2018年5月の読書メモ
5月に読んだ本をまとめてご紹介しておきます。Kindleで合本版というのも読んでいるので、実質的には29冊の本を読みましたが、ちょっと軽めの小説の多い月でした。
あえてお勧めの小説を3冊あげるとすると、
意図せずですが、3冊とも文藝春秋の本になってしまいましたね。。
絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか (NHK出版新書)の感想
若い頃に習った世界史の知識は実は常にアップデートされなければいけない。特に人類史に関しては僕が習った頃の「400年万年ほど前のアウストラロピテクスが…」とかいうレベルの記述は如何にも古臭い。タイトルに据えている疑問について、「優れた種」が生き残ったというわけではないことを著者は強調する。通説なのか著者の個人的見解なのか判別がつかない部分もあるけれど、読みやすい言葉や流れで記述されており、素人である僕には充分刺激的な一冊だった。
読了日:05月02日 著者:更科 功
BACK 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)の感想
藤堂比奈子シリーズ第七弾。警察関連病院内での大量殺人事件だが、ホラー度は益々下がっている。猟奇犯罪捜査班の誰かが危ない目に合うわけでもなし。ホラー文庫でいいのかなと変な心配にしてしまう。本作だけで見れば盛り上がりの少ない話だったが、シリーズ全体での立ち位置としては重要な繋ぎになりそうな予感で、明らかな次への伏線(謎と危険の予兆)を残して終わっている。そりゃあ続き読むわな。
読了日:05月02日 著者:内藤 了
パンドラ 猟奇犯罪検死官・石上妙子 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)の感想
藤堂比奈子シリーズのスピンオフ作品。死神女史こと石上妙子の若き院生時代、法昆虫医学のジョージ、厚田警部補との出会いとなる事件に関するエピソード。どうせなら厚田警部補と一度は結婚に至るまでの経緯まで読みたかったな。事件そのものは連続殺人で大事件だけれども猟奇度合はそこまででもないか。本体の事件よりもジョージの県の方がよほど猟奇的だ。
読了日:05月03日 著者:内藤 了
MIX 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)の感想
藤堂比奈子シリーズ第八弾。猟奇犯罪の裏に見え隠れし始めた謎の組織の影。直接の手掛かりもない状態ながら、今後の全面対決を予感させる。一方で過去の作品に登場した新人御子柴巡査が厚田班に配属されて、遂に藤堂比奈子にも後輩が。こいつの駄目っぷりが事態の展開にどう影響を与えるか?
読了日:05月04日 著者:内藤 了
COPY 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)の感想
藤堂比奈子シリーズ第九弾。30年前と12年前の猟奇殺人そっくりの現場に、当時検死官及び担当刑事として関わった死神女史と厚田警部補の記憶が呼び起こされる。捜査の先に近頃の事件に影を落としていた組織の姿が現れる。秘密であるはずの「センター」にまで食い込む組織の力とは。「センター」で研究対象となっていたシリアルキラー佐藤都夜の脳が形作る思念は今後どういう動きに発展するのか。緊張感が高まってきた。続きの発刊が待ち遠しい。
読了日:05月04日 著者:内藤 了
プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのかの感想
Facebook、Amazon、Airbnb、WeChatなどなど。近年の生活に欠かせなくなってきた、これらの「プラットフォーム」に関して、ビジネス視点から、そこにあるコアなバリューや機能を解説する。どうしてもITとの親和性が高いが、アイデアの種は現実世界にある。単にプラットフォームの一員として参加しているだけじゃなくて、プラットフォームを立ち上げる側に回ることも狙わないと。色々なプラットフォーム企業の具体例がいい味付けになって読み易い。
読了日:05月06日 著者:アレックス・モザド,ニコラス・L・ジョンソン
静おばあちゃんにおまかせ (文春文庫)の感想
『テミスの剣』に登場する裁判官・高遠寺静が引退後に安楽椅子探偵として孫娘が彼氏(最初は違うか)の警察官を助けるのを助ける。静おばあちゃんの引退時の話も出てくるので『テミスの剣』は先に読むべき。その他中山七里作品に登場する刑事も出ている模様。全体的にほっこり系。短篇連作で一つ一つの事件の掘り下げもなく軽い。著者お得意のどんでん返しは、今回に限っては「ないわ〜」という感じ。
読了日:05月07日 著者:中山七里
コンビニ人間 (文春e-book)の感想
何というかADHDで対人関係系とか強めに出るとこういう感じになるのかも? 僕は共感力欠如系なので主人公の感覚は理屈としては分かるし、まあ身も蓋もないけどそうだよねと思いこそすれ、実生活でそれ表に出したら苦しいよね。生き辛き日本社会の縮図。重たくはないが、取り上げている問題は根深い。サラっと日常系だけにより浮き彫りになっている。
読了日:05月07日 著者:村田沙耶香
ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるかの感想
最近『プラットフォーム革命』を読んでいる時にピーター・ティール氏の本書からの引用が数箇所あって急に再読したくなった。『ピーター・ティール』も読もうと思っていたところだし、丁度良い。自己啓発に分類されるものだと思うが、起業を考える際の具体的な心得でもある。成功した起業家であり、ベンチャーキャピタリストでもある著者の言葉は重い。2年ほど前に読んだ時と自分の状況が違うからか、響く箇所が違っていて、再読してよかったと思わせてくれる。
読了日:05月09日 著者:ピーター・ティール,ブレイク・マスターズ
狭小邸宅 (集英社文庫)の感想
不動産販売会社に勤める若者。罵声に加えて手や足が出る職場は典型的なブラックだが、実際に聞いてる話と大差なく違和感ないのが逆に怖い。最初はダメ営業マンとして戦力外通告までされていた主人公が、とある出来事を機に変わり始める。しかし、それは果たして幸せだったのか。仕事が人を変えてしまい人生もモチロン変わる。豊川課長の言葉が重い。
読了日:05月10日 著者:新庄耕
「司馬遼太郎」で学ぶ日本史 NHK出版新書の感想
司馬遼太郎氏の小説って実は一度も読んだことがない。「ビジネスパーソンが読むべき本」とか「ビジネスパーソンに必須の教養」とかの特集でどれだけ取り上げられていても、歴史小説に興味が持てなかったし。なのに、本書を読んだら読みたくなってしまう不思議。日本史を学んだというより司馬遼太郎氏の小説の魅力をたんまり紹介された感じだ。自分の歳も歳だし、恥ずかしくないようにやっぱり「必須の教養」は押さえておくことにしよう。
読了日:05月10日 著者:磯田 道史
13・67 (文春e-book)の感想
最初は安楽椅子探偵の変形物かと思ったが、どっこい逆年代記方式で過去に遡りつつ、香港の世相の変遷を見ながら物語が進む。逆年代記という手法がよく合った作品で、最後にあっと驚く着地となる。短編連作はそれほど好きじゃないけれど、本作は長編と思えるほどに上手く絡み合っている。中国語ミステリーの翻訳物というのも珍しい。充実した一冊。
読了日:05月13日 著者:陳 浩基
子供の科学2018年6月号【特集】 ホーキング博士が考えた ブラックホールと宇宙論の感想
最近息子も『宇宙兄弟』を読破したところだし、宇宙に興味が出てきたんじゃないかという期待でホーキング博士の理論を第一特集にした本誌を買ってみる。小特集でロナウド、メッシ、ネイマールの技の解説がある点もポイント。ホーキング博士の理論は子供向けに易しく解説されてもやっぱり難しかったけど、さあ息子はどう感じるかな。。
読了日:05月13日 著者:
合成生物学の衝撃 (文春e-book)の感想
生物学に工学的なアプローチを加えた合成生物学。主流はゲノムを書く、すなわち生物を作り出すことに移っているという。まだまだ細菌レベルの生物を作り出すことすら難しいとはいえ、社会に与える「衝撃」の大きさは容易に窺い知れる。無知と誤解に基づいて有用なものまで潰してしまうことがないよう、本書のような一般向けに分かる言葉で書かれた本は重要だ。SFの世界は日々SFではなくなっていくのだな、ということも思いつつ。
読了日:05月14日 著者:須田 桃子
ジュニアエラ 2018年5月号の感想
「小中学生のための」とあるが、内容を見る限り主なターゲットは小学校の高学年かな。振り仮名が付いているから中学年でも読めるだろうけど。政治、科学、文化、スポーツと幅広くカバーしていてバランスは良い。今回「経済」がなかった気もするが、定期的に見てみよう。僕が読んでどうこうというより、小学5年の息子に読んで欲しいのだが。。。テレビでやってるネタには僕より詳しいから、いい整理になると思うんだけどなぁ。
読了日:05月14日 著者:ジュニアエラ編集部
ドラゴン・オプションの感想
中国の失われた至宝絡みの事件に端を発するが、主題は至宝にはなく、美術品を使ったマネーロンダリング。洗浄された資金の使い道は。。大英博物館の鑑定人、イギリスと中国の諜報機関のエージェントが絡み、中国の政治的陰謀も加わってスケールはデカイ。ただ、ポンポンと飛ぶ場面と人物関係に時々筋を見失いそうにもなる。素人の鑑定人がそんなに活躍しちゃっていいのかというほどの活躍ぶりだが、キチンとサスペンスしていて最後まで飽きずに引っ張られた。
読了日:05月15日 著者:中原清一郎
羽生流・決断の極意 『決断力』+『大局観』【2冊 合本版】 (角川新書)の感想
『決断力』は再読だが『大局観』は初読。『決断力』を初めて読んだ当時は将棋にとんと興味がなく、自己啓発書として読んで付箋貼りまくりの一冊だったが、今回は将棋に興味を持って将棋雑誌まで読むようになるなど自分の方に大きな(?)変化が。変わらずに多くの学びを得たが、将棋が好きになって読むと更に面白い。『大局観』の方も重複する部分も少なくないけど良い本。読んでないのは勿体ないし、数少ない再読する自己啓発書の一冊。
読了日:05月16日 著者:羽生 善治
羊と鋼の森 (文春文庫)の感想
冴えない様子の高校生外村が偶然出合った「調律師」の仕事が人生を変えた。要は新米調律師外村の成長物語なのだけど、これが妙にふんわりと優しい雰囲気に包まれている。それは恐らく、個々の登場人物の性格描写はしながらも輪郭描写をしない手法も関係しているのだろう。文章からは主人公の姿形は全く想像が出来ない(性格描写から何となくは頭に描いているけれど)。また、使われる言葉の綺麗さも優しさを作り出している。素直にいい小説。
読了日:05月16日 著者:宮下 奈都
YouTube革命 メディアを変える挑戦者たち (文春e-book)の感想
YouTubeは世界を大きく変えたと言って良いだろう。本書はYouTubeの副社長が書いた本だが、YouTubeそのものの発展というより、YouTubeというプラットフォームによって起こった新しい世界の動きを紹介する。YouTuberと呼ばれるクリエイター達の出現だ。僕はこれまで100%消費する側として恩恵を享受していただけだが、本書を読むと「Broadcast yourself」を実践したい気持ちにもなるし、そうしたければヒントは満載だ。多数登場する実際の映像を流しながら読むのも楽しい。
読了日:05月21日 著者:ロバート・キンセル,マーニー・ペイヴァン
護られなかった者たちへの感想
震災後の宮城を舞台に生活保護をテーマに据えた中山七里ミステリ。本書にも登場するが、売れっ子だった芸人の母親の不正受給疑惑や北九州市の水際対応など、ワイドショー的な伝わり方こそすれ実感値がない。批判もあるだろう重たいテーマで、ちゃんとミステリとしても一級に仕立てたのは流石。「真面目」という評価を鋭く切り取った言葉が意外と響く。日本人は特に「真面目」な人が多いから。
読了日:05月21日 著者:中山 七里
将棋世界 2018年6月号(付録セット) [雑誌]の感想
下手の横好きで読む将棋雑誌。棋戦の解説読んだりしてその気になっても自身の棋力が上がるほどではなく(差がありすぎる)。詰将棋や次の一手などは頑張って解くが、電子版の使いにくいところは問題ページと解答ページの行ったり来たりが面倒なところか。ここは未だ紙媒体に軍配があがる。リンク付けしておいてくれれば済む話なんだけどなぁ。矢倉の6七金左は試してみたい指し方だから並べてみる。
読了日:05月22日 著者:
英検2級Writingトレーニング: 新形式対応版の感想
【Kindle Unlimited】子供の英検受験対策用にと思ったけど、高校生向けっぽいので読ませるのは少しシンドイかな。短いし簡単ではあるんだけど。。自分に経験のない類の問題なのでどう教えて添削するかの参考程度だが、折角なので例題の8問は子供にもやらせてみよう。英語力云々というより、論理的に自分の意見を説明する訓練が大事だと感じた。
読了日:05月23日 著者:超英塾
合本 燃えよ剣(上)~(下)【文春e-Books】の感想
初めて司馬遼太郎の歴史小説を読んだ。本作は新選組副長の土方歳三を主人公に据えたもの。新選組結成以前から始まり、京都での活躍と五稜郭に至るまで。土方歳三こそが新選組であって、その生涯を「喧嘩師」として自分の信念に従って生きた生き様は武骨で熱い。これ読んだら土方歳三のファンになるわな。何となく毛嫌いして避けてきたけど勿体無かった。
読了日:05月23日 著者:司馬遼太郎
帳簿の世界史 (文春文庫)の感想
帳簿、というか会計が歴史に与えてきた影響を主要な出来事を取り上げて追っていく。今では当たり前の複式簿記が誕生した頃については知っていても、それが根付くまでにどれだけの事があったのかは初耳だ。オランダ東インド会社やらフランス革命やら、その後ろにあった帳簿の影響はただ驚き。今でもまだまだ不正会計多いもんね。人間の「隠したい欲」はそうそう変わらんらしい。
読了日:05月27日 著者:ジェイコブ・ソール
いつか、虹の向こうへ (角川文庫)の感想
魔が差して「元」刑事となってしまった中年のおっさんが主人公。ほぼ何もかも無くしてしまったのに、なぜか訳ありの人間を3人も居候として住ませちゃってる辺りに人間味を感じる。おっさんは強くもないからやられまくって爽快な場面もほぼない。それなのに展開のテンポが良くて、本を読む手は止まらず一気読み。
読了日:05月28日 著者:伊岡 瞬
そして、バトンは渡された (文春e-book)の感想
妻が購入した本で然程期待もしていなかったけど、これが大当たり。何度も親が変わってきた主人公の優子。屈折してもおかしくなさそうな環境でも、毎度親には恵まれていい子。ただ男目線で読むと、3人目の親である「森宮さん」の言動に打たれること頻り。どこかトボけた性格だけど、真剣に親足らんとする気持ちは痛いほど伝わる。親として子供のことを考えるということが足りな過ぎると妻に言われ続ける自分を省みる。
読了日:05月29日 著者:瀬尾 まいこ
屋上のテロリスト (光文社文庫)の感想
戦後日本が東西に分割されて連合軍に統治されることになってから70年。ソ連側に統治された東は社会主義国となり、アメリカに統治された西は民主主義の下で経済発展を果たし、お互いはいがみ合っている。どこかの半島を下敷きにしたような設定の中、テロを企てる女子高生の狙いは、、という話だけど、チートな能力(設定)を持った女子高生の企て通りに筋書きが進むという感じで、僕的にはラノベ。『雷撃☆SSガール』を思わせるけど、あちらの方が衝撃度も完成度も遥かに上かな。とはいえ、エンタメとして普通に面白かった。
読了日:05月30日 著者:知念 実希人
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