタート! (光文社文庫)スタート! (光文社文庫)感想
中山七里さんによる『連続殺人鬼カエル男』を下敷きにしたミステリ。グロい描写で苦手な人もいるであろう同作の映画化(現実では無理だろう)を行う中で起こる事件。同作読んでないと想像が膨らみにくくて面白さ半減、どころかだいぶスポイルされるかも。そういう意味ではミステリ単体としての面白さは薄いのかもしれないが、同作読んでる人には相当楽しめるはず。今回はグロくなく、全体としてライトな仕上がり。
読了日:12月21日 著者:中山 七里


マンモスを再生せよ ハーバード大学遺伝子研究チームの挑戦 (文春e-book)マンモスを再生せよ ハーバード大学遺伝子研究チームの挑戦 (文春e-book)感想
マンモス復興プロジェクトを主導するジョージ・チャーチ教授のチームに焦点を当てたノンフィクション。マーク・ザッカーバーグを取り上げた『ソーシャルビジネス』を書いたベストセラー作家が手掛けて映画化も決まっているという本書は、合成生物学という最先端の分野を扱う科学ノンフィクションでありながら、抜群に読みやすく仕上がっている。「現実は小説よりも奇なり」を実感できる、最先端の場所で起こっている現実に胸が踊った。
読了日:12月25日 著者:ベン・メズリック


東京難民(上) (光文社文庫)東京難民(上) (光文社文庫)感想
自営の実家が倒産→夜逃げして、学費滞納から除籍、賃貸住宅も追い出される羽目になり、というのは気の毒ながらも、主人公の行動や思考を見ていると、転げ落ちるだろうなぁと思わずにはいられず、事実だいたい想像通りの展開。這い上がるキッカケになりそうなところで上巻は終わったが、この性格で果たして必死になれるのか? ラストが気になるので個人的には引き込まれてるのだろう。続けて下巻へ。
読了日:12月25日 著者:福澤 徹三


東京難民(下) (光文社文庫)東京難民(下) (光文社文庫)感想
主人公の修が落ち続ける展開は変わらないが、内面的な成長が見られるようになる。その性格が災いして転落が止まらないわけだが、前半とは違い応援したい気持ちが湧く。どうまとめるのかと思っていたが、今度こそ這い上がる一歩を踏み出したと実感させる終わり方で一応綺麗にまとまる。貧困系なら『ガラパゴス』の方が社会問題によりフォーカスしてた感じはするけど、本書は読み易さもあるし、もう少し身近な問題として感じさせられる部分があるかな。
読了日:12月25日 著者:福澤 徹三


小売再生――リアル店舗はメディアになる小売再生――リアル店舗はメディアになる感想
Amazonなどでのネット通販が拡大する中、従来の小売業社の苦戦・低迷が聞こえるようになって久しい気がする。それでも実店舗の有用性、重要性は依然としてある。「体験」をベースに顧客の満足度を高める場所として。自分の携わる不動産業はネット通販の馴染みにくい業界の一つではあったものの、その流れから無縁でもいられなくなっている。次に作るセールスオフィスを、単なる商談スペースとは違ったものにしたいと考えていたところで、本書はいい刺激になった。
読了日:12月27日 著者:ダグ・スティーブンス


バウルの歌を探しに バングラデシュの喧噪に紛れ込んだ彷徨の記録 (幻冬舎文庫)バウルの歌を探しに バングラデシュの喧噪に紛れ込んだ彷徨の記録 (幻冬舎文庫)感想
タイトルからバングラデシュ旅行記のようなものを想像していたが、ガチで「バウル」と呼ばれる修行者のような人たちを訪ね、その哲学や歌に込められたものを探る旅の顛末だった。バングラデシュ親日国だということもあるだろうが、ベンガル人達の優しさにも溢れ、期待以上の内容。ダッカにしか行ったことがないが、一度訪れただけでは全く感じることのできなかったバングラデシュベンガル人の様子が知れて大変よかった。僕は毎日カレーでもいいし、ビリヤニも大好きだ(一時期毎日ランチはビリヤニだった)。
読了日:12月29日 著者:川内有緒


仕掛け絵本の少女 (小学館文庫)仕掛け絵本の少女 (小学館文庫)感想
主人公と同じ中学2年生くらいの読者を想定したファンタジーノベルなのかな。ライトノベル的な印象で大人が読むにはちょっと浅い感じもする。これを機に支倉常長やら慶長遣欧使節団やら覚えたら儲けもの。船名なども歴史を踏まえているし(ただ、どこまで史実に基づいたか判断つかないよなぁ)、破茶滅茶だけどそんなところで物語は支えられている気がする。
読了日:12月29日 著者:堀川アサコ


図解 宇宙のかたち~「大規模構造」を読む~ (光文社新書)図解 宇宙のかたち~「大規模構造」を読む~ (光文社新書)感想
序盤は太陽系より小さいレベルから始まり超銀河団を超える規模への拡大と大変分かりやすいが、中盤から専門的な関数の名前が増えてきて、なかなかに難しい。「図解」と銘打つだけあって豊富な図が挿入されているが、中盤付近はやはり関数を表したグラフが並び、文科系で理科系に苦手意識を持つ人(僕とか)には、なかなか骨が折れる。理解度は怪しいが、宇宙をテーマにした一般解説書は好物なので、満足はしている。
読了日:12月29日 著者:松原 隆彦


「粗にして野だが卑ではない」石田禮助の生涯 (文春文庫)「粗にして野だが卑ではない」石田禮助の生涯 (文春文庫)感想
戦前に三井物産の海外で実績を上げ社長まで務め、その後に78歳にして国鉄総裁に就任した石田礼助氏に関する伝記。かの時代は今に比べて傑物と呼べる人物が多かったように思うのは懐古主義のせいだけでもあるまいが、石田氏もそんな人物の一人だと思わされる。こんな人ばかりでは会社組織も大変だろうが、社長として法人を預かる身となった今こそ、噛み締めたい内容に富んでいる。『リーダーの本棚 決断を支えた一冊』の中で紹介されていて手に取ったが、いい本だった。
読了日:12月29日 著者:城山 三郎


聖者が街にやって来た (幻冬舎単行本)聖者が街にやって来た (幻冬舎単行本)感想
街で起こる連続殺人事件が全く解決の糸口も見えないままに話が進む。色々な伏線が最終章で結実していく様はスッとするが、事件そのものの背景には心が痛む。ミステリという印象は薄いが、かと言って強烈なテーマ性を感じる程でもない。それでも読ませ続けられてしまうのは、オカマとして誇りを持ち、明るく、それでいて人の弱い心に寄り添えるレイカというキャラクターの存在じゃないかと。イッキ読みだった。
読了日:12月30日 著者:宇佐美まこと


ダークゾーン【上下 合本版】 (角川文庫)ダークゾーン【上下 合本版】 (角川文庫)感想
刊行時以来の再読。将棋をベースにしたダークファンタジーで、現実世界(の振り返り)と仮想世界で場面が変わりつつ物語が進行する。刊行時も将棋に興味はないながらもエンタメ小説として大いに楽しんだが、将棋に興味を覚えるようになった今、その面白さは倍増する。現実世界の時間軸が物語とリンクした結末にも驚き。仮想世界で将棋の駒のようになって戦う場面の緊迫感も、将棋を題材にした他の小説とは一線を画す緊迫感。貴志祐介氏の作品の中でも、好きな作品の一つ。『クリムゾンの迷宮』が好きなら絶対これもハマるはず。
読了日:12月30日 著者:貴志 祐介


なぜ倒産 23社の破綻に学ぶ失敗の法則なぜ倒産 23社の破綻に学ぶ失敗の法則感想
成功の要因は様々で再現性が低いが、失敗(倒産)の要因は絞られて再現性が高い、という主張には同意。金融機関勤務時代に融資先が倒産することもあったし、そもそも自分が勤務している会社も倒産(再建型法的整理)した。今、経営を預かる身として失敗に至る要因を見逃していないか、常に気を張る必要がある。惜しいのは、雑誌掲載時の誌面の制約だろうが、一つ一つのケーススタディが淡白すぎること。企画の趣旨から敢えて淡々としたのだろうが、もっとディープなドラマがあったはずで、そういうのを読みたかった。
読了日:12月30日 著者: 


レッドスワンの絶命 赤羽高校サッカー部 レッドスワンサーガ (メディアワークス文庫)レッドスワンの絶命 赤羽高校サッカー部 レッドスワンサーガ (メディアワークス文庫)感想
高校サッカーを題材にした青春スポーツ小説。年代別日本代表にも招集されたことのある天才・優雅を軸にしていたチームが、優雅の怪我でガタガタに。絶対的なカリスマ監督が倒れた後に就任したのが、世間ズレを感じさせつつも、サッカーに異常な情熱を燃やす若き女監督(ただしプレーヤーろしては素人)。廃部の危機を前に、知性のサッカーを標榜してチームは再スタートを切る。恋愛要素はほぼ抜き、だけど風変わりな女監督(超絶美貌のお嬢様)の言動で、ライトノベル調な雰囲気も残す。子供用にと思って買ったけど、自分のために続きも買う。
読了日:12月31日 著者:綾崎 隼


カラス屋、カラスを食べる 動物行動学者の愛と大ぼうけん (幻冬舎新書)カラス屋、カラスを食べる 動物行動学者の愛と大ぼうけん (幻冬舎新書)感想
動物行動学者の松原さん。カラスを研究テーマにしていて、ご自身をカラス屋と称する。ただ、本書は半分以上カラス以外の動物(鳥類が多いがウミガメとかも)を含めた、動物行動学者のフィールドワークの面白エッセイという感じ。題名になったカラスを食べる場面も割とあっさり。『山賊ダイアリー』の方が笑える。同時に食べたというハクビシンは僕も食べたことがあるが、本書の記述とは随分印象が違って、堪え難いほどの臭みだったけどなぁ。文章が柔らかく面白いので読み物としては楽しい。
読了日:12月31日 著者:松原始


レッドスワンの星冠 赤羽高校サッカー部 レッドスワンサーガ (メディアワークス文庫)レッドスワンの星冠 赤羽高校サッカー部 レッドスワンサーガ (メディアワークス文庫)感想
高校サッカーを題材にした青春小説の第2巻。今回は前作よりも高校生らしい恋愛要素を多めに盛っているし、コミカル要素も好調。それでもサッカーシーンは真剣でバランスが良い。廃部の崖っぷちに立った高校選手権の新潟県予選の様子。シリーズ中で優雅の足は治ることがあるのだろうか。それとも指導者側に? 時間でファーストシーズン完結とのこと。期待して読む。
読了日:12月31日 著者:綾崎 隼


レッドスワンの奏鳴 赤羽高校サッカー部 レッドスワンサーガ (メディアワークス文庫)レッドスワンの奏鳴 赤羽高校サッカー部 レッドスワンサーガ (メディアワークス文庫)感想
高校サッカーを題材にした青春小説レッドスワンサーガの第3巻。大いなる未来への道が見え始めてスケールが大きくなりそう。恋愛要素は第2巻よりやや少なめ、ただし新展開もあって、高校生の青い気持ちに暖まる。主人公はもちろん優雅なんだけど、伊織や楓の成長っぷりが半端なく。怪我のために、それをコーチとして見続けるしかできない優雅の気持ちも痛いほど伝わって、思わず涙ぐまされる場面も。ファーストシーズン完結とのことだけど、続きの第4巻が出ているようなので、それも読む。
読了日:12月31日 著者:綾崎 隼


レッドスワンの飛翔 赤羽高校サッカー部 レッドスワンサーガ (メディアワークス文庫)レッドスワンの飛翔 赤羽高校サッカー部 レッドスワンサーガ (メディアワークス文庫)感想
レッドスワンサーガ第4幕。一旦区切りをつけた前巻から次なるステージへの「飛翔」。優雅たちが高校3年生になり、新チームでのインターハイ挑戦と、優雅自身の選手としての復帰への可能性との両軸。第1巻から、ほぼイッキ読みでここまで読み切ってしまったほどハマった。続きが出ればまだ読みたい。しかし、ここでの終わりも読み手にその後を色々と想像させてくれてアリかもしれない。そんな複雑な想い。
読了日:12月31日 著者:綾崎 隼