知磨き倶楽部

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2018年11月の読書メモ

2018年11月に読んだ本をまとめてご紹介しておきます。

当月は最近の中では読書量がかなり少なく、14冊となりました。減少の要因は、単にゲームに時間を費やしてしまったからという、40を過ぎた大人としてどうなのよ、という理由ですが。。(汗

 

少ない中で敢えてお勧めを挙げさせていただくとすれば 

カルピスをつくった男 三島海雲

カルピスをつくった男 三島海雲

 

恥ずかしながら三島海雲氏のことを本書で初めて知りました。モンゴルにおけるカルピスの原型となる現地のソウルフード的なものとの出会いなど、国民的飲料となったカルピスの成り立ちも興味深いのですが、もっと人生訓的な意味合いで本書の衝撃は大きかったです。 

ガラパゴス 上 (小学館文庫)

ガラパゴス 上 (小学館文庫)

 

社会問題をテーマに取り上げた刑事小説。『震える牛』に引き続き、重厚ながらリーダビリティーに溢れる作品で、上下巻の分量を感じないほど引き込まれました。 

オー!ファーザー (新潮文庫)

オー!ファーザー (新潮文庫)

 

伊坂ワールド炸裂の家族エンタメ小説。「4人の父親と一緒に暮らす息子」が主人公という設定で、もう面白い。

 

 
カルピスをつくった男 三島海雲カルピスをつくった男 三島海雲感想
誰もが知る国民的飲料と言えるカルピスを作った三島海雲氏の評伝。モンゴル時代、後のカルピスの元となるモンゴル民族の乳飲料(ヨーグルトに近い?)と出合う足跡を辿る旅などはルポタージュの様相。経営よりも人物に重きを置かれているし、仏教徒でもあった三島海雲氏の精神は、幅広く現代の日本人に読まれて然るべきものだと思う。ただ、なかなかに骨の折れる読書であったことも事実で、すらすら読んで楽しいという種類の本ではない。「生きるとは」という精神を学び取る気持ちで臨みたい。
読了日:11月02日 著者:山川徹


七色の毒 刑事犬養隼人 「刑事犬養隼人」シリーズ (角川文庫)七色の毒 刑事犬養隼人 「刑事犬養隼人」シリーズ (角川文庫)感想
Kindle Unlimited】無駄に男前な刑事、犬養刑事シリーズの短編七篇。最初と最後の短編はリンクするけど、その他は基本的に独立している。「どんでん返しの帝王」の異名を持つ中山七里氏には短編は似合わないというか、正直物足りない。伏線引けないから「小手返し」くらいのインパクトになっちゃうんだよね。ただ、どこぞの出版社主催の文学賞で新人賞を受賞して色々な意味で話題になった芸能人を下敷きにした短編があって主張を感じるなぁと。「実在の人物、団体には一切関係ありません」の但し書きが深い。
読了日:11月03日 著者:中山 七里


はなとゆめ (角川文庫)はなとゆめ (角川文庫)感想
枕草子』の作者である清少納言を主人公に、仕えた中宮定子への想いと『枕草子』執筆に至る背景を、『枕草子』を書き終えた清少納言の視点で綴った歴史小説。巷で言われる紫式部との確執など全く触れず(あれは紫式部が仕掛けてるんだっけか?)、淡々とそれでいて強い清少納言の気持ちが読み取れる。ただ、どうにも自慢げというか周りを馬鹿にするというか、後に作られたのかもしれない清少納言のイメージが頭から離れず、どこか一歩引いてしか読めなかった。げに人伝てで作られた像の強いこと。
読了日:11月05日 著者:冲方 丁


パーパス・マネジメントパーパス・マネジメント感想
Kindle Unlimited】期待してたよりだいぶ軽い内容だった。従業員満足度などではなく、従業員幸福度を高めることこそが重要で、そのために必要なことが個人と組織の「パーパス」の合致であると。概念自体は目新しくないが、その為にCHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)を経営陣の役職として導入することを主題としたコンサル会社の営業本的な感じ。確かになぁとは思うものの、経営者目線ではちょっとスンナリ入りづらい部分も。東南アジアではイメージしにくいが、僕が古いタイプなのかな。
読了日:11月06日 著者:丹羽真理


ガラパゴス 上 (小学館文庫)ガラパゴス 上 (小学館文庫)感想
派遣労働という社会問題をテーマに、エコカーハイブリッドカー)を絡めて切り込むミステリ。『震える牛』が相当面白かったので期待値高く読み始めたが、見事に上げたハードルを越えてくれた。田川刑事の派遣労働に関する認識の低さというか甘さが少し気になったが、一般的にはそんなもんかもしれないな。たまたま経済誌などで読むから知識としては知っているけれど、僕だって本当のところを知っているかと言えば知らないわけだし。下巻も楽しみ。
読了日:11月06日 著者:相場英雄


ガラパゴス 下 (小学館文庫)ガラパゴス 下 (小学館文庫)感想
下巻に入っても勢いの落ちない面白さ。前から読みたかった本作をやっと読め、期待以上にのめり込めて満足。経済誌などで時々話題になる派遣労働の辛苦にフォーカスしつつ事件の真相解明が進む。田川刑事の想いが最後にどう結実するのか見てみたかったが、そこを書くと味が薄れるか。経済小説は最後にスカッとすることが多いけど、そこが刑事モノに軸足を置いている本作との違いで、言いようのない悲哀が残る。
読了日:11月09日 著者:相場英雄


うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間 (文春e-book)うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間 (文春e-book)感想
プロ棋士先崎学九段のうつ病闘病記。筆を取ったのも回復期の途上であり完調したわけではない時期だそうだ。一線で活躍している方が、自身のうつ病に関する闘病日記を書くということ自体珍しい。誰でもなる可能性があるし、ストレス社会の現代では周りにだって起こり得るわけで、色んな視点で読める本。将棋ファンとしては、やはり棋士という人達は…と思わざるを得ない部分もあれど、素直に順位戦への復帰を祝いたい気持ち。
読了日:11月09日 著者:先崎 学


監禁面接 (文春e-book)監禁面接 (文春e-book)感想
『その女アレックス』で日本でも知名度が一気に上がったピエール・ルメートルのサスペンス。本国での発刊は『その女アレックス』よりも前なんだねぇ。元人事畑の管理職だった主人公アランは失業して4年の50代。何とか食いつなぎつつ職探しを続けるアランに舞い込んだチャンスは道徳的にとんでもないような採用試験だった、となかなか暗いながらも興味を惹かれる設定。ただ、採用試験自体はアッサリと終わり、その後の展開こそがスリリングでサスペンスという流石のルメートル。息もつけず一気に読まされてしまった。
読了日:11月13日 著者:ピエール・ルメートル


ヒストリア (角川ebook)ヒストリア (角川ebook)感想
沖縄戦から南米移民、キューバ危機、沖縄返還へと時代を移しながら、逞しく生き抜く知花煉。ジェットコースターのような人生だけでも引っ張られるが、沖縄戦時に「マブイ落ち」をしてしまったために起こることがとんでもない。チェ・ゲバラは思ったほど物語の中心ではなかったのね。長さに圧倒されるが、これだけの盛り込みが必要だったのも納得で、冗長な感じがしない。面白かった。
読了日:11月17日 著者:池上 永一


王室と不敬罪 プミポン国王とタイの混迷 (文春新書)王室と不敬罪 プミポン国王とタイの混迷 (文春新書)感想
仕事の関係上も見ておかなければいけない国の一つがタイ。この国の大きな問題の一つは政治。特に前回のクーデターから続く軍政と前国王の崩御による先行きの不透明さが外国人としては不安。根っこにあるのは前国王が名君過ぎたことのようでもあるが、外からでは分からない事情が各国にあるのは事実。本書のテーマは、タイという国を理解するためには避けて通れない重要なものだし、近年の動きが割と平易に追えるようにもなっているので、少しでもタイあるいはタイ人と関わりを持つのであれば一読しておく価値があると思う。
読了日:11月18日 著者:岩佐 淳士


鍵のない夢を見る (文春文庫)鍵のない夢を見る (文春文庫)感想
辻村深月さんの作品は3作目。本作は直木賞受賞作tぴうことで期待度高めで読み始めたが、「ああ、これは合わない系統のやつかも」と思ってしまった。若い女性が主人公の日常系は共感がしにくく苦手だが、妻もシンドかったと言っているので、それだけじゃなくて主人公がイラつくタイプだからかもしれない(「日常」とは言い難い設定もあるしわけだし)。
読了日:11月18日 著者:辻村深月


Who Is Pele? (Who Was?)Who Is Pele? (Who Was?)感想
Lexile指数880L。小学5年生の息子の音読用4冊目。名前と活躍はもちろん知っているけれど、生い立ちとかその後の活躍とか全然知らなかったので、個人的にも一緒に読んでて楽しかった。英語的には指数ほどの難易度は感じなかった。次は息子の意見も踏まえて作家のRolad Dahl。息子と違って、この人の作品読んだことないからなぁ(汗)
読了日:11月21日 著者:James Buckley


オー!ファーザー (新潮文庫)オー!ファーザー (新潮文庫)感想
新潮文庫の100冊】四人の父親と暮らす男子高校生の由紀夫が主人公となる、どたばたファミリー物。母親が再婚した結果の「四人の父親」とかじゃない、一捻りな設定からして伊坂ワールド全開。全員が全員どこかズレているような雰囲気も相変わらずコミカルだ。小さな事件らしきものを目撃したことが、だんだんと大掛かりな話に巻き込まれていく。ほんの小話に思えていたものが、後から伏線として回収されたりして綺麗にまとまっていくのは読んでいて気持ちが良い(気になったままの部分もあるっちゃあるけど)。ついつい、睡眠時間削られたなぁ。
読了日:11月22日 著者:伊坂 幸太郎


おとぎ話を科学する! コミック空想科学読本 1おとぎ話を科学する! コミック空想科学読本 1感想
小学5年生の息子用に購入。空想科学読本はあまり響かなかったのだけど、こっちはコミック仕立てなのと、元ネタがどれも分かることもあって、楽しんで読める模様(本筋と関係ない所で笑っている気がしないでもないが)。コミック部分よりも、その横にある科学(理科のレベルに近いか)の話が重要なのだが、そちらもちゃんと読んでくれているようで安心。常識レベルのおとぎ話の筋もあらためて読めて一石二鳥!(僕の方が完全に筋が頭に入ってないものもあって…汗)
読了日:11月23日 著者: