内国歳入庁: 電子通貨を用いた不動産取引も課税対象 - ニュース深読み - IRB: Sales of property using e-currency still taxable
最近Tweetした東南アジア関連ニュースを一つ取り上げて、(僕の)英語の勉強も兼ねて日本語訳にした上で、背景や周辺事情などコメントします。
今日のニュースはThe Starで読んだマレーシアに関するニュースです。
仮想通貨決済での不動産取引でも諸税は同じように適用される。仮想通貨に関する規定はなくても決済手段としては問題ないという見解に見える。#マレーシア
— Taka (@taka_smec) 2018年1月21日
IRB: Sales of property using e-currency still taxablehttps://t.co/P4wXuwmOAX @staronline
<記事全文日本語訳>
内国歳入庁: 電子通貨を用いた不動産取引も課税対象
仮想通貨を用いたマレーシア国内の全ての不動産取引は不動産売却益税の対象となる、と内国歳入庁長官のDatuk Seri Sabin Samitah氏は述べている。
仮想通貨が不動産取引に使用された場合においても諸税は支払われるべきだ、と彼は付け加えた。
そうした取引は、1976年不動産収益税法に該当する。
同法において、買い手と売り手は取引の詳細を内国歳入庁に開示しなければならないとされている。
Sabin氏は、多くの人が、現在電子通貨の取引を規定する法律がないという理由で、仮想通貨を用いれば諸税を支払う必要がないと考えていると述べた。しかしながら、彼は、マレーシア国内での仮想通貨を用いた全ての不動産取引は、所得税法に規定されるとも述べた。
また、Sabin氏は、内国歳入庁は、一筆の土地の取引を行った2人のサバ出身のビジネスマンが、その取引の詳細を申告したかどうかを確認している最中だとも述べた。
「我々は、彼らが仮想通貨を用いて取引を行った際に、不動産収益税を、もしあるとすれば、支払わなければいけないことに気がついているかどうかを確認している最中だ」と付け加えた。
本紙(The Star)は、観光分野の起業家であるAlexandar Yee氏と、その友人であるPolycarp Chin氏の間で、0.5BTC(38,000リンギ)相当の取引が締結されたことを以前に報道した。
Yee氏は、Libaran島の1.219ヘクタールの土地をChin氏に0.5BTCで売却することに合意し、取引は0.05BTC(3,883.25リンギ)で10%の手付金を支払うことで締結された。
取引が締結された時点で、Bitcoinは77,665リンギで値がついていた。
Yee氏とChin氏は、契約は伝統的な土地の取引の方法に従っているが、支払い方法だけが異なっており、それが仮想通貨を用いるという点だ、と述べた。
Yee氏は、売買契約書は土地を40,000リンギとしており、それが売却価格と同じだ、と述べた。
そういうわけで、彼は本取引は不動産収益税の対象にならないと信じている。
しかしながら、彼は、法手続きは、弁護士による法的な証明書や印紙税の支払い、Sandakan土地事務所での権利書の移転申請を含んでいると述べた。
<コメント>
本記事をツイートする前に、対象となった取引が行われたという同紙の報道もツイートで取り上げていました。
ビットコインで土地の決済か。これは研究する必要があるな。#マレーシア
— Taka (@taka_smec) 2018年1月9日
Land deal sealed using Bitcoinhttps://t.co/ElP0VvZ9dd @staronlineさんから
通常の飲食や消耗品などの決済だけでなく、不動産の決済にまで使われるような段階まで来てるのかという驚きがあったのと同時に、どうやって自分のビジネスでも取り込んでいけるだろうかと考えたものです(今も考えていますが)。
記事自体は、僕の訳文の拙さもさることながら、マレーシアのことが多少分かっていないと理解がしにくいかもしれません。
売買当事者は「買った時の値段と同じ値段で売っている取引だから、RPGT(不動産収益税のマレーシアでの一般的な略称)はそもそも発生しない。印紙税はちゃんと払う」と主張しているように見え、別に税逃れの意図はないように見えます。
このRPGTの申告手続きはそこそこ面倒なのですが、売買契約書の締結から60日以内にどんな取引でもIRB(内国歳入庁)に申告しなければならないことになっていて、利益がないなら、その旨の申告をしないといけません(個人間での取引はやったことないので、会社が絡む取引と同じだと仮定しています)。
いずれにせよ、本記事で長官が明確にしたことは、仮想通貨だろうと税金の扱いは同じ(=税務当局としては仮想通貨に関する規定がなかろうが、有効に取引が成立したと看做している)という税務当局の見解です。つまり、国の根本を成す「土地」という資産に関して仮想通貨での取引が有効だということは、その他の取引でも仮想通貨での決済は有効と看做されるでしょうから、法律の整備は後追いでなされることになるのでしょうね。
外国人として気になるのは、果たして外国人がマレーシア不動産に投資する場合でも、仮想通貨による取引が認められるか、という点です。
マレーシアは東南アジア諸国の中では唯一、土地に関しても、最低価格の規定はあるものの、外国人にも完全な所有権を認めている国です(一部の特区や特例措置に基づいた所有権を除く)。ビットコインで不動産投資ができるとすれば、選択の幅も広がるかもしれません。
ちなみに、お隣のタイで外国人が不動産(コンドミニアム)を買おうとすると、外貨で送金した証明が必要だったりしますので、タイでは少なくとも外国人によるビットコインでの決済は、今のところ難しそうな気もします。
マレーシアでは、今回取り上げられた個人間の取引だけではなく、不動産事業者が小口販売する投資商品(不動産の持分への投資)をビットコイン決済でやろうとしている事例もあるようで、急速に広がっていきそうな気配もありますので、東南アジアにおける新たな(?)潮流として見ておいても面白いのではないかと思います。
■ 編集後記
仮想通貨についてのニュースが日々増えてきているので、その拡大の様子はひしひしと感じられていたのですが、正直なところあまり理解ができていませんでした。
そんな折、話題になっているこちらの本を読みました。
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僕は、デジタルネイティブ世代ですらなく、さらに金融機関での勤務経験なども通して古いフォーマットがインストールされてしまっているタイプです。
日々のニュースだけではなく、OSをアップデートするために、相当意識して新しいもの、特にテクノロジー関連の知識を仕入れて咀嚼していかないと、完全に時代においていかれるという危機感を感じました。 今回の仮想通貨なども、「通貨」という言葉に引きずられて、古い「通貨」の常識に基づいた延長線上で捉えるとポイントを外して理解に苦しむことになる、と指摘されています。
テーマの割りに相当読みやすく頭にも入りやすい本なので、是非一読してみてください。